暮らしのいいものをセレクトしている『ハレマチ特区365』と『オセラ』が、岡山をはじめとする瀬戸内の企業・団体・職人・作家など「ひと」に着目し、そこから生まれる魅力あふれる商品とその思いをご紹介します。
「作り手」たちの意外な視点や温かい思いを知ると見えてくる、商品の魅力、新しい世界。
「『岡山県』を意味する手話は、織機で花筵を編む様子を表しているんです。それがまったく周知されていない。岡山、倉敷の文化である花筵は絶やしてはいけないと強く感じました」と、事業を継承し続ける動機を語るのは、『倉敷いぐさ 今吉商店』四代目・今吉正行さん。昭和10年製の織機を使い、倉敷産イ草の製造・販売を行なう唯一の店だ。
岡山県のイ草文化は室町時代までさかのぼる。江戸時代には換金作物としてイ草や綿の栽培が奨励されたこともあり生産が盛んに。明治には染色イ草を織り込んだ装飾性の高い花筵「錦莞莚」が倉敷市茶屋町で発明されたことがきっかけで、カーペットの代用品として海外各国へ輸出が本格化する。その後、茶屋町から倉敷市西阿知地区へ技術が伝わり、大正には国鉄山陽線西阿知駅がイ草の出荷駅として誕生。昭和八年に動力式の「岡式花筵自動織機」が開発されたことで生産性が向上。昭和30年代には「いぐさ王国」と称されるほどの一大産地に発展していった。
ところが近年は住宅の洋風化により畳の使用が減少。廃業していく同業者が後を絶たないのが現実だ。そんな状況であっても「花筵は作り手次第で、魅力的なアイテムに変身できるはず」と正行さんは希望を捨てなかったそうだ。美しい色に染まり、さまざまな文様を代々引き継がれてきた織機で織れる、そんな花筵に魅せられ続けている。「倉敷いぐさ」のブランドタグを付けたランチョンマットやコースターといったモダンなデザインの新作や、明治時代からの伝統の柄を復活させたブランド「Kaen」は、県内外はもちろん、今や海外からのオーダーも増えているという。
名実ともに「倉敷名産」と銘打つため、五代目・俊文さんが中心となり、倉敷でのイ草栽培にも尽力。「倉敷で栽培されている品種は、イ草繊維の中心部が中太でしなやかであるため、肌に柔らかい感触に仕上がる。この品質の高いイ草を絶やしてはならない」と奮闘している。日本の風土から生まれ、先人たちが大切に育んできた花筵のよさを、次代へ伝えるべく正行さんの挑戦は続く。
『倉敷いぐさ 今吉商店』
今吉正行
いまよしまさゆき 1957年生まれ、倉敷市出身
1897年創業の同店4代目。花筵の製造卸から事業をスタートし、通信販売をいち早く手がける。1970年代以降、イ草民芸品、インテリア雑貨などの製造・販売を展開。現在は5代目・俊文さんとともに「倉敷いぐさ」を盛り上げるべく奮闘中。
Information
倉敷いぐさ 今吉商店
- 住所
- 倉敷市西阿知町1016
- 電話番号
- 086-465-4275
- HP
- http://www.kurashiki-igusa.sakura.ne.jp/
ハレマチ特区365
晴れの国おかやまに息づく、ものづくりのスピリットを体感・体験できる空間。4月に『イオンモール岡山』2階に移転リニューアルした。知られざる逸品から、味わい深いスウィーツやフード、心奪われるかわいいものまで「岡山って楽しい!おいしい!かわいい!」を一堂に集めている。「POP UP STORE」やワークショップも開催予定。
Information
ハレマチ特区365 by タウン情報おかやま・オセラ
- 住所
- 岡山市北区下石井1-2-1 イオンモール岡山2階
- 電話番号
- 086-206-7204
- 営業時間
- 10:00~21:00
- 休み
- なし
- 駐車場
- 約2500台(有料)
- HP
- https://hare365.com/
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