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岡山芸術創造劇場 ハレノワ ~カウントダウン♪ 千日前から

深~い! 新劇場「岡山芸術創造劇場 ハレノワ」と千日前の誕生物語vol.41

変わる街をウォッチング。岡山芸術創造劇場 ハレノワ ~カウントダウン♪ 千日前から

  • 情報掲載日:2025.08.21
  • ※最新の情報とは異なる場合があります。ご了承ください。

昭和の路地裏にタイムトリップしたみたい。
舞台鑑賞後に寄れる、隠れ家スポット「千日センター街」を探検!!

2023年に『岡山芸術創造劇場 ハレノワ』が誕生して約2年。お膝元の表町商店街南端「千日前ハレノワ通り」からはアーケードが外れ、明るくモダンな石畳風に変身しています。

この通り沿いに、かつて映画館街として賑わった千日前の面影を今も残す昭和レトロな場所があります。その名は「千日センター街」。小さなビルの飲み屋街です。

実はここ、『ハレノワ』で舞台鑑賞後の晩ごはんや休憩にも便利な穴場スポット。今回は好奇心に誘われ、そんな「千日センター街」を探検してきました。

▲「千日センター街」の看板があるビル。表通りに大衆演劇の役者さんが営むイカ焼きが看板の店『まいどっ』と、女性スタッフが切り盛りする煮込みと酒の店『西川屋』が並ぶ。隣の鮮魚店とのすき間から路地裏へ

「千日センター街」の看板が目印。このビル街にある店は14軒。表通りには、大阪名物イカ焼きが看板の店と、煮込みと酒の店の2軒が昼から営業しています。そして、同じビルの路地裏へ入ると、一気に隠れ家のような雰囲気に…。探検気分が高まってきました。

トンネルのような通路が続く1階には、10軒の玄関のドアが並んでいます。このうち、7軒はカウンターだけという、小さくて庶民的な店が集うエリア。夜の営業が中心で、開店は早い店で夕方16時30分頃から、閉店は遅い店で深夜2時頃まで。店主一人で営む店が多く、その人柄に惹かれて訪れる客も少なくないそうです。

店から店へ気軽に「はしご」できる距離感も嬉しい。お酒が得意ではない人も、ノンアルコールビールやソフトドリンクがあったり、好みのドリンクの相談に乗ってもらえたりするので安心です。

▲看板ライトが並ぶ「千日センター街」。扉の向こうはどんな世界?

ドアの上の看板ライトが灯れば「営業中」のサイン。ガラス越しに中をのぞいたり、店先に掲げられたメニューを眺めてみたり…。夕方からすでに満席に近いところもあるようです。

どのドアを開けようか…。しばし迷い、ドキドキしながらドアを開けるのも楽しいものです。客はおひとり様が多く、マイペースで過ごすもよし、店主や居合わせた人と話をはずませるもよし。

▲カウンターのみの『豚松』。マスターが仕込んだ豚骨&鶏がらベースのラーメンは種類豊富。この日頼んだのは、約10種もの具が入った「うまいラーメン」(五目ラーメン)と、ネギ入りふわとろ「玉子焼」

このビルで一番古い店が、38年前から営む夜ラーメンの店『豚松』。

「マスター」こと有吉弘己さんは、現在なんと81歳。27歳から始めた玉野市のレストラン経営を経て、こちらを開業しました。2024年、店先で足を滑らせて大腿骨を骨折し休業。手術後、リハビリを重ね、2025年4月に念願の再開となりました。

深夜でも満席になるほどの人気店ですが、閉店は1時間早まり深夜2時に。

「休業で経営が苦しくなったけど、常連さん30人くらいから退院祝いをもらって。その気持ちが嬉しかったな(笑)。まだ痛いけど、狭いカウンターが足の支えになるから、僕は運が良かった! 毎日リハビリになるよ」。

店に立つマスターの姿に励まされます。

▲夫妻(手前2人)で営む『いしまる』。焼き鳥各種1本187円。子連れでも利用しやすいようソフトドリンク各165円とお財布への優しさは抜群。カウンター席とテーブル席があり、常連さんがスタッフとして手伝うことも

「ここは店同士の仲がいいんです。お互いの店を紹介し合ったり、小さい店が多いから、満席で入れなかった店から出前を取っていい店もあったり…」。そう話すのは、開業5年目にして連日常連さんで賑わう焼き鳥店『いしまる』を妻と営む石川勇介さん。

以前は複数のチェーン店の統括をする仕事をしていましたが、コロナ禍の事業縮小を機に、この店を開業したとか。「温かい交流の場にしたい」と、気さくに話しかけてくれる石川さん。やんちゃをしていた中学時代に恩師と出会って更生。仕事の苦労も乗り越えてきた、紆余曲折に富んだ人生の話に勇気をもらえます。

▲ゆうこママが優しく迎えてくれる、カウンターだけの店『はれるや』。日替わりと定番のメニューを用意。この日のお勧め「えびフライ」は、刻んだバジルで爽やかに仕上げた自家製タルタルソースが決め手

「センター街の皆さんが互いに助け合っていて、何かあったらすぐ飛んできてくれます」とほほ笑むのは、家庭料理とお酒の店『はれるや』を8年前から一人で営むゆうこママ。

「大阪からお嫁に来て長年主婦をやって…料理が好きだったんですね。冷凍食品はいっさい使いません」。手間を惜しまずに作った料理は、ご飯ものと合わせれば定食風に。

「いろんなお客さんと話すのが好きですけど、私から立ち入ったことは聞かないんです。ほどよい距離を保ちながら、お客さんが何を言いたいのかを考える。言葉ひとつでも大切にしています。仕事帰りの30~40代のお客さんが多くて『岡山のお母さん』と呼んでくれる人も。単身赴任の常連さんが奥さんと来た時、『ここでお世話になってるなら安心』と言ってもらえて嬉しかったですね」。アットホームな雰囲気に癒されます。

▲『どてひこ』は16時30分~と、夜がメインの店より一足早く開店。大阪の郷土料理とされる「どて焼き」は牛のスジとアキレスの2種。桐野さんは白みそベースに隠し味をプラスして煮込み、優しい甘さとコクに

「ディープな酒場が大好き。そんな場所をここに見つけて、14年前、当時まだ少なかった昼飲みもできる店を開いたんです」と話すのは、周囲にセンター街の「村長さん」とも称される『どてひこ』店主・桐野勝彦さん。

「周りの雰囲気を明るくしたくて、誰に声をかけるわけでもなく、ゴミ掃除をやったり、自主的に動いてましたね。だんだん、14軒の連帯感が高まっていって…(笑)」。

桐野さんは、元競輪選手。1981年に熊本競輪場でプロデビュー。主に競輪界最高位のS級で活躍し、引退間もなく、カウンターだけの当店を一人で始めました。岡山では珍しい「どて焼き」をはじめ、馬刺しなど選手時代に遠征先で見つけたうまいものを出してくれます。桐野さんの細やかな気遣いと穏やかなトークに、心和むひととき。

1階にはこのほか、職人技が光る和の創作料理店や鉄板焼き店、一品料理が揃う居酒屋なども。

そして食後に寛げる、少々異色の存在が、お酒が一滴も飲めないママが一人で営むカラオケスナック『ひまわり』。

山盛りのお菓子が用意され、カウンター一列の店内にある最新カラオケ機で自由に歌えます。

「嫁ぎ先が表町商店街・新西大寺町の電気店『余公デンキ』だったんです。娘2人が幼稚園の頃、36歳で主人が病死して、義両親や近所の人に随分助けてもらって。電気屋を閉店後、義父と骨董店を10年やりました」とけいこママ。

「この店を始めた19年前は、年子の娘たちが大学を卒業した頃。できるだけ子どもに頼らず、自分で頑張りたいと思ってね。散策中にここを見つけて即決。自分はスナックに行ったことないのに店がスナック仕様だったから、スナックに詳しい人からやり方を教わったんよ(笑)」。

素朴なママの人柄のおかげか、「田舎の実家」にいるみたいに気楽に過ごせます。

▲階段から2階へ。ドアを開けたとたん、ビートの効いた心地よい音楽に包まれるDJバー『Delete』。深海の洞窟のような幻想的空間は店主&仲間の力作。『ハレノワ』に出演したバックミュージシャンが寄ってくれることも

今度はビルの2階へ…。 このフロアは音楽に親しめる世界。ゆったりとした空間のライブハウスと、DJバーの2軒があります。階段を上がって右手は、34年前から店主がひとりで営む老舗DJバー『Delete』。

DJは一人ひとり違う世界観を音楽と機材で表現し、空間づくりをする仕事。ベースがあって、いろんな音楽を組み合わせていく面白さがあるとか。国内外のゲストDJを招くこともあり、県外から訪れるファンも…。キャンドルの灯るダウンライトの空間で、グラスを片手に、心地よいサウンドと響きにたっぷり浸ることができます。

ノスタルジックな「千日センター街」の探検。人情の温かさにも触れることができました。新劇場『ハレノワ』とともに新旧のよさが相乗効果になれば、千日前がますます魅力的になるかも。虹色の未来に願いを込めて…。

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