《新見小晴×テニス》「気合と根性は誰にも負けない」。この春、地元岡山から世界へ挑戦。
3歳半から『柳生園テニスクラブ』に所属している新見小晴選手。2020年12月、JTA主催で昨年唯一開催されたジュニアの全国大会で、初優勝を果たした。3月からいよいよプロ転向し、世界に向けて戦っていく彼女にインタビュー。
小さい体で戦うために身につけたスタイルで、グランドスラムを目指す。
2020年に開催された「全日本ジュニア選抜室内テニス選手権大会」にて初優勝を果たし、念願の日本タイトルを獲った新見小晴選手。岡山テニス界の期待のホープであり、今年3月からいよいよプロに転向し、世界へと挑戦していく彼女を紹介しよう。
新見選手がテニスを始めたのは3歳半。テニスをしていた兄を見て、自分もやってみたいと『柳生園テニスクラブ』に通い始めた。当時は、友だちに会うのが楽しくて、習い事のひとつという感覚だったそう。それが変わったのは、コーチのあるひと言がきっかけ。小学4年生から植田コーチのレッスンを受けるようになったそうだが、同年代のライバル選手がクラブ内に3名いて、「この中で勝てるのはひとりしかいないんだよ」と言われた。その言葉をきっかけに、「今のままじゃいけない。絶対に負けたくない」とより本気で取り組むようになったという。そこから1年もしないうちに全国大会への出場を果たした。当時の印象について植田コーチは、「今でもそうですけど、体の使い方は当時からトップクラス。飲み込みは早い子だったと思います。あと周りの声が聞こえなくなるくらい、集中力も高いですね」と話す。ちょっとした助言で、「あ、分かった」とひらめくように技術を吸収していき、瞬く間に同世代を追い越していった。
中学生になってからは全国大会の常連になり、海外へも行くように。そこで、自身のターニングポイントとなる試合を経験した。2年生のときに、初めてシングルスで世界ランキングのポイントをとれるという試合に出場。4時間半にもわたる、ひたすら我慢が続いた試合で、1点を取る難しさ、勝つ難しさを強く感じた。最終的には見事に勝利。これまで負けて泣くことはあっても、勝って泣いたのは初めてだった。「気合と根性は負けない自信があるのですが、それが特に芽生えた試合かもしれませんね」と振り返る。自身の成長のきっかけをひとつつかんだ彼女は、その後全国大会でも上位の常連に。さらに高校1年生では、全豪予選に初出場するまでになった。
この結果だけを見ると、まるで順風満帆のような彼女の成長物語を見ている気になるかもしれない。だが、新見選手は、昔からほかの選手のように恵まれた体格ではなく、パワーでは勝てない。かといって、圧倒するようなスピードもない。代名詞のようなショットもない。時にはなかなか決めきれず、長いゲーム展開になることもあった。そんなサイズ差のある選手を相手にし続けてきた中で磨いたのは、相手の長所を発揮させないプレー。「気合と根性」を信条に、相手のパワーをかわしつつ、相手の嫌なところに打って、相手が嫌になるまで拾って粘って戦う我慢強さを身につけた。「小さい頃から自分なりの戦い方を探してきましたが、結果的にその戦い方が長所になっていると思います」と、自分のスタイルを確立した新見選手。とはいっても海外選手や日本のトップクラスの選手に対しては、やはりパワー不足は否めない。その弱点に対して、重点的にここ1、2年取り組んで迎えた「全日本ジュニア選抜室内テニス選手権大会」。この1年は、コロナ禍で大会も思うように行われない状況が続き、自身は成長と手応えを感じられているとはいえ、ほかの選手の実力が分からなかった。果たして今の自分はどこまで通用するのだろうか。そんな不安を抱えながら臨んだ大会だったが、実力が拮抗していたライバル選手との対決も制し、初優勝。これまで全国大会では準優勝が最高成績だったが、高校最後の舞台で念願の日本タイトルを手にした。
そうして高校生活で有終の美を飾った新見選手だが、彼女の戦いはここから始まる。3月にプロ転向し、いよいよ国内外の大会へさらにチャレンジしていく。今後の目標について、「今は挑戦っていう気持ちが強いですね。でも、相手の方が強いときの方が、いいプレーが多かったイメージがあるので、真っすぐぶつかっていきたいですね」と、とても楽しみにしている印象を受けた。プロに転向しても引き続き岡山を拠点にして、地域密着プロという形で練習を続けていくという新見選手。小さい体の彼女が、世界という大きな舞台でどこまで羽ばたいていけるのか、今後の活躍に期待したい。
(タウン情報おかやま2021年4月号掲載より)
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