Mission_86/素材本来の味が伝わる、上品な甘さが魅力。『藤戸まんぢゅう』のルーツを訪ねて、藤戸エリアの歴史スポットを調査せよ!
甘酒風味の薄皮&こし餡のお饅頭。趣ある本店は一見の価値アリ。
こんにちは。『まかせてちょ~査団スペシャル』の団長Mです。
日本各地には古くから伝わる郷土の和菓子があり、岡山にもその土地ならではの銘菓がたくさんあります。お菓子を通じて、地域に息づく文化や歴史に想いを馳せてみるのも素敵ですよね。
『まかせてちょ~査団スペシャル』ではさまざまな岡山のお菓子を紹介してきましたが、今回は、倉敷の地で代々受け継がれてきた名物の饅頭をピックアップしました。
饅頭のほとんどを占めるなめらかなこし餡と、透き通るほどに薄い皮が特徴的。こちらは、倉敷名物の『藤戸まんぢゅう』です。
薄皮の原材料は、地元の麹を使った酒粕から作る甘酒と小麦粉。こし餡には北海道産の小豆が使われています。
甘酒の風味が利いた薄皮が餡の甘さをふんわりと包み、小豆本来の味わいを上品に引き立てます。主役の餡とマッチする薄皮のバイプレイヤ―っぷりが素晴らしく、とても美味しいのです!
こちらの『藤戸まんぢゅう』は800年以上の歴史を持っているそうで、起源は1184年(寿永3年)にも遡るのだとか。「寿永」というのは平安時代末期にあたる年号で、歴史が古すぎてまったく想像が追い付きません! どうやら発祥の地・倉敷市藤戸町の歴史と大きく関わっているのだとか。
今回は長く親しまれる『藤戸まんぢゅう』のルーツを探るべく、藤戸町にある本店を訪ねてみました!
1860年に創業した『藤戸饅頭本舗』の本店がこちら。店舗は150年以上前に建てられた木造建築のままで、外観からして和の風情あふれる雰囲気が漂います。
表の看板には、2005年の大ヒット映画『ALWAYS三丁目の夕日』のロケ地にも使われた、と書かれてありました。ノスタルジックな店構えに長い歴史の重みを感じますね。
現在は7代目の金本博行さんが代表を務め、奥様と娘さん2人が接客などを担当しています。
店頭に立っていたのは看板姉妹の姉・金本昌子さん。団長Mは、親子4人のほのぼのした会話をキャッチ。テキパキと作業しながらも、仲のよさを感じさせる温かい雰囲気が伝わってきましたよ。アットホームな接客を楽しみに来るお客さんも多そうですね!
昔ながらのたたずまいでお客さんを迎える店内。年季の入ったガラスケースや箪笥、神棚などがあり、創業時のものと思われる暖簾も掲げられていました。
当時を知らなくても「懐かしい!」と感じるのは、日本人の心に刻まれたDNAなのでしょうか?
壁の古時計は、150年も前からカチカチと時を刻み続けているそうですよ。今も現役で活躍しているなんて、ご長寿すぎて驚きです。
変わらぬ味を、より美味しく。昔ながらのよさを生かすための商品づくり。
ちょうどタイミングよく、工場から出来たての『藤戸まんぢゅう』が運ばれてきました。
「本店からクルマで約5分の場所には、工場併設の『串田店』があります。片方の店舗しか知らない方も多いんですよ~」と昌子さん。
「本店は古きよき風情を楽しんでもらえますし、串田店は駐車場が広くクルマで行きやすい立地です。岡山県内の各地に取扱店舗がありますが、あえて直営店に買いに来てくださる方もいてありがたいです」。(昌子さん)
保存料を一切使用しないため、賞味期限は3日間。すべて無添加の原料にこだわっているからこそ小豆や素材本来の味が引き立ち、後口のよいすっきりとした甘さを感じられます。
本物の竹の皮を使った包みは、5個入りが400円、10個入りが790円。「渋くて珍しい」と若い世代にも人気だそうですよ。そのほかにも紙箱入りや贈答向けの木箱もあり、パッケージにも昔のよさを残しています。
「若い方にも『藤戸まんぢゅう』を知ってもらい、より美味しく味わっていただくためにも、新しい商品づくりに力を入れてます」。
「地元の老舗『つねき茶舗』とコラボしたブレンド茶の販売や珈琲屋さんの出店イベント、東京歌舞伎座での商品販売などを行っています。実は、飲食店向けに餡の提供もしているんですよ」。(昌子さん)
ブレンド茶のネーミングは、そのものズバリ「藤戸まんぢゅうがおいしくなるお茶」。分かりやすい!
そのまま食べる以外に、美味しい食べ方ってあるんですか?
「電子レンジなどで温めたり、冷やして半解凍状態で食べたりすると、風味と食感の違いを楽しめますね。後は揚げて天ぷらにしたりとか」。(昌子さん)
お~、揚げ饅頭にする手があったか! 油と餡がなじんでしっとりコクのある味になりそう。気になる方はぜひ試してみてください。
『藤戸まんぢゅう』が生まれた歴史を知るため、『藤戸寺』へお参り。
そういえば、『藤戸まんぢゅう』にはどんな歴史があるのですか?
「平安末期の源平合戦の時代、村人の供養のために供えられたのが始まりと言われています」。(昌子さん)
その後は『藤戸寺』の境内で売られるようになり、江戸時代以降に町の饅頭店での製造・販売へ移ったのが『藤戸饅頭本舗』の起源とされています。資料によると、最初はもっと餅菓子に近いものだったとか。
藤戸エリアは「源平合戦ゆかりの地」として、当時の歴史を物語る史跡が残されています。『藤戸まんぢゅう』も、この歴史があってこそ生み出されたものなんですね。
せっかくなので、ゆかりのある『藤戸寺』や周辺の史跡を巡ってみることにしました。お世話になった本店を後にし、お土産に買った竹皮包みの饅頭を片手に散策をスタート。
まずは本店から目と鼻の先にある『藤戸寺』にお参りします。
最初の階段を上がると開けた境内があり、さらに階段を上がった先に本堂がありました。町を見下ろすことができる眺めのよい場所です。境内は緑が多く、桜やモミジなど四季折々の植物が植えられています。
何と704年(慶雲2年)頃はお寺の周辺一帯が海だったそう。『藤戸寺』は、海から浮かび上がった千手観音像を本尊として、天平年間(724年~748年)に行基菩薩によって建てられた、とされています。
そんなスペクタクルな逸話があったとは! 今は誰も知る由がありませんが、土地の歴史やルーツを知るのは面白いですね。
1184年(寿永3年)には、藤戸合戦でこの地を収めた源氏の武将・佐々木盛綱によって、寺院の修復と両軍の戦没者供養が行われました。この供養が『藤戸まんぢゅう』の誕生のきっかけに。
参拝を済ませた後、本堂に貼られた資料に目をやると、こんな一文がありました。
「佐々木盛綱~前代未聞!馬で海を渡った男」。
これだけ聞くと、人間離れした豪傑感あふれる武将のようですね(馬もスゴイけど)。
佐々木盛綱は、源平合戦時に平氏の陣取る島(児島)を攻める際、漁夫から浅瀬のある場所を聞き出して海峡を渡ったのだとか。近くにかかる橋には『盛綱橋』という名前が付けられています。
「盛綱橋」「経ヶ島」を巡り、藤戸・天城の歴史ある町並みをのんびりお散歩。
『盛綱橋』は『藤戸饅頭本舗』本店のすぐ近く。橋の上には佐々木盛綱の銅像がありました。
おおっ、これはまさに海を渡っている様子ですね。
この橋は1989年(平成元年)に建設され、今は地域の交通や生活の基盤として欠かせないものになっています。赤い欄干が美しい!
こちらは『経ヶ島』と呼ばれる史跡。佐々木盛綱が『藤戸寺』で大法要を営んだ際に、書き写した経文を埋めたことから名前が付いたと言われています。
遥か昔、小さな島が点在する海だったという藤戸地区。この場所だけ神様に守られているような、神聖な雰囲気がありますね。
古い民家が多く残る町並みに紛れ込みました。
『藤戸饅頭本舗』の金本さんご一家によると、昔は商売の町としてさまざまな個人商店が点在していたのだとか。今も和風建築やレトロな看板などが残り、歩いているだけで懐かしい気分に浸れます。
天城地区の路地に入ると、小さな教会を見つけました。こちらは『日本キリスト教団 天城教会』。明治時代に建てられた疑洋風建築で、窓の形や扉の模様、門の装飾などに洗練された美しさを感じます。
歴史情緒あふれる町の中には、神社仏閣だけではなく教会もあるのですね。和と洋、両方の伝統建築を楽しめました。
町の中央には、穏やかに流れる倉敷川。川べりの道は開放感がありますね。
『藤戸まんぢゅう』と、そこから広がる藤戸エリア探訪、いかがでしたか? このほかにも『浮洲岩跡』『天城陣屋跡』などの史跡が点在しています。
このエリアを訪れたら、趣ある建物を探したり、町の商店をのぞいてみたりするのも楽しそう。歩き疲れたら、甘い『藤戸まんぢゅう』をつまんで「おやつチャージ」するのも悪くないかも?
直営店に足を運んだ際には、お散歩がてらフラッと町を歩いてみるのもオススメですよ!
Information
Information
藤戸饅頭本舗 本店
- 住所
- 倉敷市藤戸町藤戸48
- 電話番号
- 086-428-1034
- 営業時間
- 8:00~16:30 ※売り切れ次第終了
- 休み
- 火曜、第2水曜
- 駐車場
- 4台
- HP
- http://www.fujito-manjyu.co.jp/
藤戸饅頭本舗 串田店
- 住所
- 倉敷市串田919-3
- 電話番号
- 086-485-3221
- 営業時間
- 8:00~17:00
- 休み
- 火曜、第2水曜
- 駐車場
- 6台
藤戸寺
- 住所
- 倉敷市藤戸町藤戸57
- 電話番号
- 086-428-1129
<消費税率の変更にともなう表記価格についてのご注意>
※掲載の情報は、掲載開始(取材・原稿作成)時点のものです。状況の変化、情報の変更などの場合がございますので、利用前には必ずご確認ください
※新型コロナウイルス感染拡大防止の対策として、国・県・各市町村から各種要請などがなされる場合がございます。必ず事前にご確認ください
※お出かけの際は、ソーシャルディスタンスの確保やマスクの着用、手洗いや消毒など、新型コロナウイルス感染予防の対策への協力をお願いします