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岡山芸術創造劇場 ハレノワ ~カウントダウン♪ 千日前から

深~い! 新劇場「岡山芸術創造劇場 ハレノワ」と千日前の誕生物語vol.26

変わる街をウォッチング。岡山芸術創造劇場 ハレノワ ~カウントダウン♪ 千日前から

  • 情報掲載日:2024.03.04
  • ※最新の情報とは異なる場合があります。ご了承ください。

演劇の知恵」を生かして菅原直樹氏が演出。『ハレノワ』の小劇場を舞台に、高校生や高齢者らと「つくる」プロジェクト。

誰しも無意識に、今いる場所に合う役を演じている。少し意識して、日常に「演劇の知恵」を取り入れてみては?

『岡山芸術創造劇場 ハレノワ』の小劇場(想定最大収容席数約300席)は、現代演劇やダンスの上演にぴったりの「ブラックボックス」タイプ。
その名の通り、四方の壁や床まで黒い箱形のフラットなスペースです。客席や舞台を自在に配置でき、暗闇のなかで照明や音響、舞台美術が幻想的に映える空間なのです。

▲昨年の『ハレノワ』開館事業で上演された、「OiBokkeShi」の最新作「老いと演劇」OiBokkeShi 開館特別講演『レクリエーション葬』。老人ホームで生前葬を繰り返す老人(岡田忠雄さん・左)と周囲の人々が人生を生き直す物語(撮影:冨岡菜々子)

この小劇場を舞台に、『ハレノワ』の開館事業として、市民公募による、ふたつの「つくる」プロジェクトが始動しました。
その両方の舞台の演出を手がけるのが、劇団「OiBokkeShi」を主宰する菅原直樹氏。
介護福祉士でもある菅原さんは、介護中、認知症の人に寄り添って演じることでコミュニケーションがスムーズになることに気づき、舞台やワークショップを通して「老い・ボケ・死」の明るい未来を模索する活動をしています。

▲菅原直樹氏。1983年栃木県生まれ。劇作家、演出家、俳優、介護福祉士。2014年に老い・ボケ・死がテーマの劇団「OiBokkeShi」を旗揚げし「老いと演劇のワークショップ」も展開。平田オリザ氏主宰「青年団」に所属

『ハレノワ』の「つくる」プレジェクトのひとつは、「ハイスクール演劇公演」。
岡山県内の高校生を対象に、第一線で活躍するプロのアーティストとともに舞台を創り上げる事業です。
公募で集まった高校生が、2023年5~7月の戯曲講座で自ら戯曲(脚本)を書き、菅原さん演出のもと21名の高校生が出演しました。
他にも11月に舞台照明、12月に舞台美術を実施し、舞台照明や実際に「ハイスクール演劇公演」で使用する舞台美術製作を体験しました。

「出会いと別れをテーマに高校生が書いた戯曲から僕が3本を選び、オーディションで配役を決めました。公演に向けて、1週間連続で芝居作りをしながら高校生にいろんなアイデアを出してもらい、背景に布を使ったり、机に窓をくっつけたり、衣装も自分たちで仕上げて…。みんなで作ったという思いが強いですね」と菅原さん。

▲「ハイスクール演劇公演」で上演された『すみれ色のあなたに』。幻想的シーンに高校生のアイデアが光った(撮影:冨岡菜々子)

菅原さん自身、演劇部に入っていた高校時代、劇作家・演出家の平田オリザ氏のワークショップに参加したことが転機になったとか。
「平田さんの『環境を変えると演じやすくなる』というアプローチ法に演劇の奥深さを感じたんです。普段のコミュニケーションについても考えるきっかけになりましたね」。

そして、もうひとつのプロジェクトは、「老いのプレーパーク岡山・三重ツアー」。
「老いや介護の明るい未来」を演劇的手法を用いて遊びながら模索し、舞台をつくる活動です。
高校生以上を対象に出演するメンバーを募集し、募集人数の3倍近くの応募があったとか。
オーディションで選ばれたメンバーは、18歳から最高齢はなんと92歳の20名で、半数以上が演技未経験者。稽古は2023年11月からスタートしました。

▲「老人ハイスクール」の2024年1月の稽古風景。認知症の服部先生役の山下照雄さん(1946年生まれ・左から3番目)は大学時代、映画会社の研究生として映画に出演したことも。「補聴器の調整が大変ですが、生活に張りが出ました!」

菅原さんは演じることで、世代によって得意分野がみえてくるといいます。
「高校生は、一日練習しただけですぐセリフや演技が体になじみ、翌日にはできるようになっていることが多い。特に、自身と等身大の人物を演じるのがうまい。逆に、悩みがちなのが、未経験のことを演じる時。『ハイスクール演劇公演』では、母親を亡くした高校生役の子が、実際には親が健在なので、どう演じるかを悩んでましたね。対して高齢者の場合、セリフ覚えは時間がかかるけど、脚本の最初の読み合わせからセリフがうまくはまることが多いんですよ。人生経験が豊富な分、感情の込め方が上手だったりする。嫁姑の話とか、実感が込もっていて(笑)…」。

「僕は、演技未経験者や高齢者でも無理せず取り組めるよう、あいまいでもいい演出を心がけています。演じ手本来のイメージに合わせて脚本を当て書きしたり、セリフを忘れても、そばでサポートしてくれる役を配したり、劇中劇にすることで、役になり切らなくても不自然じゃない展開にしたり…」。

▲小劇場での「老人ハイスクール」の稽古にて。菅原さん(左端)は客席最前列からメンバーの演技を温かく見守り、アドバイス

もともと「老いのプレーパーク」は、三重県を拠点に、菅原さん演出のもと、高齢者や介護関係者、認知症当事者によって2018年に結成された団体です。

▲小劇場裏の練習室で「老いのプレーパーク」岡山メンバーが「老人ハイスクール」を自主練習。劇中劇の腹痛を訴えるシーンで意見が飛び交う

この春の「老いのプレーパーク岡山・三重ツアー」は、岡山と三重のメンバーが互いの県に出張する合同公演。
演目は、老人ホームでの学生ごっこで青春を謳歌する「老人ハイスクール」(岡山メンバーが中心。「OiBokkeShi」が2015年に初上演)と、シニア・ヒーローのアクション劇「いざゆかん」(三重メンバーが中心の新作)の二本立て。
どちらも「老い」をコミカルに描いた作品で、岡山公演は『ハレノワ』で3月3日(日)、三重公演は『三重県文化会館』で3月9日(土)・10日(日)に上演予定です。

※岡山・三重ともにチケットは完売しました。

▲「いざゆかん」を稽古する岡山メンバー

「『老いのプレーパーク』は三重県では4年前から県内市町村を巡回公演していて、ちょうど県外にも活動を広げたいという声が出ていたんです。僕も三重での取り組みを岡山で紹介したいという思いがあって。『ハレノワ』の開館を機に、新たに岡山でもつくることになったんです。合同公演をすることで、先輩である三重メンバーの活動を参考にできるし、どんどん交流して介護×認知症×演劇の輪を広げていきたいですね」。

家にこもらず、外に出かけて、出会いを楽しむこと自体、生きる励みになる。
認知症の妻への接し方に悩んで「OiBokkeShi」のワークショップに参加したのを機に、「OiBokkeShi」の看板俳優になった、98歳の岡田忠雄さんもそんなひとり。
岡田さんも、「老いのプレーパーク」に特別出演するとか。ますます公演が楽しみになってきました。

※岡山・三重ともにチケットは完売しました。


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