皆様、お待たせしました。「第32回」で予告しました「倉敷シーサイドエリア3大ツアー」。玉島、児島を巡り、最後の地・水島エリアにやってきましたよ。これで見事グランドスラム達成です!
「だからどうした?」という心なく、至極まっとうな言葉は聞かないふりをして。水島と言えば「働き者の街」のイメージがあります。学生時代に鷲羽山スカイライン(当時有料)から初めて見た水島コンビナートの夜景は最高でした。昨年は街中が揺れる出来事もあった水島ですが、その分今年はいい年にしたいですね。そんな街で活躍する人たちを支えているのがこのお店。「スタミナたっぷり」とか「ボリューム自慢」な店の多い土地柄ですが、ここは「安くて量がある」ことで超有名! しかも「まあ、値段相応の味だよ!」なんてしたり顔で言わせない「確かな実力(味)」を備えているので、人気が出ないわけがありません。開業した約42、43年前はラーメンが250円で、約5年前の訪問時は357円。その間、数十年ぶりに20円アップした際には、ちょっとした「事件」レベルの話題になったりもしました。「物価上昇が激しかった時代に100円ぽっちの値上がりって!」と驚くと、ご主人は「安さの秘けつは『我慢』ですよ。でももう無理かも…」と弱音をぽつり。その後どうなったかが気になります!
ご無沙汰してます。「アニキ、お久しぶり」。店主の石原大輔さんです。「ワタクシの周りの大輔さんに悪い人はいない」の言葉の通り、本当にいい方です。「5年ぶりですか。この期間は、本当に肉や野菜の高騰が激しくて。断腸の思いで値段改訂に踏み切りました…」。時代の流れは非情ですね。そりゃ仕方ないですよ。「今は消費税込みで399円です…」。なんと! 400円の大台突破を死守ですか! 1円のせめぎあいに思いを馳せ、そこには執念すら感じますよ! 「『基本メニューは300円台』にこだわりがあって。先代である、亡き父の信念が『お客さんに喜んでいただければ、ほかのものはついてくる』だったので、その言葉を胸にがんばってます」。少しは楽になりましたか? 「とんでもない。『もっと我慢、ずっと我慢』ですよ(笑)」。そりゃ、原価の高騰で、新規店の多くのデフォルトメニューは650円から700円台の時代ですからね。値上げしてもその6割程度の価格ってすごいですよ。「『安くても妥協せず』の精神です」。
「そうだ。新メニューが出来たんですよ」。気になりますね。『油そば』561円ですか。これまた安い設定ですねー。そしてボリュームがすごい! 「1.5玉ありますからね。多過ぎたのか、女性が残されたりすると、別のサイズ設定を作ろうか悩みます」。小とか、中とか。「今さら量は減らせないでしょ? いつも後で後悔するんですよね(笑)」。ダハハ。サービス精神が旺盛すぎるんですよ。「2年くらい試作を重ねて、『何か足りないな』と思い続けて。バターと卵黄を入れることで見事にまとまったので、メニュー入りさせました」。かなり深みのある味わいでおいしいですね。うん。確かにバターがいい味を出しています。「バリエーションとして『油そば(チーズ入り)』669円もあるんです」。パルメザンチーズが惜しむことなく注がれてますよ。加減ってものを知らないんですか!(笑) ワタクシはこっちの方がさらに好きです。「辛いバージョンも作りたいんですけど暇がなくて」。最終的には全3種の完成が目標と!
このお店は、『チャーハン』518円もすごいボリュームで有名ですよね。「いや、茶碗1杯分ですよ」。みなさん、米の粒の大きさと全体を比較してみてください。これが茶碗1杯って、馬場さんの茶碗ですか?! 確認すると確かに1杯ではありましたが、大ぶりの茶碗に7~8回も盛り重ねて「マンガ飯」みたいな状態でフライパンに投入してました。「チャーハンは基本は弟の担当なんです」。健太郎さんですね。お写真を撮らせ…。「弟は、一日中フライパンを振り続けて、この時間(15:00ごろ)しか休憩が取れないんで、撮影は無理ですね」。がっかりです。「1日に50~60kgのご飯を炊きます」。50kg?! ちょっと奥さん! 1日約333合ですよ。日本人ひとりあたりの年間米消費量が54.6kgなのに(2015年農林水産省調べ)、それを1日で? 「すぐに炊飯釜が壊れます」。そりゃそうでしょう。そういえば『月刊タウン情報おかやま』1月号の「ラーメン総選挙」では、ラーメンではなく「チャーハン」がランクインしました。「本当に素直にうれしいですよ!」。二枚看板ですね。「『名物ぎょうざ』216円とセットでのオーダーも多いです」。
最後に「しょうゆらーめん」399円ですね。身を切る思いで値上げをして、このクオリティでこの価格はすばらしいのひと言です。ワタクシ「水島の奇跡」と命名させていただきます(それに何の権威が?)。「オープン以来、父が作り続けたラーメンがベースなんですけど、私がイタリア料理店や日本料理店で修行をしていたのでその技術を生かして、常に改良してるんです」。マイナーチェンジを重ねているんですね。「以前は豚骨と鶏ガラが半々だったのを、モミジを中心に鶏の割合を増やしました。後は煮干しなどの魚介と野菜ですね」。そういえばサイドメニューの種類が多いのも気になります。「ここだけの話、サイドメニューを作っていかないとラーメンの値段が維持できないんです…」。あ、本音出た(笑)! 「写真奥の『鶏唐揚げネギソース』594円は、いわゆる油淋鶏(ユーリンチー)ですね。唐揚だけで3バージョンあります」。
父親が生み出したものを、兄弟を中心に守り続けるこのお店は、「お客さんに喜んでいただいてこそ」の精神を見失わずに、決して時代にぶれることなく今日も元気でした。
「1円のプライド」にあらわれる、父の遺した信条を守る店。
約42、43年前、現・店主の今は亡き父親が引いていた屋台が発祥の店。水島で生活する人や働いている人はもちろん、各地から多くに人が駆けつける人気店に成長している。その秘密は、なんといっても過剰なまでのサービス精神。スタッフの元気で心の込もった声に迎えられて席に着けば、その料理のバリエーションの豊富さと、価格に安さに驚くはず。スタッフの「大輔さーん」の声で店主が動き、あわせてスタッフがそれぞれ別の動きを一斉に始める一連のコンビネーションが見事だ。ギョーザなどをアテにして飲んで帰る人、ファミリーで来て全員で満腹になって帰る人たちなど、さまざまな客層がゆったりできるよう客席はゆとりを持って配置。席数も、駐車場も多めに用意されている。それでも休日は満席のことが多い。長い営業時間でもひっきりなしにお客が訪れる人気店のこれからにも要注目だ。400円の壁が破られる日はくるか?
Information
ラーメンハウス 喜楽園
- 住所
- 倉敷市神田2-2-21 [MAP]
- 電話番号
- 086-445-0522
- 営業時間
- 11:00~AM0:30(OSAM0:00) ※祝日の月曜は~21:00(OSAM20:30)
- 休み
- 月曜 ※祝日の場合は営業
- 席数
- 70席
- 駐車場
- 30台