岡山メルパ 福武 孝之館長
映画業界20年、老舗映画館を切り盛りする名物館長。映画が持つ「観ることで、自分の世界が広がる」魅力を広めるべく、多彩なイベントを展開。ジャンルや制作者にこだわらない、テキトーな鑑賞が映画愛を高める秘訣。映画が好き過ぎて、あこがれのターミネーターに変身。特殊メイクがんばりました!
「邦題 その2」
外国映画を日本で公開する際に、その原題を和訳して邦題にしていると思っている方々。
実は素直な和訳ばかりではないのである。意訳はもちろんのこと、全く違う意味のタイトルを付け直すこともしばしばで、中には日本だけでシリーズ風にタイトルを付けている例もある。主役が同じと言うだけでシリーズにしてしまうとはスゴイ発想力ではないか!
何とは言えないので、ここは“沈黙”を決め込むことにする。(笑)
さておき「直訳じゃないことなんて知ってるわぁ!」とおっしゃる方々も多いだろう。
しかし問題は、この“邦題”を付けるという仕事には卓越したセンスが必要となることである。
では誰が命名しているのだろう? その映画を日本で配給する会社に命名専門の部署があるわけではなく、作品によりまちまちなのが現状だ。その作品を担当する宣伝マンが命名する場合もあれば、お偉いさんの鶴の一声もあり、社員全員にアンケートなんてのもある。
だから邦題の命名には出来不出来が激しいのだと推測される。いずれにしても外国映画の場合その権利元に許諾をとらなければならない。これがなかなか大変な作業で、製作者にしてみればタイトルは自分の作品の顔であり、それを変えて世に出すことはよほどの決断である。したがって日本の配給会社は「この映画を日本でヒットさせるためには、このタイトルに変えなければならない!」という強力な説得が必要となり、更に成功しなかった場合には大きく責任が圧し掛かってくることになるのである。
そんな邦題命名に変化が起こっている。じんわりと変わってきたので気が付きにくいのだが邦題命名そのものが減ってきているのである。つまり現在は原題のまま日本公開されることが多いのだ。それは日本人が英語に強くなったこともあるが、権利元との交渉の難しさやリスクが厳しくなってきていることも否めないのである。
例えば大人気シリーズの「ミッション・インポッシブル」。
日本ではテレビ先行で「スパイ大作戦」と命名されていたが、トム・クルーズ主演の劇場版では原題のまま公開されている。
確かに今の観客には“ミッション・インポッシブル”の方がしっくりくることはわかるが、サブタイトルの“ゴーストプロトコル”や“ローグネイション”など、ここまで原題のまま公開されているのである。みんな意味がわかっているのだろうか?
私が衝撃を受けたのは1996年公開の「エグゼクティブ・デシジョン」である。
カート・ラッセルとスティーブン・セガールの分かり易いハイジャックアクション大作なのだが、このタイトルは分かりにくいではないか。私はこの原題なら必ず邦題がつくと思い込んでいたが、なんとこのまま公開されたのだ!そのせいで当時チケットを買い求めるお客さんが窓口でどれだけ噛み倒したことか!「えぐじぇ、えぐじぇくちぶ、でちちょん??」
噛み噛みの無限地獄にハマり、結局ポスターを指差してチケットを買う始末である。
“最終決断”という意味のようだが、最終決断できなかったのは配給会社ではないか!?
この頃から徐々に原題のまま公開される作品が増えたように思えるのだ。
久々に絶妙の邦題と出会いたいところだが、変な邦題よりは原題のままがいいような気もする。悩ましいところである。そこで私は最近、勝手に自分だけの邦題を付けながら映画を楽しむようにしている。
「不可能を可能にする男」シリーズ~悪役商会設立の巻~ ・・・・・。
うん! やっぱ原題でいこう!!!
10月24日(土)より岡山メルパにて
「ミッション:インポッシブル ローグ・ネイション」再上映開始!!
岡山メルパ館長 福武孝之