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岡山芸術創造劇場 ハレノワ ~カウントダウン♪ 千日前から

深~い! 新劇場「岡山芸術創造劇場」と千日前の誕生物語vol.16

変わる 街をウォッチング。岡山芸術創造劇場 ハレノワ ~カウントダウン♪ 千日前から

  • 情報掲載日:2023.03.05
  • ※最新の情報とは異なる場合があります。ご了承ください。

新劇場のお膝元・表町商店街から発信する「ありがとうファーム」のSDGsな商店街への挑戦。~ありがとうファーム編①~

2023年9月にグランドオープンする新劇場、『岡山芸術創造劇場 ハレノワ』。このステキな『ハレノワ』という名前は、一般公募によって決定しました。

考案したのは、深谷千草さん。深谷さんは、『ハレノワ』ができる千日前のすぐそば、表町商店街で活動する『ありがとうファーム』のスタッフで、『ハレノワ』ができることで、表町商店街が活性化することを願っているひとり。

今回は、これから『ハレノワ』と手を携えて街を元気にしようとしている『ありがとうファーム』にフォーカスしてみたいと思います。

▲『ありがとうファーム』のロックバンド「ザ・グリーンハーツ」。昨秋、岡山芸術創造劇場 ハレノワ プレ事業 開館1年前カウントダウン企画でハレノワダンサーズとコラボしました

▲表町商店街栄町地区にある『ありがとうファーム』の本拠地『GALLERY&CAFE』には、手仕込みからあげの店も併設。就労継続支援A型事業所のほか、B型事業所、リワークのための訓練施設、障がい者グループホームなども運営する
▲「PARA MESSAGE FES 2022」。一般客のほか、支援してくれる企業関係者も招き、メンバーたち自身が1年間の仕事の成果や成長をプレゼンテーション。地域の子どもたちと歌やダンスも披露し、観客を飽きさせないよう趣向を凝らした約2時間のステージは、笑顔とパワーと「ありがとう」の言葉にあふれて…

「生まれてよかったと思える共生社会を一緒につくりませんか。…来年はハレノワでお会いしましょう!」。
2022年12月3日、岡山市の『天神山文化プラザ』で開かれた「PARA MESSAGE FES 2022」をそんな言葉で締めくくったのは、2代目社長・木庭康輔さん(木庭寛樹会長の次男)。

『ありがとうファーム』では、色々な障がいや難病のあるメンバー(利用者)約120人と、職員約30人が働いています。「障がい者の真の姿と想いを届けたい!」と、2018年から毎年恒例で開いているこのイベント、なんと2023年は11月に念願の『ハレノワ』小劇場で開催することになったのです。

▲木庭寛樹会長。1961年岡山市生まれ。早稲田大学理工学部卒業後、建設会社に就職。瀬戸大橋工事などの現場監督を経て、企画・デザインの部署に在籍。37歳で独立。設計事務所・広告デザイン業を始め、2004年から人材派遣や採用コンサル業にも携わり、2010年に会社を譲渡。2014年、(株)ありがとうファームを創業
▲木庭会長の本と遺言詩『知ることは、障がいをなくす。』。『ハレノワ』への想いもつづられている

「僕らがなにもできないと思われるのが怖い、いやだ!」。

PARA MESSAGE FES開催のきっかけとなったのが2017年、『ありがとうファーム』のロックバンド「ザ・グリーンハーツ」のリーダーが練習終了時に叫んだこの言葉でした。

当時、岡山県倉敷市で障がい者の500人規模の大量解雇と事業所の倒産が起こり、それは全国にも広がりました。その在り方について、一部ネガティブな声が上がりました。

リーダーの叫びを受けて、「じゃあ、みんな。声を上げてみる勇気はあるのか?」と創業者・木庭寛樹会長。

メンバーたちはうなずき、翌年の第1回「PARA MESSAGE FES 2018」で大量解雇事件に関する各自の考えや想いを伝え、パフォーマンスを繰り広げました。まさに、観客が「目からうろこ」のステージになったのです。

▲取締役副社長・馬場さんがファシリテーターを務める「白熱トークライブ」。時事ネタや社会問題を、障がい者当事者のメンバーがゲストパネラーを迎えて白熱トークを展開。毎月第2水曜14:00~15:00 全国オンラインライブ配信のほか、開催回はすべてアーカイブで視聴可能。他社の新人研修の場になったことも。昨年は『ハレノワ』劇場長もゲストとして登場!

『ありがとうファーム』の企業理念「生き生きと堂々と、人生を生きる。」とともに掲げた、スローガン「知ることは、障がいを無くす。®」。これを社会に浸透させ、障がいの有無に関わらず、ともに助け合える共生社会の実現を目指そう!と、メンバーと職員が一丸となって活動しています。

▲『ありがとうファーム』の「パートナーシップ推進室」担当の馬場拓郎さん(中央)、「ハブラボ」代表のアートディレクター・深谷千草さん(右)、テレワーク管理責任者で「ザ・グリーンハーツ」でも活動する荒谷桃子さん(左)。運営委託された優雅な佇まいの文化・芸術・音楽の発信拠点『KOTYAE』にて。2階はメンバーのアトリエ

2020年1月、木庭寛樹会長はがんが見つかり、惜しくも2022年6月に旅だちました。闘病中、愛するメンバーと職員に伝えたいと書いて出版した『知ることは、障がいを無くす。』(吉備人出版)はみんなの道しるべに。

「俺がした数々の失敗は『ありがとうファーム』をやるためだったんだ」と友人に話していた木庭会長には、重い障がいを持って生まれた長男がいました。けれども以前は、建築設計、企画・デザイン、人材育成など次々と事業を手掛け、仕事を頑張ることで家族を支えようとしていたといいます。

そしてついに2014年、その「障がい」に向き合うべく、アートとサービス業を二本柱とする『ありがとうファーム』を設立したのです。

▲表町商店街のデパート『岡山天満屋』のフードコートで大人気となり、現在はその近くに移転した『ありがとう焼うどん』。『ぶっかけ ふるいち』提供のもっちり麺に特製ソースが絶妙にからまった焼うどんは大盛も並盛も390円。その2階の『ARIGATOカレー』390円~はスパイスを調合して作る本格派。『焼き肉 ひだや』から寄付された、ジューシーで厚みのある牛肉のハラミの端材がゴロゴロ入り、トッピングも楽しめる

会長は創業当初、メンバーたちが入社してきた時、障がいがあっても能力の高い人が多いことに驚いたとか。

そんなメンバーひとりひとりが自分らしく輝けるよう対等に寄り添い、仕事につながるよう個性を伸ばす…。そのために、時代を読んで革新的アイデアを積極的に取り入れました。

たとえば、さまざまな不平等、貧困、飢餓、環境汚染、教育など、世界が抱える問題を解決するために国連が掲げた17の目標「SDGs」に着目。それらの目標に向かって活動し、『ハレノワ』との連携で文化・芸術が好きな人々が集う、思いやりにあふれた街になることを望んでいたそうです。

▲社内コンペで優秀賞に輝いた『雑貨の森Coco』。ハンディキャップアーティストの作品だけでなく、一般のハンドメイド作家の作品も委託販売。『株式会社イタミアート』提供ののぼり旗の端切れで作る「エシカルのぼりグッズ」は全国1160万人の障がい者の収入向上に貢献し、「おかやましんきんSDGsアワード2020」の最優秀賞を受賞

では、なぜ表町商店街を拠点にしたのでしょうか。

実は会長はこの近くに実家があり、子どもの頃は表町商店街が遊び場だったとのこと。

「一般的な障がい福祉の事業所は人里離れた場所にあることが多い。だからこそ、地域に開かれた場所にしたくて商店街を選んだと聞いています」と、『ありがとうファーム』の馬場拓郎取締役副社長。

「会長はよく『この街がSDGsな商店街になったらいいなぁ』とつぶやいてましたね。それを広めるポスターまで作っていました。表町商店街は歴史が深く、特に南のエリアは音楽・文化・芸術の印象が強い。
だから、たとえばアートを通じて社会に貢献できることを始めることで、『恩返しの循環』が生まれるような場所になればとよく言っていました」。

▲2022年10月、地域のひとり親家庭と生活困窮家庭の子どもらを無料招待し、フード屋台などの縁日や工作・アートなどが楽しめる「こども商店街」を開催。200人以上が来場して大盛況に。系列飲食店のお得な共通クーポンを配布し、それを利用してもらうことで売り上げの一部を資金に回した。この日は、建設中の『ハレノワ』周辺を、クイズを解きながら歩く「ハレノワぐるり徒歩ツアー」も開催された

現在、『ハレノワ』の徒歩圏内に、飲食店5店舗と雑貨店1店舗を展開。飲食店チームでは、人気店の余った食材を有効活用しています。

雑貨店では、編み物チームがのぼり旗の端切れを独自の丈夫な編み方でカラフルなグッズに変身させた作品が評判に。また、コロナ禍に突入すると、以前から取り入れていたテレワークのノウハウを全国の事業所に無償提供。今や250以上の事業所に利用され、全国の編み物作家に依頼して大量受注も可能になりました。

アートチームでは、所属ハンディキャップアーティストの絵を企業に貸し出したり、商品のパッケージデザインとして企業とコラボレーションしたり。企業から提供された廃材で工作する場を子どもたちに開放し、メンバーが講師となって見守る「ハブラボ」も人気です。

できないという思い込みを捨ててチャレンジし、社会貢献する…。

『ありがとうファーム』でそのチャンスをつかんだメンバーの表情は、生き生きと輝いています。

次回は、『ハレノワ』のプレ事業でも大活躍する、『ありがとうファーム』のアートチームの活動をレポートします。お楽しみに!

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