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岡山から夢を追うアスリートを応援! 夢人

《小松原美里×アイスダンス》夢の舞台は未来の自分を信じ抜いた先に。

THE VOICE OF ATHLETE

  • 情報掲載日:2019.12.12
  • ※最新の情報とは異なる場合があります。ご了承ください。

《小松原美里×アイスダンス》夢の舞台は未来の自分を信じ抜いた先に。

今年もフィギュアスケートのシーズンが開幕した。特にアイスダンスは、岡山・倉敷に育成環境が整っており、今季も地元選手の活躍が期待される。今回はそんな地元選手の中でも「もっとも五輪に近い」小松原美里選手に独占インタビュー!

夢人
小松原美里 MISATO KOMATSUBARA
岡山県出身。1992年7月生まれ。倉敷フィギュアスケーティングクラブ所属。15歳でアイスダンスに転向し、2014-2015シーズンのイタリア選手権では、日本人初となる銅メダルを獲得。全日本選手権では、年々順位を上げ、2018-2019シーズンでは初優勝を飾る。パートナーは夫でもあるティム・コレト。

幾度も苦難を乗り越え、ただひたむきにオリンピックという夢へ。

 今年9月、男子シングル・高橋大輔選手がアイスダンスへの転向を発表した。日本を代表するスター選手の転身は世界中のファンを驚かせたが、中でも「めちゃくちゃびっくりしたけど、本当にうれしい!」と喜びを爆発させたのが、同郷の小松原美里選手だ。というのも、高橋選手は彼女の人生を変えた張本人。「大ちゃんみたいにかっこいいスケーターになりたい」。野球少女だった彼女が9歳でフィギュアに挑戦する決断をしたのは、当時から地元誌をにぎわせていた高橋選手へのあこがれがきっかけだった。

 アスリートにあこがれる子どもは多いが、夢の舞台に続く道のりは概して厳しい。何千時間、何万時間もの練習を重ねても、「一流」の舞台にたどり着けるのはほんのひと握り。そんな厳しい現実に、早々に夢に見切りをつけてしまう「卵」たちが世界中にどれだけいることだろう。けれど、彼女は違った。もともと踊るのが大好きだった彼女にとって、スケートは格好のステージ。シングル時代こそけがが多く高度なジャンプに苦戦したが、15歳でアイスダンスに転向すると瞬く間に才能が開花。岡山学芸館高校在学中に全日本ジュニア選手権を制すると、そのまま3連覇を達成。2015年にはシニアの国際大会で初優勝を飾るなど、華々しい戦績を残してきた。

 もちろん、何もかもが順調だったわけではない。アイスダンスはパートナーとの相性が要で、呼吸が合えばシングル以上に豊かな演技表現が実現できるが、うまくいかなければ個々の技術がどれほど高かろうと得点にならない難しさもある。「もともと私がアイスダンスに転向したのは、オリンピックという大きな夢があったから。長所を高め合い欠点を補い合えるアイスダンスなら、自分の力をより発揮できると思ったんです。ただし、そのためにはシングル以上に練習を重ねなければならないし、お互いの思いをすり合わせていく過程もとても大切。だけど、その考えを共有できるパートナーを見つけるのは、実はとても難しい」。結局彼女はこれまで3度のペア解消を経験。一時は海外に拠点を移してまでがんばってきただけに、3度目は「目の前が真っ暗になるくらい落ちこんで引退も考えた」という。

夢人
夫でもあるコレト選手と息ぴったりの演技を披露する小松原選手。「リンク上ではたまに意見がぶつかることもあるけど、結婚して3年、けんからしいけんかはしたことがない」のだそう

 そんな彼女のひと筋の望みをつないだのが、現パートナーでアメリカ出身のティム・コレト選手だ。「これが最後と挑んだトライアウトの相手がティムだったんですけど、会場に行くと彼の荷物がまさかのロストバゲージ。最初の2日間はまったく練習できませんでした。でもその間たくさん話をして、お互いを知れたのが本当によかった。私たちは将来の目標や好きな選手、アイスダンスに対する向き合い方もまったく同じ。もう一緒に滑るまでもないくらい、『彼なら』と思えたんです」。その後2人は結婚し、公私を超えたパートナーになるのだから、やはり運命の出会いというのはあるのだろう。それを証明するかのようにペア結成後の彼らは国内の競技会を次々と勝ち抜き、2019年の国別対抗戦ではアイスダンスはベストスコアで銀メダルを獲得。彼女の競技人生は、ついに念願の五輪出場に向けて大きな一歩を踏み出した――はずだった。

 彼女の脳裏に再び「引退」がよぎったのは、2019年7月。練習中の度重なる転倒で脳しんとうを起こし、一時は下半身の麻痺に加え言語障害も発症。日常生活さえままならず、五輪を目指すどころか競技復帰も困難な状態になってしまったのだ。絶望感に打ちひしがれる彼女を奮い立たせたのは、通院先で目にしたパラ選手の姿だった。「スポーツ医療で有名なドクターがいたこともあり、院内には何人ものパラ選手がいました。みんな身体的には私よりずっと大きなハンデを抱えている。けれどそれを言い訳にして夢から目をそらす人は誰ひとりいない。そんな彼らを前にして『こんな体で競技に戻れない』なんてとても言えなかった」。その後、懸命なリハビリに臨んだ彼女は、3カ月という驚異的なスピードでリンクへの復活を果たした。

夢人
「どんな人生にも楽しいときや悲しいときがある。復帰間もない今季は、けがも挫折もたくさん経験してきた私たちだからこそ見せられる人間味豊かな演技で臨みたい」と話す小松原美里&ティム・コレトペア

 体調が万全に戻ったわけではない。復帰後の演技に絶望し、涙が抑えきれなくなることもある。そんなとき、パートナーのコレトはこう声をかける。「アスリートにとって、けがが理由で思うように動けないことほど辛いことはない。けれど、もしそれを乗り越えることができたら、そのとき美里はヒーローになれる。周りの人に勇気を与えることもできる。今までと同じ滑りができないなら、今の2人にしかできない滑りで戦えばいい」。そんなコレト選手に支えられ、彼女はこれからも22年の北京五輪を目指して挑み続ける。今季のリズムダンスのテーマ曲は『dream girls』。歌詞を見ると、「未来には、以前見たものよりはるかに大きな夢が待っている」――そんな言葉が書かれていた。

(タウン情報おかやま2019年12月号掲載より)

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