岡山県内でロケ。人はなぜ生き、なぜ死ぬのかを問いかける話題の長編作
岡山県をメインロケ地に撮影された映画『カオルの葬式』の記者会見および完成試写会が、2023年10月31日(火)、岡山市北区の映画館『岡山メルパ』で開かれました。
日本、スペイン、シンガポールにより国際共同制作された長編作で、監督の湯浅典子さんとチーフプロデューサーのシモエダミカさんが共同設立した制作会社を主体に、岡山市内で映画館を運営する福武観光、シンガポールのワールドセールス企業などが一部出資をして、全国からも協賛を募り、世界各国での上映や岡山の認知度アップを目指しています。
映画の主題は、「大事な人を送るということ」。
本作は、シングルマザーの主人公・カオルが亡くなったあとに残された人たちや、ドメスティックな地域の慣習を通じて、生や死について問いかける物語。
メインキャストには、一本香乃さん、関幸治さん、新津ちせさんを迎えています。
湯浅典子監督の故郷である岡山県を舞台に、自身の経験に基づいた着想を映像で描き出しており、県内では鏡野町、真庭市、津山市、笠岡市、岡山市などで撮影が行われました。
中でも、メインロケ地のひとつ・鏡野町『宝樹寺』では、カオルを巡る葬儀の重要シーンが撮影されています。
編集部では、2022年9月に行われた鏡野町ロケにお邪魔してきました。
湯浅監督、シモエダチーフプロデューサーを中心に、スペイン人撮影クルー、東京から岡山入りした俳優陣に加え、オーディションで選ばれた岡山県出身キャスト、美術、照明、制作部などのスタッフの皆さんが一丸となって制作に臨まれていました。
今作は岡山と東京でフルキャストオーディションを開催した作品。国際共同制作や海外作品の撮影誘致や共同制作が、海外の国に比べてとても少ない日本で、地域の俳優陣にもぜひグローバルな作品への参加の機会を作りたいという思いがあるというお話でした。
国際プロデューサーとして国内外で活動し、今作でスペインとシンガポールとの共同制作を組んだシモエダさんは、「地域の方々が役者を育てる土壌を持っていてくださることが、今回の国際共同制作の岡山キャストの参加に繋がっていて、日本の地方都市ですばらしい文化芸術の取り組みが脈々と培わることの重要さを改めて実感した。」とおっしゃっていました。
メインロケ地である『宝樹寺』は、奥津温泉のすぐそばにある曹洞宗のお寺です。
創建は南北朝時代にまでさかのぼる名刹。本堂から離れ、倉庫まで本作の制作のために提供されていました。
撮影監督(DP)はビクター・カタラ氏。今作はハリウッド方式の撮影スタイルなため、撮影監督という名の通り、撮影や照明などの画作りを仕切る監督の役目をビクターさんが担いました。
今作では、フォーカスマンのマリナさんや照明技術者のポールさんとダニエルさんが撮影監督のビクターさんのチームクルーとしてスペインから来日したほか、スペインで行われた映像編集、音の編集と、音楽など、たくさんのスペイン人の方々が制作に参加しています。
特に海外では映画は総合芸術と言われ、さまざまな技術者と専門職スタッフが数十人で関わり、ひとつの作品が作られます。
作品のハイライトであるカオルの葬儀の様子。『さくら祭典』さんから葬儀のプロフェッショナルをお招きし、所作など本格的に。
実際に『さくら祭典』さんのスタッフさんがキャストとしても登場されています。
今ではあまり見なくなった宮型霊柩車は、総社市の『総社花萬』さんが運転手付きで撮影提供されていました。
記者会見にて、岡山県内を舞台にした理由について湯浅監督は、
「岡山には美しい海もあり、山もある。湿度のある日本らしい風景が残っています。その美しさを、スペイン人の撮影監督・ビクター・カターラの映像でぜひ皆さんに観ていただきたい」と話されました。
また、チーフプロデューサーのシモエダさんは、フィルムコミッションの協力体制により、撮影しやすい環境を作ってもらえたことへの感謝も述べられていました。
映画全体の主題について、「なぜ人は生きるのか、なぜ人は死ぬのか。この問いへの答えを、観る方皆さんそれぞれに考えていただきたかった。そのため余白の多い映画になったと思う」と意図を話されました。
映画『カオルの葬式』は、12月8日(金)から『岡山メルパ』で先行上映され、来年度、国際映画祭への出品と世界各国での公開を目指しています。
ぜひ岡山限定の先行上映で、岡山が舞台となった作品を鑑賞してみてください!
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