岡山メルパ 福武 孝之館長
映画業界20年、老舗映画館を切り盛りする名物館長。映画が持つ「観ることで、自分の世界が広がる」魅力を広めるべく、多彩なイベントを展開。ジャンルや制作者にこだわらない、テキトーな鑑賞が映画愛を高める秘訣。映画が好き過ぎて、あこがれのターミネーターに変身。特殊メイクがんばりました!
「スピンオフ」
映画において「スピンオフ」というと、「派生作品」または「外伝」という位置づけで、本線のシリーズから派生した別主人公の物語というところだろう。
この「スピンオフ」に関しては、作品の生い立ちが重要で、良し悪しは作品誕生の経緯を探ればすぐわかるのだ。
そもそも大人気となった作品から派生するもので、本線の高度な品質が絶対条件である。
考えてみれば、大ヒットした映画は、続編が作られる。更にヒットすればシリーズとなる。その上で主役を食う勢いの人気キャラクターが誕生し「スピンオフ」へと派生していくのである。
つまり、本線作品の抑えられない人気が生み出す観客待望の作品のはずなので、そこには強引な企画による生い立ちの痕跡はないのである。
しかし、映画業界の裏側ではビジネス中心の映画製作が主流なので、作品がヒットすれば次回作、更に儲かればシリーズ化、さらに欲をかいてスピンオフという、果てしない欲望が渦巻いているのだ!
当然、強引な「出がらしスピンオフ」も作られて、それは大失敗の巻となるのだ。
したがって「スピンオフ」は最高級の人気シリーズから派生したものを選ぶのが得策である。
そこで今回紹介するスピンオフ作品は、『ローグ・ワン スター・ウォーズ・ストーリー』である。
これぞ最高級シリーズのスピンオフと言っていいだろう。
本作はエピソード4の直前までを描くエピソード3.9である。
そして本線のスター・ウォーズとは別物の位置づけなのだ。
このハッキリとした「別物」の位置づけがポイントである。
本線の人気におんぶにだっこのスピンオフはお勧めできないが、独立した物語として、むしろ本線を更に面白くするスピンオフは大歓迎なのである。
エピソード4のオープニングで語られる宇宙空間に流れていく文字(もはやこれも名シーン)。その内容は敵の秘密兵器の設計図を盗みだしたというものである。
シレっと語られているが銀河の命運を握る設計図が簡単に盗めた訳がないのである。
このスリリングな部分をじっくり語ってくれる本作は、本線のスター・ウォーズを盛り上げることは間違いない。
さらに言えば、独立した本作はスター・ウォーズを観ていない人でも参加することが出来る。
私は安易に「シリーズの途中からでもどうぞ」とは言わない主義であるが、これは明確に別物であるが故に途中参加にはならないのである。
みんなに新作として思う存分楽しんでいただきたい。
そしてスピンオフの大切なルールは本線の作品を越えようとしない事だと私は思う。
あくまでも派生した作品には、派生の美学がある。
そんなことを考えながら過去のスピンオフ作品を思い起こしてみれば、数々の「大失敗の巻」を見つけてしまった。
しかし、それはそれで味わい深い・・・
出がらしなので、味がしないところが、なんとも味わい深いのである(笑)
<上映情報>
- 『ローグ・ワン STAR WARS STORY』
- 監督:ギャレス・エドワーズ
- 出演:フェリシティ・ジョーンズ ほか
- 12月16日(金) 岡山メルパ ほかにて ROADSHOW!!
岡山メルパ館長 福武孝之