あたりまえにある身近なあんなものやこんなものに、実はこんな歴史や理由があるのです…。
そんな身近にある何? なぜ?を調べます。
こいのぼり~岡山が生産量日本一!~
5月5日は端午の節句、こいのぼりの日! そのこいのぼりの生産が日本一の企業が岡山にあるって知ってましたか? その名は『徳永こいのぼり』。そこで、日本一にまでなった発展の歴史や全国の節句飾り事情など、こいのぼりのあれこれを聞いてきましたよ。
『徳永こいのぼり』がこいのぼりの生産量日本一になるまで。
特長は、日本画家が描く優美なこいのぼり。
4月に入ると田園の真ん中にあるお宅で掲げられたこいのぼりが風にたなびくのを見て、「ああ春だなぁ~」と感じるのは私だけではないはず。そんなこいのぼりの生産量日本一を誇る会社が、実は和気町にあるのを知ってましたか? それは1947年創業の『徳永こいのぼり』。日本画家でもある徳永春穂が創業者で、長男の誕生を祝い手描きの自作こいのぼりを揚げたところ、近所で評判になり注文が来るまでになったことが始まりでした。美人画で有名な伊東深水に弟子入りしていたこともあり、春穂の画によるこいのぼりは、優美な姿が特長。『徳永こいのぼり』で販売する代表的なこいのぼりの原画は約30年前まで春穂が手がけており、この上品な作風が他社と差別化されて、人気となっているんです。
多色使いのこいのぼり「京錦」が爆発的人気に。
今の業界トップに上りつめるまでになった転換期は、1990年に「京錦」というこいのぼりセットを発表したこと。それまで黒や赤、青などの単色使いが一般的だったこいのぼりに、錦鯉をイメージし、1匹のコイのウロコに多色を使い、濃淡や色の配置で変化を付けた「京錦」が評判を呼びました。当時は問屋が強く、新しい商品を出したところで相手にしてもらえず、店にも卸してもらえないような時代。そこで営業スタッフが全国の地域で一番人気の専門店に直接営業に回った作戦が功を奏しました。店の人に「京錦」を目の前で広げて見せると、インパクトのある7色ぼかし染めのこいのぼりの華やかさに「おおーっ!」と驚きの声が上がり、その感動した流れで「うちで売りましょう!」と決断してくれる店が多かったそう。時はバブル期。この華やかで迫力のあるこいのぼりは人気を博し、売り上げを伸ばしていきました。ちなみに、80年代には金箔を施したこいのぼりがはやったそう。バブリー!!
また、中国に自社工場を作り、コンビニやホームセンターなどで販売する「ミニ鯉」を年間200万匹も製造。ぐんぐんと売り上げを伸ばし、こいのぼりの生産量日本一の企業へと発展していきました。
こいのぼりの製造現場の工場見学へ。
さて、こいのぼりの製造現場に潜入!
さて、今度はこいのぼりが作られている現場へ潜入してみました。和気町の本社では、こいのぼりの裁断、縫製が行われています。ちなみに染めは群馬県や新潟県でされているそうです。取材時には5mものこいのぼりの裁断作業中。時には10mを超える大きなこいのぼりを作ることもあり、その大きさごとに下の机を配置換えして作業が行われるそう。今まで最大で25mものこいのぼりを作ったことがあるそうですよ。スケールが違いますね!!こちらのこいのぼりは、手捺染という染めの技法を使った、鮮やかな発色が魅力。それに金箔を施したものが最近の主流だそうです。工場には、昔から使っていた道具だという、ウロコごとに模様を付ける型も置かれていました。こいのぼりの柄には細かいこだわりが隠されているんですね!
取材に行ったのは3月下旬の製造最盛期。名入れや家紋入れの作業も本社で行われていました。間違いはもちろん、位置のずれがあってはいけない繊細な作業で、最盛期は午前3時頃まで作業し続けていたこともあったそうだけど、今は機械化も進んで以前よりも楽になったそうですよ。
屋内で飾ることができるこいのぼりも種類豊富!
また、最近は住宅事情でポールを立てて外で風になびかせるこいのぼりの設置ができない家庭も多いと思います。そこで屋内で飾ることのできる屋内こいのぼりも多種多様に用意されています。見学しているときに目に入ったのは、コイの体の中に綿を入れて泳いでいる形にキープさせたまま飾れるオブジェのような室内飾り。これは玄関や床の間に飾ると季節感が出ていいですね! また壁に貼り付けて楽しむ今どきなインテリアデザインの「puca」シリーズも製造されていました。ひれなどの小さな部品もミシンで縫製をされていましたよ。「puca」シリーズはすでに3月の時点で全国の小売店への卸販売分は完売なのだそうです。すごい!!
またこいのぼりの作り方を応用して、「かつおのぼり」や「さわらのぼり」などの魚型のぼりも製造。さらには「オオサンショウウオのぼり」をはじめ、オリジナルのオーダーも受け付けているとか。リアルな魚の姿ののぼりが空を泳いでいる風景もおもしろいですね!
そうだったんだ! こいのぼりあれこれ。
全国で違う、こいのぼり事情。
営業活動で全国を回っているという『徳永こいのぼり』のスタッフ。そんな中、地域差や売れ筋はあるのですか、と聞くと「実はけっこうある」とのこと。端午の節句を祝う際には、こいのぼりのような「外飾り」と、五月人形のような「内飾り」のパターンがあるそうで、「外飾り」の人気が高いのは西日本だそう。「北は雪国だし、外に飾りにくい事情があるのでは」とのこと。庭用では5~7mほどの大きさのこいのぼりが売れ筋ですが、茨城や栃木、群馬などの関東地方は10mもの大きいこいのぼりの注文が多い土地柄なのだとか。広い土地を持ち、さらに財力のある人が多いのでしょうか。立派なこいのぼりを掲げていると自慢になりますもんね。また、四国は一番上にある吹き流しの幅を大きくしてくれという注文が多いそうです。
さらに九州は特徴的で、こいのぼりのほか、「武者絵」ののぼりを飾る風習があるとか。実は、歴史的にも「武者絵」のぼりの方が先に生まれていて、武家が節句の祝いに「武者絵」のぼりを掲げていたいたところ、庶民も子どもの節句に何か飾りたいという話になり、こいのぼりが生まれたのだとか。岡山では「武者絵」のぼりをなかなか見ないので、勉強になりました!
知っておくと役立つこいのぼり基礎知識。
こいのぼりに関するちょっとした豆知識も教えてもらいましたよ。こいのぼりを掲げる期間は、4月3日頃(旧暦の3月3日以降)から5月末頃までだそう。注意してほしいのは、雨にぬれた時にあせって急に片付けないこと! ぬれたまま保存すると色移りしたり、カビが生えたりすることがあるのでご注意を。しまうのも、こいのぼりがしっかり乾いている晴れた日にぜひ。
こいのぼりは子どもの祖父母から贈られるイメージがありますが、どちらかというと母親側の両親から贈られる場合が多いのだそうです。しかし今は両親が購入される場合もあるとか。「5月5日の端午の節句は、子どもへの愛情を伝える日です。子どもの誕生と成長をお祝いして、親や兄弟、祖父母など家族が子どもを囲んで一緒に過ごし、しっかりと愛情を注いでください。そうした記憶がお子さまの大切な思い出となり、優しく健やかな成長につながるのではないでしょうか」と『徳永こいのぼり』の専務の永宗さんは語っていました。今年こいのぼりを眺める際には、こういった歴史を振り返りつつ、楽しんでくれるとうれしいです!
今回訪れたのは…
徳永こいのぼり
本社ショールームではこいのぼりのほか、五月人形やひな人形なども販売。知識豊富なスタッフに要望や節句への思いを伝えよう。
現在、こいのぼりやひな人形と子どもとを一緒にかわいく撮った写真を募集するフォトコンテストを開催中!「#2020徳永こいのぼりフォトコン」を付けてInstagramに投稿するだけでOK! 優秀作品にはプレゼントも。詳しくはホームページへ。
Information
徳永こいのぼり
- 住所
- 和気郡和気町藤野935-4
- 電話番号
- 0869-93-1147
- 開館時間
- 9:00~18:00
- 休み
- なし
- 駐車場
- 20台
- HP
- https://tokunagagoi.co.jp/
画像素材:PIXTA