岡山メルパ 福武 孝之館長
映画業界20年、老舗映画館を切り盛りする名物館長。映画が持つ「観ることで、自分の世界が広がる」魅力を広めるべく、多彩なイベントを展開。ジャンルや制作者にこだわらない、テキトーな鑑賞が映画愛を高める秘訣。映画が好き過ぎて、あこがれのターミネーターに変身。特殊メイクがんばりました!
「リップヴァンウィンクルの花嫁」
前回このコラムで「映画は食わず嫌いの宝庫」と書いた。
これは映画を選ぶ際、どうしても自分の趣味に合うジャンルに限られてしまい、良作を見逃してしまうという意味だ。特に映画館体験は前金制なので、なかなか冒険が出来ないのが現実ではないだろうか?
こんなことを書いている私にも日々食わず嫌いは発生している。私は職業上オールジャンルで映画を観ているだけなので、実は個人的には全く興味が湧かない作品もあるのだ。
つい最近も、そんな作品に出逢った。
もともと女性映画にあまり興味を持ってなかった私だが、良質な恋愛映画やラブコメディを観るうちに、その面白さにハマった。しかし、本格的な?女性映画。つまり女性の共感が強い作品は未だに守備範囲に入らないのである。もうオネエになるしかないのである!(バカっ) 映画評論家に中性が多いのはそんな理由なのかもしれない。(おっとそれはまたこんど)
さて、女性の共感が強いとはどんな映画だろう?
例えば女性の結婚に対する憧れは男性のそれとは違うだろう。女性向けの映画には「結婚」というキーワードは大きな力を持つ。タイトルに結婚とか花嫁とかウエディングなどを入れておくと若い層から年配層まで幅広く支持を得られるのである。したがって逆に男性には今一つキャッチ―ではないワードであり、中でも「花嫁」とつくと男性はほぼオイテケボリになるのは仕方ない。
そこで先日私が観た映画のタイトルは『リップヴァンウィンクルの花嫁』である。
花嫁の前に聞いたこともないカタカナが並んでいるではないか!
監督は岩井俊二監督! やっぱり! こんなシャレたタイトルは・・・・・
真っ先に私ごときが岩井美学についていけるわけがないと思った。
ところが、ところが!! ここからが今回の本題である。
近年稀にみる食わず嫌いが発生したのである。『リップヴァンウィンクルの花嫁』は面白い! こんな私でも身を乗り出して食い入ったのである。
物語はSNSで彼氏を見つけ、結婚相手でさえ、あっさり手に入れてしまうことから始まるのだが、その先は予想もつかない展開の連続である。「ありえなそうだけど、現実にはそんなこともある。」この物語は現代と現実を生きる女性が、とんでもない経験をするお話なのである。
生まれ変わっていく現代女性の人生を観ながら、なぜ男の私に“刺さる”のだろう?
まず脚本が面白い。 なに!? 脚本も岩井監督かっ! なら原作が面白いのか!?
なに! 原作も岩井監督なのかっ! 岩井監督 天才!
岩井ワールドを知らない方にも、この作品はご覧頂きたい。もちろん男女を問わずおススメなのだが、物語の性質上、予告編などでは伝わらない事が多すぎるのが心配なのである。
皆さんが、この映画の面白さを知らずに見逃してしまうのを防ぐために、私は全力でこのコラムを書いているのだが、どう書いてもこの興奮は伝わらない気がするのである。
しかたない、ネタバレ覚悟でオチを書くか!!? (バカっ!)
この映画は主演の黒木華さんの可愛さを見るだけでも十分に価値がある。さらに今回の綾野剛さんの怪演は、観客を好き放題に振り回すのである。これがたまらない!
食わず嫌いとか言いつつこんなにハマっている私は何なんだ!?
オネエなのか?・・・ (おだまり!)
公開情報
- 「リップヴァンウィンクルの花嫁」
- 監督・脚本・原作:岩井俊二 出演:黒木華・綾野剛・Cocco他
- 5月14日(土)岡山メルパにて公開
岡山メルパ館長 福武孝之