降水量1mm未満の日が日本で一番多く、災害も非常に少ないことから、映画やドラマの撮影スポットとして注目されている岡山県。市街地からクルマで30分圏内に、海、山、古い街並みなどがあり、田舎の風景や島、高原など豊富なロケーションがそろっています。
「晴れの国岡山は、日本のハリウッドだね!」
そんな声が高まって、誰が呼んだか「HALLE WOOD(ハレウッド)!」。
「HALLEWOOD」の立役者であり、全国の映像制作会社が頼りにするというすご腕コーディネイターの妹尾真由子さんが、知られざるロケの裏側やさまざまなエピソードを通じて、岡山の魅力を紹介していく連載です。
《連載第3回》映画「罪の声」編
みなさんこんにちは。岡山県フィルムコミッション協議会の妹尾真由子です。
今年も新型コロナウイルス感染拡大の影響で、イベントの開催や不要不急の外出等自粛が求められるゴールデンウイークが終了。そして当県にも緊急事態宣言が発令されました。
そうしたなかで、私の休日の過ごし方といえば…、仕事が趣味みたいなところもあり…。
過去の支援作品を引っ張り出して鑑賞したり、支援作品の原作を読み返してみたり、新たなロケ地候補になる場所の情報を集めたり…。ゆっくりまったりなおうち時間を過ごしています。
さて今回は、2020年10月に公開され、Blu-ray&DVDが2021年4月23日に発売となった「罪の声」について紹介します。
本作は、日本中を震撼させた未解決事件をモチーフに、事件の真相と犯人像に迫る塩田武士氏著のヒューマンミステリー小説を映像化。小栗旬さんと星野源さんの豪華共演が話題となりました。
この作品はいつもと違うパターンでの支援を行いました。
別作品でお世話になった美術部さんから、「都内近郊で『岡山にある食堂』という設定で撮影をするから、飾りに使う岡山っぽいものを色々送って欲しい」という依頼があり、速攻で事務所内をゴソゴソ…。
岡山城や後楽園、倉敷美観地区などのポスター類、岡山県のマスコットキャラクター「ももっち」のぬいぐるみやのぼりなど…。飾る際に選択肢が多い方がよいと思い、サイズや種類、色味などさまざまな岡山グッズを段ボールに詰め込んでいきました。
そして最後に、事務所に飾っている私の故郷・矢掛町のマスコットキャラクター「やかっぴー」のぬいぐるみを忍ばせて発送完了!
後日、無事に岡山設定での撮影が終わったとの連絡がありました。
そして、その数日後…。「小栗旬と星野源が下津井の方に居たらしいけど、何か撮影ありました?」と尋ねられ、まったくピンとくるものがなかったので、「何かのロケ番組とかで来たんですかね?」と答えたのですが、まさかそれが本作の岡山ロケだったとは…。
そして、美術協力をした作品と同じものだったと後々知ることになるという…、今までにないパターンでした。
本作は、内容自体も魅力たっぷりな作品となっていますが、劇中の岡山シーンにもぜひ注目していただきたいと思います。
瀬戸大橋の袂にある田土浦公園で撮影された、瀬戸大橋と夕焼けをバックに阿久津(小栗旬)と曽根(星野源)が缶コーヒーを手に語り合うシーンは、作品にぐっと引き込まれる印象的なシーンとして映し出されています。
このシーンは、天候の影響で思うような画が撮れず、当初1日で撮影終了だったにもかかわらず、みっちり詰まったスケジュールを調整してまで、翌日、同じ内容を同じ場所で粘って撮影したという渾身の一幕!
そして美術支援をした「岡山にある食堂」設定のシーンはというと、「岡山設定」がまさかの「岡山県津山市設定」だったことを劇場で鑑賞中に知り動揺…!!
「『津山市』と言ってくれれば、津山の関連グッズを手配したのに…」と後悔したのも束の間、あの「やかっぴー」がスクリーンに登場!
役場勤務時代に、「初代・やかっぴーのお姉さん」として行動をともにしていた相棒の「やかっぴー」が銀幕デビューを果たしたことで、落ち込んだ気持ちが一変、歓喜へと変わりました。
普段は、岡山県内で行われる撮影の支援がメインではありますが、本作のように「岡山設定」の演出を支援する依頼が舞い込んだ際には、「何市の設定なのか」など、より丁寧に対応していきたいと改めて感じた作品になりました。
是非、おうち時間にご鑑賞ください。
作品データ
【タイトル】
「罪の声」
【劇場公開日】
2020年10月30日全国公開
【ストーリー】
35年前、日本中を巻き込み震撼させた驚愕の大事件。食品会社を標的とした一連の企業脅迫事件は、誘拐や身代金要求、そして毒物混入など数々の犯罪を繰り返す凶悪さと同時に、警察やマスコミまでも挑発し、世間の関心を引き続けた挙句に忽然と姿を消した謎の犯人グループによる、日本の犯罪史上類を見ない劇場型犯罪だった。
大日新聞記者の阿久津英士(小栗旬)は、既に時効となっているこの未解決事件を追う特別企画班に選ばれ、取材を重ねる毎日を過ごしていた。
一方、京都でテーラーを営む曽根俊也(星野源)は、家族3人で幸せに暮らしていたが、ある日、父の遺品の中に古いカセットテープを見つける。
「俺の声だ―」
それは、あの未解決の大事件で犯人グループが身代金の受け渡しに使用した脅迫テープと全く同じ声だった! やがて運命に導かれるように2人は出会い、ある大きな決断へと向かう。
「正義」とは何か?「罪」とは何か? 事件の深淵に潜む真実を追う新聞記者の阿久津と、脅迫テープに声を使用され、知らないうちに事件に関わってしまった俊也を含む3人の子どもたち。
昭和・平成が幕を閉じ新時代が始まろうとしている今、35年の時を経て、それぞれの人生が激しく交錯し、衝撃の真相が明らかになる――
【キャスト】
小栗旬/星野源/松重豊/古舘寛治/宇野祥平/篠原ゆき子/市川実日子/火野正平/宇崎竜童/梶芽衣子
【スタッフ】
監督:土井裕泰/脚本:野木亜紀子
【岡山県内撮影時期】
2019年4月11日(木)~12日(金)
【県内ロケ地】
田土浦公園(倉敷市)
岡山県フィルムコミッション協議会の詳細は下記から。
【Profile】
岡山県フィルムコミッション協議会
妹尾真由子
矢掛町出身。2013年に矢掛町入庁。産業観光課での勤務時代には、ご当地キャラ・やかっぴーとともに町の観光PRを担当。2016年より岡山県観光連盟に出向。2018年より岡山県フィルムコミッション協議会の専任スタッフに
<消費税率の変更にともなう表記価格についてのご注意>
※掲載の情報は、掲載開始(取材・原稿作成)時点のものです。状況の変化、情報の変更などの場合がございますので、利用前には必ずご確認ください