岡山メルパ 福武 孝之館長
映画業界20年、老舗映画館を切り盛りする名物館長。映画が持つ「観ることで、自分の世界が広がる」魅力を広めるべく、多彩なイベントを展開。ジャンルや制作者にこだわらない、テキトーな鑑賞が映画愛を高める秘訣。映画が好き過ぎて、あこがれのターミネーターに変身。特殊メイクがんばりました!
「バディ・ムービー」
バディとは2人1組のコンビを意味するのだが、映画でバディと言えば、ほぼ刑事ものである。
バディには単なるコンビ(組み合わせ)ではなく、絆とか友情という意味が込められている。
これが刑事にとっては非常に重要な要素であることは理解できる。
そしてよくある設定は“凸凹”コンビである。
全くソリの合わない2人がぶつかり合い、競い合い、最後には分かり合うという展開が定番なのだが、これが不思議と何度見ても飽きないのである。
代表作品は『リーサル・ウェポン』シリーズだろう(1987年~1998年)。
メル・ギブソンとダニー・グローバーの名コンビは映画史に残る刑事となっている。
また私のオススメはウィル・スミスとマーティン・ローレンスの『バッドボーイズ』シリーズだ(1995年~2003年)。
これぞ凸凹コンビの決定版で、方や破天荒なプレーボーイ、方や家庭を一番大切にする平和主義者と、絶対に相いれない2人がバディを組まされ、さらに勘違いから保護対象者に逆に認識されてしまう。
凸凹なのに入れ替わった役をお互いに演ずる2人の面白さはクセになるのである。
これがパターン1の『凸凹バディ』なのだ。
そしてパターン2は『師弟バディ』である。
師匠と弟子、先輩と後輩、ベテランと新米など、師弟関係のバディは新米側の成長が見どころとなる。
オススメ代表作は『メン・イン・ブラック』シリーズだ(1997年~2012年)。
これまたウィル・スミスとトミー・リー・ジョーンズの大人気シリーズだ。
普通の刑事だったK(コードネーム)がその才能を認められ違法エイリアンを取り締まる秘密のエージェントにスカウトされる物語は、一見荒唐無稽なSFなのだが、ストーリーの中心に“J”と“K”の絆や、新米“K”の成長の物語がしっかりとあるのだ。
そして日本にも人気バディはいる。『あぶない刑事』である。
これは少し珍しい『似たものバディ』である。きっとこれがパターン3なのだ。
ダンディとセクシーで差別化しているように見えるが、結局カッコイイ2人という設定は似たもの仲良しコンビで間違いない!
そして今回紹介の新作映画は『相棒 劇場版Ⅳ』である。
間違いなくバディ・ムービーなのだが、この分類が難しい!
3つのパターンのどれにも当てはまらないようでいて、すべてに当てはまるようでもある。
タイトルに“相棒”と書いているにも関わらず、相棒が次々に変わるのだ。つまり相棒が変わればパターンも変わり、楽しみ方も変わるのである。
もはや次の相棒が誰なのかが楽しみのひとつになっている。これぞ新しいタイプのバディだろう。
そして『相棒』の面白さは時事ネタを盛り込んだ脚本にある。
二重三重に練りこまれた展開と今の社会問題に切り込む姿勢は他の刑事ものと一線を画すのである。
とにかく今一番見応えのある刑事ドラマであることは間違いない。
そしてなにより、“今”観ておかなければいけない刑事ドラマなのだ。
なぜならいつお蔵入りになるかわからないからである!(ブラック)
<公開情報>
- 『相棒 劇場版Ⅳ 首都クライシス 人質は50万人!特命係 最後の決断』
- 監督:橋本一
- 出演:水谷豊、反町隆史、北村一輝、鹿賀丈史、他、おなじみの豪華レギュラー陣。
- 2月11日(土・祝)より岡山メルパほかにて公開!
岡山メルパ館長 福武孝之