Mission_69/作品、建物、空間まで丸ごとアートを楽しめる、『大原美術館』の魅力をおさらいせよ!
3000点超の圧倒的コレクション。世界の名だたる美術品を鑑賞できる。
岡山県を代表する人気観光地として知られる「倉敷美観地区」。倉敷川を中心に町家や白壁の蔵が建ち並び、江戸情緒あふれる「白壁の町」として当時の面影を今に残しています。
歴史ある建物や文化施設、民芸品を扱うショップなどの見どころが多く、「文化と芸術の町」としても広く知られる存在です。そんな「倉敷美観地区」のランドマークと言えるのが、皆さんご存じの『大原美術館』。
倉敷を基盤に広く活躍した実業家、大原孫三郎によって設立された日本初の私立美術館で、世界の名だたる画家・芸術家の名作を数多く収蔵。貴重なコレクションの数々を身近に鑑賞することができます。
こちらが本館の正面。ギリシャ神殿風の荘厳な造りです。『大原美術館』は本館をメインに、分館(2020年12月現在休館)、そして工芸・東洋館の建物で構成されています。
『大原美術館』が開館したのは1930年。2020年になんと90周年の記念すべき節目を迎えました。倉敷の歴史を語る上でも欠かせない存在であり、一度は訪れたことがあるという人も多いのではないかと思います。
ちなみに私こと「まかせてちょ~査団」の団長Mは、中学2年生の時に初めて足を運んでから10回近くはリピートしております。美観地区の散策コースのひとつとして、無性に足を運びたくなる時があるんですよね。
こんな素晴らしい美術館が地元でずっと存続している、ということのありがたみをヒシヒシと感じています。
今回は、『大原美術館』をまだ訪れたことがない人のためにも、館内や作品の特徴、魅力を今一度おさらいしてみます。
今回は特別に、広報担当の佐々木さんに案内役をお願いしました。まずは本館から鑑賞をスタート!
入口正面に飾られているのは、児島虎次郎の作品「和服を着たベルギーの少女」。本館には児島虎次郎がコレクションした時代の西洋絵画が展示されています。
作者の児島虎次郎は、明治から大正、昭和にかけて活躍した岡山県生まれの洋画家。『大原美術館』の創立においても非常に重要な人物だそうですね。
「児島虎次郎は紡績で財をなした大原孫三郎の支援を受けて、海外で画家としての活動に励みながら西洋美術作品の収集を行いました」(佐々木さん)
『大原美術館』の礎ができたのは、日本の美術界の発展を願って収集を行っていた児島虎次郎と、その意見を柔軟に受け入れて私財を投じた大原孫三郎の尽力があってこそ。日本の文化と西洋の文化の共存が描かれたこの作品は、江戸時代の街並みの中にありながら、西洋をはじめとする世界の文化に触れられるという『大原美術館』の在り方を象徴する一枚としてここに飾られています。
誰もが知る西洋絵画の名作が地元に。岡山ゆかりの日本洋画にも注目!
『大原美術館』は、近代・現代の西洋絵画を中心に、総合美術館として日本人の描いた洋画や、民芸運動に関わった作家たちの作品、エジプト・南アジア、東アジアの古美術、注目の現代美術作家の作品など、全部で3000点以上の作品を収蔵しています。
本館内はゴーギャンやルノアール、ピカソやモネといった巨匠の名作ぞろい。この場所にこれだけの作品が集まるのは、本当にすごいことなんです。
天井から柔らかな光が差し込む本館2階。出入口の上にある作品が『大原美術館』で最も大きな絵画、レオン・フレデリックの作品「万有は死に帰す、されど神の愛は万有をして蘇らしめん」です。
「この絵に合わせて、美術館の横幅を決めたといわれています」
写真では遠くから撮影していますが、たくさんの人物が細密に描きこまれた群集画の大作です。
左側は炎にまかれた人々が死に絶える地獄のような風景。そして右側は、神の愛のもとに人類が復活し、咲き誇る花々に囲まれて幸せな表情を浮かべる天国のような風景。
この絵の中には、第一次大戦で亡くなったという作者の愛娘が描かれています。
団長Mは収蔵作品の中でこの絵が一番好きで、初めて見た時は目が離せなくなるほどに圧倒されました。戦争や平和、生死について深く考えさせられる作品です。
こちらは『大原美術館』を代表する名画、エル・グレコの「受胎告知」。聖母マリアが天使からキリストを身ごもったことを告げられる場面が描かれています。
400年も前の絵画で、他の収蔵作品に比べても飛びぬけて古いものだそう。1点だけ置かれていると、作品の印象が深まりますね。
「この作品の購入価格と本館の建物の建築費用は同じぐらいの額なんですよ。」と佐々木さん。児島虎次郎も、さすがに大原孫三郎に確認を取ったうえで購入したのだとか。
ということは、それ以外の作品は許可なしで買っていたということですか? 信頼関係の賜物ですね!
次に進むと、通常は分館に展示されている日本洋画の代表作が飾られていました。
「麗子像」で有名な岸田劉生の「童女舞姿」や、フランスで活躍した画家・彫刻家の藤田嗣治が手掛けた作品もありました。日本画家のコレクションも素晴らしい!
次は児島虎次郎の作品を集めたコーナー。学生の頃から晩年までに手掛けた絵画を展示しています。
美しく力強い画風と、空気感や匂いまでも感じられるようなリアリティ。こんなに素敵な絵を描く画家だったとは!
この展示コーナーのおかげで、児島虎次郎の魅力を改めて知ることができました。美術鑑賞は自分の感性をどんどんアップデートさせてくれますね。
移転のために2017年に閉館した『児島虎次郎記念館』は、2022年以降に『新児島館』としてオープンする予定です。
建物の美しいデザインも必見。いろんな角度から館内を楽しもう。
作品だけではなく、建物自体のデザインもぜひチェックを。細部にまで『大原美術館』の美意識が宿っています。
本館2階の展示室奥には丸窓がありました。倉敷美観地区の白壁の街並みが美しく切り取られ、なんだかタイムスリップしたような気分に。
工芸・東洋館の木レンガの床。栗の木で作ったブロックを敷き詰めているため、歩くとコツコツと音がします。
倉敷ガラスの作家、小谷真三氏が手掛けたレトロモダンな雰囲気のステンドグラス。館内に美しい光を届けます。工芸・東洋館にあるので、ぜひチェックしてみてください。
訪れる度に発見と感動がある。創立90年、ずっと愛される美術館に。
工芸・東洋館は江戸時代後期の米蔵を活用した展示室で、工芸館には芹沢銈介、棟方志功、濱田庄司など民芸運動で活躍した作家6名の作品が1棟ごとに展示されています。江戸時代の蔵を移築・改装したもので、床や窓、照明、什器なども含めた建物内のデザインを、染色工芸家の芹沢銈介が手掛けています。
東洋館への入口には、こんなにおしゃれな鉄板製のドアがありました。
ドアの向こうは、壁石を縦積みにした石仏展示室。東洋館には東アジアの古美術が並んでいます。作品の背景に合わせた空間演出も見どころです。
本館北側にあるミュージアムショップでは、作品をモチーフにした様々なグッズが販売されています。最近は、家に飾って楽しめる複製画が人気上昇中だそう。
モネの「睡蓮」がプリントされた美しいスカーフ。
ショップにはマスキングテープやクリアファイルなど、気軽に買えるミュージアムグッズがたくさん。美術館に入館しなくても買えるので、散策途中のお土産にも最適です。
こちらは分館の前庭。オーギュスト・ロダンやヘンリー・ムーアの彫刻が並んでいます。
『大原美術館』の展示は基本的に時代順ですが、企画などに伴い変更される場合もあるとか。分館が閉まっている間は、本館に代表的な作品を集めたダイジェスト的な展示形態をとっています。
本来よりも展示作品数は減るものの、鑑賞時間がいつもよりコンパクトに収まり、美術館の「いいとこ取り」ができるというメリットもあるとか。
「以前は気に留めなかった作品でも、ある日ふっと心に響く瞬間があって。その時の展示空間や観る人の心象によって、作品の印象が変わるのが面白いですね」と佐々木さん。
不朽の名作から現代作家の作品まで、幅広いコレクションを誰でも気軽に鑑賞でき、何度訪れても新たな発見や気づきがあるのが『大原美術館』のスゴいところ。
現在は開館100周年の大きな節目に向けて、いろいろな準備や取り組みを進めている最中。「児島虎次郎記念館」の移転といった大きな動きも控えています。また新たな顔を見せてくれるのが楽しみです!
今回撮影できた美術作品はほんの一部分。ぜひ足を運んで、珠玉のアートを体験してください!
Information
Information
大原美術館
- 住所
- 倉敷市中央1-1-15 [MAP]
- 電話番号
- 086-422-0005
- 開館時間
- 9:00~17:00(入館は16:30まで) ※ミュージアムショップは10:00~17:00
- 休み
- 月曜
- 入館料
- 一般1500円、高校・中学・小学生500円
- 駐車場
- なし
- HP
- https://www.ohara.or.jp/
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