暮らしのいいものをセレクトしている『ハレマチ特区365』と『オセラ』が、岡山をはじめとする瀬戸内の企業・団体・職人・作家など「ひと」に着目し、そこから生まれる魅力あふれる商品とその思いをご紹介します。
「作り手」たちの意外な視点や温かい思いを知ると見えてくる、商品の魅力、新しい世界。
米や麦の農家としてスタートした国定農産。初代・国定正俊さんは、生産規模を拡大して法人化したが、1970年頃から国の減反政策が始まり、何か別の作物を生産しなければならなくなった。農業試験場や大学の先生などに相談した結果、比較的栽培しやすく体にもよいハトムギを転作することに。順調に栽培は進んだものの、穀物として売り出すには販路がなかった。そんな折、視察に行った石川県のぶった農産が、生産したカブで「かぶら寿司」を作って売っていることを知った正俊さん。「今でこそ、六次産業化が広まりましたが、当時、農家が加工品を作って売るなど例がなかった。進歩的な性格だった祖父は、これだ!と思ったようです」。そう教えてくれたのは、三代目となる取締役の俊彦さんだ。まず「ハトムギ味噌」を作り、おいしいものが出来上がった。そして次に取り組んだのが「ハトムギ茶」である。先生の指導を仰ぎながらも、試作を重ね独自の焙煎方法を見出していった。納得のいくものを作り上げるのが正俊さんなら、その販売は妻の佳子さんが担った。都心で開かれる物産展や百貨店の催事に出向いては、この「ハトムギ茶」がいかにおいしくて、体によいかをコツコツと宣伝。そこでお客さんの声を吸い上げて、商品の改良に生かした。「地方の農家が販売するお茶が、ここまで認知されたのは、社交的で話上手だった祖母の『営業力』ゆえだと思います」と俊彦さん。現在、日本各地に愛飲者がいるという。「先日、イオンモール岡山で試飲販売を行なっていたとき、『親が大阪駅でこのお茶を買って、わが家ではずっと飲んでいたんだ。懐かしいよ』というお客さまがいらっしゃったんです。祖母から買ったんでしょうね。嬉しかったです」。
三代にわたって妥協せずに受け継いでいるのは、着色料・甘味料・香料などの添加物をいっさい加えない安心・安全なお茶づくり。「ハトムギのおいしさをしっかり味わってほしい」と、1パックにたっぷり十二グラムを詰め、発売以来値上げもしていないという。そこには、ものづくりに対する誇りと信念が感じられる。そして、それこそが発売から30年経た今も、愛され続けているゆえんに違いない。
国定農産
取締役
国定俊彦
くにさだとしひこ 1982年生まれ、岡山市在住
1931年創業、66年に設立された有限会社国定農産の3代目。大学卒業後、岡山県内の一般企業勤務を経て、昨年家業に従事。「物心ついた頃から当たり前にあった農業という仕事を、一度外に出ることによって新たな視点で見つめ直せた」と語る。代々大切してきた真摯なものづくりの姿勢を受け継ぎながら、商品の魅力発信に力を注いでいる。
Information
国定農産
- 住所
- 岡山市南区藤田339
- 電話番号
- 086-296-2539
- HP
- https://www.hatomugi.com/
ハレマチ特区365
『イオンモール岡山』の5階にある、晴れの国おかやまに息づく、ものづくりのスピリットを体感・体験できる空間。岡山県内を中心に、せとうちエリアの作家や職人、企業による雑貨、ウェア、ストックフード&器など、1000種類以上のアイテムをラインナップ。作家によるワークショップをほぼ毎日行なうスペースも常設。
Information
ハレマチ特区365
- 住所
- 岡山市北区下石井1-2-1 イオンモール岡山5階
- 電話番号
- 086-206-7204
- 営業時間
- 10:00~21:00
- 休み
- なし
- 駐車場
- 約2500台(有料)
- HP
- https://hare365.com/