《入江優×アーチェリー》凛と弓を構え、小さな的と大きな未来を見据える。
ロンドンオリンピックで男子個人、女子団体とメダルを獲得し、注目が高まったアーチェリー。岡山県出身で、2019年の「全日本ターゲット選手権」で初優勝を果たした入江優にフォーカス!
「もう少し、できるはず」。クールな表情の裏にある、負けず嫌いの一面。
70m先にある、直径122㎝の的。射った選手ですら肉眼ではどこに当たったか確認できないほど小さい。その的を、重量のある弓を支えながら、制限時間内にシューティングしていくスポーツ、それがアーチェリーだ。手元のミリ単位のずれでさえ、的に当たるポイントが大きく変わってしまうが、トップ選手はほぼ中心の9点以上をとることが当たり前だという。強靭な精神力も求められるこの競技で、日本トップレベルのアスリートが、岡山にいる。
すらっと細く、凛とした佇まいの美人アーチェリー選手・入江優(25)。備前市出身の彼女がアーチェリーを始めたのは、小学校6年生のとき。中学校の部活で姉がアーチェリーをしていたことがきっかけだった。当時は、運動も苦手で、何かスポーツをしていたわけでもない。そんな少女が弓を握って始めたのは、基礎動作の反復練習ばかり。的を狙えるようになったのは、数カ月が経過してからだった。「正直おもしろくなかったけど、地道な練習が嫌いな方ではないので」と笑って当時を振り返った。
彼女が初めて大会に出たのは、中学生で出場した「中日本中学生大会」。ここでいきなり2位に入る。その後「全日本キャデット・アーチェリー選手権大会」でもベスト8に。だが、その結果でも悔しかったという。前年度に出場した姉が、さらに上の成績を残していたからだ。「負けず嫌いとはよく言われます。やるならとことんやる、やらないならやらないって極端な性格ですね。普段も頑固かもしれません(笑)」と入江選手。クールな外見とは裏腹に、どうやら彼女、相当負けず嫌いらしい。その悔しさを晴らすように、年齢制限が変わり出場できた、高校1年生のときの「全日本キャデット大会」では、優勝を果たしたというからあっぱれだ。その後、ユースの代表選考会でも2位に入り、日本代表として、世界ユース大会にも出場した。
大学は、アーチェリーが強い韓国出身のキムコーチに教わりたいと長崎へ。そこでも着実に成長を遂げ、3年生でナショナルチームに入り、4年生ではインカレで優勝。まさに順風満帆に見える彼女だが、高校時代も大学時代もいい成績をとった印象が全くないと話す。なにせアーチェリーは、安定した成績を残さないとトーナメントを勝ちあがれないが、一発勝負という側面もあり、結果が変動しやすいのだ。実際、高校3年生のインターハイでは個人戦2回戦で敗退したり、大学生4年生で挑んだリオオリンピックの最終選考会で落ちたりと、悔しい経験も多い。そのため、大学、社会人と、節目節目でアーチェリーを辞めようか考えたという。「リオの最終選考会は本当にぼろぼろで、さらに半年後のナショナルチームの選考会もひどい結果だったんです。前年はたまたま調子がよくてナショナルチームに入れたんですけど、周りは経験豊富な先輩ばかりだし、私はここにいていいのかなと悩みました」。
そんな彼女が立ち直れたのは、キムコーチと、ロンドンオリンピックでメダルを獲得した早川漣選手の存在が大きい。「早川選手もロンドン後に指導してくださったんですが、二人とも経験や知識が豊富で、本当に細かいところまで突き詰めて取り組んでいるんです。例えば矢の羽の張り方とか、道具のチョイスとか。上のレベルで戦うにはここまでやらないといけないんだと思ったんです」。高いレベルの二人から指導を受けることで、体力・技術面、そして細かな意識と、自分にできることはまだまだあると気づかされた。自信がないからこそ、もっとやらないといけない。負けず嫌いが、前を向いた。
卒業後は岡山に戻って研鑚を積み、昨年10月に行われた「全日本ターゲット選手権」ではついに初優勝を果たす。しかし、先日の東京オリンピック最終選考会では、残念ながら敗退。「本当に東京オリンピックに向けてやってきたので、気持ちの整理が難しかったですね。正直、今もできてはいないです」。それでも今の自分について「もう少しできるかなって。伸びしろがなかったらもう辞めるって言ってますね(笑)」と話してくれた。やると決めたらとことんやる彼女が「もう少しできる」と言った。さあ、また持ち前の負けず嫌いを発揮するときだ。クールな顔が、笑顔であふれる瞬間を心待ちにしよう。
(タウン情報おかやま2020年2月号掲載より)