Season 2 最終話/双葉食堂(備前市)のそばモダンとホルモンうどん
東京から岡山に移住してきたライターが、まだ食べたことがない、岡山で愛されているグルメを求めて食べ歩き、行きつけにしたいお店を開拓します!
あとわずかで平成の時代が終わりますが、ワタクシは東京に住んでいるときから、時代に左右されることなく昔ながらの風情が残っている飲食店が好きで、そのようなお店を見つけては足繁く通ったものです。本連載で数多くの飲食店に行くようになってから、岡山にも昭和の時代から何十年も営業を続けていて多くの方に愛されている老舗店がたくさんあることが分かり、うれしくなりました。
今回も創業当時からの味を受け継ぎ、根強い人気を誇っているお店を探していたところ、この連載を始めるにあたって知り合った「大盛りアニキ」から「ドンピシャのお店がある」という連絡が入りました。そこで今回は「大盛りアニキ」が推薦する備前市伊部の『双葉食堂』を訪問することにしました。
『JR伊部駅』のほど近く、国道2号線沿いに「食堂」と書かれた大きな看板を発見しました。目指すお店はここで間違いないようです。外観は昔ながらの大衆食堂のたたずまいで、期待に胸が膨らみます。店内の壁には手書きのメニューが貼られていて、昭和の風情たっぷり。この感じがたまらなくイイんですよね~!
お店の外看板にも「メニューの豊富な双葉食堂」と書いてあるように、お品書きが豊富なのでかなり悩みましたが、お店の看板メニューというお好み焼きのなかからご主人オススメの「そばモダン」750円を注文しました。
テーブル席の奥にある鉄板でご主人が手際よくお好み焼きを焼いていきます。「薄い生地から重ね焼きしていく広島風の焼き方です。途中でフタをして蒸し焼きにすることでキャベツの旨みや甘みが出るんですよ」とご主人。出来上がった熱々の「そばモダン」を食べてみると、甘みのあるキャベツと濃いめのソースがベストマッチで、めちゃウマです! ダシ粉を薄くすることで、生地がフワフワになるそうで、カリッとしたそばも実に美味。創業以来の人気メニューというのもうなずけます。
この「そばモダン」、かなりボリュームがあり、1人で全部食べたら確実にお腹いっぱいになりそうです。まだほかのメニューも食べてみたかったので、半分だけ食べて残りはお持ち帰りにしてもらいました。
『双葉食堂』は、丼ものや定食メニューも充実しているので、ご飯ものが食べたくなり、「豚キムチ丼」680円を注文しました。鉄板で焼かれた豚キムチをごはんにかけ、その上に目玉焼きとノリがトッピングされています。食べてみるとキャベツやもやしも入っていて、これまたボリューム満点です。
目玉焼きの黄身と豚キムチを混ぜるとおいしさが倍増し、モリモリごはんが進みます。「キムチに自家製のタレを足して味付けしています。豚肉は肉の問屋さんから直接仕入れている国産の豚肉です」とご主人が説明してくださった通り、素材にも強いこだわりを感じる味で、カツオとコンブ、イリコでダシをとっているというみそ汁も抜群のおいしさでした。
「豚キムチ丼」もかなりのボリュームだったので、これまたお持ち帰りすることにして、お好み焼きと同じく創業以来の名物という「ホルモンうどん」750円を注文しました。ご主人が手際よく鉄板で焼いた「ホルモンうどん」から食欲をそそるソースの匂いが立ちこめます。
食べてみると意外とあっさりしていて、大人の味と言ったところ。ご主人が「しょう油とみそをブレンドした自家製のタレで味付けをしていて、ホルモンは小腸しか使っていないんですよ」と言うように、ホルモンはプリプリしていながらも柔らかくて食べやすいですね。そのホルモンの脂をたっぷり吸ったうどんは感涙モノのおいしさ。「ホルモンうどん」といえば、津山の名物として知られていますが、津山から来たお客さんもこちらのお店の「ホルモンうどん」を食べて「おいしい!」と絶賛されたそうです。
お腹がいっぱいになって大満足したとろで、ご主人の林さんにお店の歴史などについてお伺いしました。「お店は昭和36年に義理の母が始め、その数年後に父が手伝うようになったと聞いています。当時はこの近辺にも飲食店が何軒かあったそうですが、時代の流れとともに同業店が閉店するなか、先代ががんばってこの店を続けてきました」。
調理師学校で奥さんと出会い、ホテルのレストランでのコック経験もあったというご主人ですが、20年ほど他業種に従事されていた時期があったそうです。しかし、「心のなかでは『いつかは後を継ぐんだろうな』と思っていた」そうで、10年前に先代が引退するときに二代目としてお店を引き継いだそうです。現在はご主人夫婦と2人の娘さん、次女の旦那さんの5人が中心になって切り盛りしていて、店内には活気があふれています。
お店のオリジナルステッカーも昭和レトロな雰囲気たっぷり。年配の方を中心に人気があるそうで、帰り際に競うように持って帰られるお客さんも多いそうです。
安くてうまくてボリューム満点なことから、さまざまなお客さんに愛されている『双葉食堂』!
今年で創業59周年を迎える『双葉食堂』には、近隣の会社で働いている方や備前焼作家、家族連れなどさまざまなお客さんが来店するそうです。安くてうまくてボリューム満点なことからお昼どきはあっという間に満席になってしまいます。「先代のときから通ってくださっている方もいますから、お好み焼きやホルモンうどんの基本的なレシピはあまり変えていないですね」とご主人。先代からの味を受け継ぎつつ、先代のときにはなかったメニューも数多くあるそうで、そのような点も人気の秘密のようです。
夜は仕事帰りに一杯飲む居酒屋使いの方も多いという『双葉食堂』。ご主人にお店の今後についてお聞きしたところ、「現在のお店が老朽化しているので、今年の秋には近隣に新店舗をオープンする予定です」とのこと。昭和の雰囲気が残るお店ではなくなるのはちょっぴり残念ですが、新店舗でも変わらぬ味を提供してくださることでしょう。ごちそうさまでした! 次回は「中華そば」にしようか「からあげ定食」にしようか今から悩んでおります。
1年間にわたり連載してきた「はじめての岡山グルメ」は、今回が最終回となります。この連載を始めてから、岡山のご当地グルメは本当にバリエーション豊かで奥深いことを知り、行きつけにしたいお店もたくさんできました。この連載は終わりますが、岡山でのグルメ探訪に終わりはありません。今後もライフワークとして続けていきたいと思っています。
これまでのご愛読ありがとうございました。またどこかでお会いしましょう!(ライター:カタオカキヨシ)
Information
双葉食堂
- 住所
- 備前市伊部1735-4 [MAP]
- 電話番号
- 086-964-2723
- 営業時間
- 11:00~14:00/17:00~21:00
- 休み
- 月曜(祝日の場合も休み)
- 席数
- 32席
- 駐車場
- 10台