Mission_38/世界中のアートファンが注目。街を舞台にアート作品が語りかける、その奥深い魅力を体感せよ!
岡山で話題のスポットやイベント、知る人ぞ知るレアな情報など、誰もが気になる地元のモノ、ヒト、コトを『タウン情報おかやま』が徹底調査するこの企画。スタッフが実際に現地を訪れ、体験したとっておきの情報をリポートして、「岡山の魅力を再発見できる、よりディープでフレッシュな街ネタ」をお届けします!
「岡山芸術交流2019」とは?
岡山市街地を歩くと、ふと目につくカラフルな塔。見たことのある人も多いかもしれませんね。これは岡山市北区の城下交差点一角にある採光塔。公共物として設置されていましたが、2016年に行われた「岡山芸術交流2016」のアート作品として彩色されたものなんです。
この作品「多面体的開発」を手がけたのは、リアム・ギリックというN.Y.のアーティスト。今や城下エリアのランドマークとして、街の風景にすっかりなじんでいます。
シンフォニーホールの南側にあるこちらは、ペーターフィッシュリ・ダヴィッド・ヴァイスの作品「より良く働くために」。ビルの壁面には、働く上での10の信条が英文で書かれています。
普段は気にも留めなかったビルの壁に突如現れた「HOW TO WORK BETTER」のメッセージ。シンプルで前向きな言葉にハッとさせられた人もいるのではないでしょうか。これも「岡山芸術交流」の作品として2016年から展示され、今年は「岡山芸術交流2019」の関連プロジェクト「A&C」として展開しています。
「岡山芸術交流」は、岡山市で3年ごとに開催される国際現代美術展。2016年に第1回が開催され、地元はもちろん国内外から多くのアートファンが訪れました。この美術展の大きな特徴は、岡山城・岡山後楽園周辺の徒歩圏内にアートが点在していること。街中のさまざまな施設を会場として、空間に合わせた作品が展開されています。
そして今秋、第2回目となる「岡山芸術交流2019」が開催。9か国18組のアーティストが参加し、よりユニークな美術展へとパワーアップしました。今までの美術展示の概念を超える新たな試みを加え、国内外からの注目度もアップ。現代アートを通じて岡山の魅力を盛り上げています。
今回は、団長Mが「岡山芸術交流2019」を体験レポート。事務局広報スタッフの平さんにご案内いただき、作品のほんの一部と楽しみ方のコツを紹介します!
『旧内山下小学校』をアートクルーズ!
ツアーガイドの平さんと待ち合わせしたのは、岡山市北区丸の内にある『旧内山下小学校』。
平成13年に閉校してからはイベントなどに活用され、「岡山芸術交流2019」では主要会場に使われています。まずは入口の券売所で鑑賞チケットとガイドマップをゲット。チケットはオリエント美術館、岡山駅前のインフォメーションセンターでも購入できます。
「鑑賞する順番に決まりはありません。ガイドマップを片手に、好きな場所から自由に巡っていただけます」と平さん。今回はこの場所からアートクルーズをスタート!
『旧内山下小学校』校門横にある屋外プール。プールの中にはピンク色の液体がたっぷり。時折コポコポと渦が沸き上がり、まるでイチゴミルクをかき混ぜたようにトロみのある揺らぎが生まれています。ちょっと美味しそうかも。それにしても、急に異世界に連れてこられたような気分…。平さん、この作品は?
「パメラ・ローゼンクランツ作の『皮膜のプール(オモロム)』です。標準化された白人の肌色を表現し、動きを作ることで生命も意識させられますね。このプールからはほかの作品も見えるんですよ」
横を見ると、『RSK山陽放送』本社の壁に大きなLEDスクリーンが。そこに映し出されているのは空中を漂うカエル。宇宙実験中の様子を映像化したジョン・ジェラード作の「アフリカツメガエル(宇宙実験室)」ですが、CG映像ながらかなりリアル。ピンクのプールと同じ視界に収まると、より非日常感がアップします。
校庭には土が盛られ、なだらかな山が出来上がっています。子どもなら思わず走り出したくなるこの空間、このような演出にも驚きです。山の間にポツンと置かれているのは、エティエンヌ・シャンボー作の「微積分/石」。
かの有名な彫刻作品、ロダンの「考える人」をモチーフに、考える人が居なくなった跡を表現しているそう。考えるのをやめたあの人はどこに行ったのか? 答えが見つかったのか、それとも…。
校庭は生物の居ない荒野を連想させ、「人類の居なくなった世界」にまでイメージを広げさせられます。
校庭ではティノ・セーガルによるパフォーマンスも行われ、作品同士が共鳴し合うような不思議な空間を作り上げています。
観て感じて、考える面白さ
『岡山芸術交流2019』のアーティスティックディレクターを務めているのは、自身もアーティストとして2016年の展示に参加したピエール・ユイグ氏。アーティストが全体をディレクションする珍しい美術展です。
「2019年のタイトルは『もし蛇が』。蛇は恐怖の対象だったり、神聖なものだったりと国や文化、人それぞれで捉え方が違います。この美術展を一つの生命体としてイメージし、作品と作品をゆるやかに蛇行していくような関係性や、自然発生的に形を変える表現を多くつくりあげています。空間と作品、人が影響し合い、自由な表現や捉え方に結び付くのがこの美術展の面白さです」と平さん。
テーマの「蛇」をモチーフにしたのがこちら。『旧内山下小学校』の裏庭に残された土俵を使ったパメラ・ローゼンクランツの作品。ロボットの蛇が土俵の上を縦横無尽に動きます。
音に反応して動きが変わることもあるそうで、手を叩いてみたところわずかな反応が! 動いてくれるのを待ちつつ、次は校舎の中へ。
古い校舎は照明が落とされ、外光もシャットアウト。夜の校舎のようでなんだか不気味ですが、普段はなかなか体験できない空間にワクワクする団長M。平さんに置いて行かれないように恐る恐る廊下を進みます。
校舎のメインとなっているのは、ファビアン・ジロー&ラファエル・シボーニのSF映像作品。1971年の日本をテーマに、『旧内山下小学校』で撮影された映像作品とそれにまつわる立体作品が校舎内に点在しています。映像と今いる場所がリンクするような、不思議な感覚。
奥の部屋をのぞき見するようなアプローチも。壁や床に穴をあけてしまうという大胆な展示方法に、団長Mはもちろん平さんもびっくり。校舎内にはマシュー・バーニーとピエール・ユイグの作品もあります。
体育館にあるのは、音楽家として活動するタレク・アトウィ作の「ワイルドなシンセ」。石琴やホーン、真空管のような装置やミニサイズのアンプなどがたくさん置かれ、金属的な即興の電子音を響かせます。電子機器や工業デザインが好きな人にはたまらないであろう、大規模なインスタレーションです。
天井に設置された防蛾灯は、虫が飛び込むと周辺の照明が一瞬落ちる仕組み。普段は見向きもしない虫の存在に気づかせられる、フェルナンド・オルテガの体験型作品です。偶然飛び込んできた虫の死を知らせる表現。深いメッセージが伝わる作品です。
作品と作品が交わりあうのが「岡山芸術交流」のみどころ。体育館のほか数カ所にはディフューザーで香りの作品をリンクさせ、視覚、嗅覚、聴覚と、五感をフルに使ってアートを体感できます。
街に潜むアートを、宝探し気分で楽しむ
現代アートは難解なイメージ。しかし、観る人の感性にゆだねながら自由に楽しめるところに、現代アートの本当の面白さがあります。
平さんに鑑賞のコツを聞くと、「作品のキャプションや解説で情報を入れる前に、まずは頭の中を真っ白な状態にして作品と向き合ってみてください。自分の素直な気持ちで感じてから解説を見ると、『こんな意味があったんだ』と、より作品の面白さを感じられます。できれば誰かと一緒に見たり、観た感想をシェアするのがおすすめ。さまざまな視点の違いに気づかされます」とのことでした。
次に向かったのは「林原美術館」。著名な建築家・前川國男氏が設計し、国宝を含む国内屈指の古美術品を展示する美術館です。(「岡山芸術交流2019」開催中は所蔵作品の展示はありません)
会期中はその空間を丸ごと展示に活用。写真は、AI(人工知能)のキャラクターBOBが、アプリの操作によって成長するイアン・チェンの「BOB(信念の容れ物)」。
そして、ピエール・ユイグ作の「2分、時を離れて」。CG動画の少女、アン・リーの映像が終わると、目の前に驚きの現象が…! 動画の最後までゆっくり鑑賞するのがおすすめです。
アートクルーズをしていると、いつもの街の風景もどこか新鮮に感じてきます。街中のパブリックアートはもちろん、普段何気なく見ている建物や看板、自然の情景の中にも、実はアートが隠されているのかもしれません。
「アートは観る人のイマジネーションを膨らませて、頭を柔らかくしてくれるもの。作品を観て感じた『?』が感性と好奇心の源です」と平さん。
誰でも気軽に、街ブラしながら楽しめる「岡山芸術交流2019」。まるで街自体を美術館にしたようなぜいたくな美術展です。会期中はオリジナルのお弁当やグッズも販売。11月3日(日)には子どもがナビゲートするアートツアーが開催されるなど、さまざまなイベントが企画されています。
これをきっかけに、気になるアート展に足を運んだり、岡山の身近なアートを探しに出かけてみてくださいね。
Information
Information
岡山芸術交流2019
- 期間
- 2019年9月27日(金)~11月24日(日)
- 休み
- 月曜(11月4日は開催、翌日火曜が休)
- 開催時間
- 9:00~17:00(入館は~16:30)
- 開催場所
- 旧内山下小学校、旧福岡醤油建物、岡山県天神山文化プラザ、岡山市立オリエント美術館、岡山城、シネマ・クレール丸の内、林原美術館ほか
- 料金
- 鑑賞券 一般:1800円、岡山県民:1500円 高校生以下無料
- 問合せ
- 岡山芸術交流2019チケットセンター
- 電話番号
- 086-206-2185
※作品に関する問合せは 岡山芸術交流実行委員会事務局 電話番号086-221-0033 - HP
- https://www.okayamaartsummit.jp/2019/