劇団『MONO』代表・土田英生さんが新劇場のプレ事業で来岡!/スペシャルインタビュー
2023年開館の『岡山芸術創造劇場 ハレノワ』 。開館に向けて、舞台芸術の魅力を広め、「わくわく、ドキドキ、ソワソワ」を体験できるさまざまなプレ事業が展開されています。
その目玉となる、劇団『MONO』第49回公演「悪いのは私じゃない」が、2022年3月5日(土)、6日(日)に開催予定。
『MONO』は京都を拠点に、30年以上日本の演劇界の第一線を走り続けてきた劇団。岡山公演は、2007年の第34回公演「地獄でございます」以来、実に15年ぶりになります。
そこで今回は『MONO』代表で、作・演出担当、俳優・土田英生氏に新劇場や舞台についてお話を伺いました。
──新しくできる『岡山芸術創造劇場』について、どんな期待をされていますか?
表現の場として新しい拠点ができるのは、僕ら演劇関係者にとってとても嬉しいことです。
岡山出身でなくても、その土地の劇場を何度も利用して馴染んでくると、「帰ってきたよ~」という気に本当になるんですよ。新劇場もそんな場所になるといいなあ。
岡山にはまだ小劇場のよさを知らない人が多いと思いますので、開館したらとにかく一度は足を運んでほしいですね。
──岡山で公演予定の演劇「悪いのは私じゃない」について教えてください。
今回の物語は会社の会議室が舞台です。社内でいじめがあって、担当の社員がヒアリングを行うと、それぞれの立場によって言い分がまったく違う。
『MONO』は会話劇を得意としている劇団なんですが、今回はいつも以上に喋りまくります(笑)。
今の世の中、SNSによって世界が開かれていくと思っていたら、意外とその逆で、似た人が集まって罵倒し合ってブロックして終わる…そんなことが起きています。
立場や価値観が違う人が何を考えるのかを想像する力、「エンパシー」を持てない人が増えている気がする。『MONO』のお芝居は、常にエンパシーを「つなぎたい」という意図が根底にあるんです。
──土田さんは、大学生の頃から約35年間、脚本を書かれていますね。そもそも舞台に関わったきっかけは?
僕はもともと目立ちたがり屋でしたが、高校時代、自意識過剰で押しつけがましいところが裏目に出て、いじめを経験しまして。いろんな本を読みすぎて虚無感に浸り、誰ともしゃべれないという時期がありました。
転機になったのは大学生の時。無理やり劇団に勧誘されて舞台に出たんですけど、緊張しすぎて頭が真っ白になったんです。それがすごく気持ちよくて。終演後も1時間くらい涙が止まらなかった。
たぶん自意識がゼロになって楽になれたからだと思うんです。それで「演劇を一生やろう!」ってその日に決めました。
脚本は書く気はなかったけど、書く人がいなくなっちゃって。好きなお笑いも入れて書くようになりました(笑)。
──一他の劇団やドラマ、映画などの脚本も執筆されていますね。
2022年末までに8本を書く予定です(2021年10月現在)。全部、舞台の脚本です。
僕の作品はよく、「お笑いか、それとも社会派か」と聞かれますが、笑いと笑いじゃない部分の境界線を目指しているんです。
たとえば、葬式で正座をして足がしびれて転ぶと笑えるじゃないですか。でも、その人が故人と関係が深い人だと、足がしびれたことがすごく悲しく見える。同じ物事でも喜劇になったり悲劇になったり。
理想は客席の半分が大笑いして半分が泣くような舞台ができたらいいなと思っています。なかなか難しいですけどね。
──劇団『MONO』、そして長く続く秘訣について教えてください。
『MONO』は2019年に結成30周年を迎えました。その前年に初めて新メンバーが4人入団。以前は男ばかり5人の劇団でしたが、今回の岡山の舞台は9人全員が登場しますよ。
僕は昔から、『MONO』のメンバーは「対等の関係」で、「5人でやるバンドだ」と言ってきました。でもみんなが50歳前後になり、もう少し劇団として生き延びたいと、ついに30歳前後の若い男女を入れてしまいました(笑)。
「対等の関係」について少し説明すると、劇団っていうのは、代表や看板役者が威張っちゃうことがある。で、新人がチケット売りや下働きをさせられて、嫌になって3年くらいで入れ替わっていくパターン。
僕はそれがすごく嫌だった。そこで、新団員は2年かけて僕らにぜんぜん憧れていない、対等にやれる人を選びました。なので、新団員たち、わりと偉そうにしています(笑)。
僕の誇りはメンバーが辞めていかないこと。一回、僕のほうが「解散しようよ」と言ったことがあるんですけど、「年に一回くらいは会おうよ」とみんなに言われて、30年以上やってます(笑)。
この機会にぜひ、泣き笑いの詰まった『MONO』の世界をのぞいてみてください。
『岡山芸術創造劇場 ハレノワ』ではプレ事業として様々なイベントが開催されています。作秋には、土田さんが台本作りのノウハウを披露した「はじめての戯曲講座」も開講されました。また後日お伝えしますね。
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