朝ごはんに、おやつに、食事に添えて…まいにちのいろんなシーンで登場する「パン」。岡山にもたくさんのパン屋さんがあり、「この店のこのパンが好き!」という自分だけのお気に入りがある人も多いのでは? パンに恋したTJ女性スタッフが、とっておきの「惚れパン」を心ゆくまで語ります!
[ナビゲーター]しょこ
TJスタッフ暦10年目のアラサー女子。パンを買いに行くために遠征し、自分でも家で焼くほどのパン好き。朝ごはんは必ずパンと決めており、なかでも一番好きなのはベーグル! 先日みごと「パンシェルジュ3級」を取得! 現在は2級受験に向けて勉強中。子どものころの将来の夢は、パン職人の旦那さんと結婚すること。
15♥パンめ 『BAKERY JAM』の「塩バターメロン」
菓子パン生地に、薄くのばしたビスケット生地をかぶせて焼いた日本発祥のパン。「メロンパン」という名前は、表面のひび割れや格子模様がマスクメロンに似ているためという説、「メレンゲパン」がなまって「メロンパン」になった説、当初は生地にメロンフレーバーが加えられていたためそう呼ばれるようになった説、業務用調理器具「メロン型」を使用して成型したパンだから説など、諸説あるそうです。でも、これらの真偽はすべて不明なんですって。ルーツ自体も、『帝国ホテル』のガレットというパンが原形とされていたり、海外からの客船に乗っていたパン職人が持ち込んだとされていたり。真相が気になる、謎のパンなのです。
今回、「メロンパン」をテーマにするにあたりいろいろ食べてまわりましたが、どのお店にもある超・メジャー商品なのでどれにしようか決めかねておりました。そのなかで思ったのが、私自身が出版社で長く「言葉」を扱う仕事をしていて、一番大事で一番難しいと思うのは「いかに言葉だけで『行きたい』『食べたい』と思わせるか」ということなんです。シズル感のある表現や味わいをイメージさせるテクニックなど、本当に奥が深い! だからこそ、パン屋さんに行っても気になるのは、「商品のネーミングセンス」。その付け方ひとつが売上や人気を左右するとか。今月は、「思わず私がうなった名前」のメロンパンをふたつご紹介しようかと思います。
玉野方面へ向かう児島湖沿いの道。青々とした湖の景色を眺めながら車を走らせていると、水色の壁に赤いドアのキュートなお店が見えてきます。その色の対比が実に爽やかで、なんだか映画の世界に入りこんだみたい。こぢんまりとした店内はフレンチシャビーな雰囲気で、味のある感じがとってもすてき! 最近のパン屋さんに多いセルフチョイス式ではなく、対面販売方式を取り入れているお店です。そういえば、この連載で対面販売店を取り上げるのは初めてですね。アンティークなショーケースに並べられたパンたちは、なんだかかわいいオブジェのよう。セルフもわくわくして楽しいけれど、こんな風にケースから選んで包んでもらうのも特別な感じがしていいですね~! どことなく、並んだパンたちもよそゆきなおすまし顔に見えてくるから不思議です。
で、まず今回紹介するひとつめのメロンパンは『BAKERY JAM』さんの「塩バターメロン」180円。商品名を見ただけで、サクッふわっじゅわっと口の中にあまじょっぱさが広がっていく気すらしてきますよね。端的ながら実に秀逸なネーミングだと思います。私ははじめて購入したとき、店を出て車に乗った瞬間に人目も気にせずほおばってしまいました…。行儀が悪いことはわかっていても我慢できない、魅惑的なメロンパンちゃんです。まっ白なビジュアル、表面はざくっと、中はふ~んわり…かじると一気に広がるバターと粉の風味。そこに塩気がアクセントを加えて、舌と食道、飲み込んだ胃袋までが「おいしーーーー!」って叫びます。
日々40~50種類が出そろうなかで、特に力を入れているのがオトナ好みの「ハード系」パンたち。歯切れよく、みずみずしさともっちり感が持ち味の「バゲット・ロデヴ」380円や、グリュイエールチーズがたっぷり練り込まれた「チーズバゲット」290円など、力強いパン好きにはたまらなくツボなラインナップです。ちなみに「ロデヴ」は水分が多い生地を使うため、プロの職人でも扱うのは難しいとされているんですが、こちらでは毎日販売しているんです。その髙い腕前とたゆまぬ努力に脱帽ですね! また、絶妙の塩加減がたまらん「塩フランス」160円は、こんがり香ばしい皮生地に大きめのフランス産塩粒がクセになるひと品。しょっぱさが生地のおいしさを引き立てる女房役となって、シンプルに小麦そのものの味を楽しめます。まさにこのままワインのあてになっちゃいそうな主役級のうまさ! ほか、カシューナッツ、クルミ、アーモンドとチョコざくざくの「塩・チョコ・ナッツ」330円といった、「塩」を効果的に取り入れたフランスパンも印象的なんです。
それぞれの商品に合わせ、食べやすさと素材の組み合わせの相性を考えて10種類以上もの小麦の配合や熟成の度合いを変えています。だから、微妙にちがう食感とうまみ、甘みが楽しめるんですね! 「日々を過ごすなかでも、お客さんとの何げない会話の端々からも、新しいパンづくりのアイデアが生まれる」と話す店長さん。基本的には「自分が食べたいもの」を糸口に、食材の配合や組み合わせ、割合を変えながら何度も作りブラッシュアップしていくんだとか。商品のポップには、どれも乳製品と卵が入っているかどうかをきちんと書いてあるのが目に留まります。買う人、食べる人の気持ちを考えた細やかな気づかい、隠れた思いやりにも頭が下がります。「真摯」な姿勢だからこそ、「ここのパンじゃないと」っていうファンがたくさんついているんでしょうね。「生地そのもの」を味わいたい、パワーとかみごたえのあるパンが好きな人は絶対お気に入りベーカリーになりますよ。パンの世界、パンの楽しみ方をどんどん広げてくれる1軒だと思います。
Information
BAKERY JAM
- 住所
- 玉野市八浜町見石1608-5 [MAP]
- 電話番号
- 0863-53-9380
- 営業時間
- 8:00~18:00
- 休み
- 水曜、第2火曜、最終日曜
- 駐車場
- 5台