暮らしのいいものをセレクトしている『ハレマチ特区365』と『オセラ』が、岡山をはじめとする瀬戸内の企業・団体・職人・作家など「ひと」に着目し、そこから生まれる魅力あふれる商品とその思いをご紹介します。
「作り手」たちの意外な視点や温かい思いを知ると見えてくる、商品の魅力、新しい世界。
1973年、うどん店として店を構えた『すぎ茶屋』。5年後には「すぎ茶屋まんじゅう」の販売も開始し、どちらも長く愛されてきた。しかし、三代目・杉本正樹さんが後を継いだ2015年には、まんじゅうの販売は若干低迷気味。まんじゅうと並ぶ新しい菓子を開発すべく立ち上がった。
「すぎ茶屋まんじゅう」を名物たらしめているのが、味の肝である和三盆黒糖蜜。阿波の「竹糖」のみを用いて手作りしたもので、父親がまんじゅうを開発した際、何度も足を運んで仕入れることができるようになった希少な代物だ。新しい名物にも、この和三盆黒蜜を使いたいと考え、思いついたのがかりんとう。さっそく、うどん職人である常務の成田さんとともに試作を始めた。「彼の『ものづくり』へのこだわりはうちでダントツ。開発を任せるなら、成田さんしかいないと思いました」と杉本さん。試行錯誤の日々が始まった。
幸い、かりんとうの主原料は小麦粉。うどん作りで培ってきたノウハウを生かしながら、試行錯誤を繰り返した。ある日、失敗作としてよけられていた柔らかいかりんとうを食べた杉本さんは、今までのかりんとうにはない食感に、これだ!とひらめいた。以降、ベストな柔らかさを見つけるべく、粉の配合から揚げる時間、黒蜜糖の粘度、浸すときの温度など、何度も微調整しては試作。同時に黒糖蜜も、かりんとう用にアレンジした。「いろいろ試した結果、うちの料理に使っているオリジナルの合わせ味噌を加えることに。まろやかでコクのある和の風味が加わって、これぞ、うどん屋の作る菓子だと思いましたね」。一年半後、ついに納得のいく一品「生かりんと」が出来上がった。しっとりとしたかりんとうは、食べ始めは柔らかく、最後に少し押し返すような弾力がある。黒糖蜜の甘みと風味が口いっぱいに広がり、食べた後はすっきり。杉本さんが、ほかにはないと自負する自信作だ。
「私はひらめいたことはすぐ挑戦してみる性格。失敗することも多いですが、スタッフと一緒に試行錯誤する過程も愉しいし、いいものが出来上がったときは最高に嬉しい」。『すぎ茶屋』に息づく、そんな自由闊達な気風が、新たな名物を生み出す大きな力となったに違いない。
すぎ茶屋 代表取締役
杉本正樹
すぎもとまさき/1970年岡山県生まれ、岡山市在住岡山操山高校卒業後、1993年、父親が創業した『すぎ茶屋』に入社し、うどん作りをはじめ、経営や販売を学ぶ。2015年、45歳で後を継ぎ社長に就任。現場でスタッフとともにアイデアを出し合い、新たな名物「生かりんと」を開発した。県南や県外での試食販売会なども積極的に行ない、少しずつ販路を拡大中。本業のうどん店への来客にもつながっている。
Information
すぎ茶屋
- 住所
- 岡山市北区建部町川口1552
- 電話番号
- 086-722-1241
- HP
- http://www.sugichaya.co.jp/
ハレマチ特区365
『イオンモール岡山』の5階にある、晴れの国おかやまに息づく、ものづくりのスピリットを体感・体験できる空間。岡山県内を中心に、せとうちエリアの作家や職人、企業による雑貨、ウェア、ストックフード&器など、1000種類以上のアイテムをラインナップ。作家によるワークショップをほぼ毎日行なうスペースも常設。
Information
ハレマチ特区365
- 住所
- 岡山市北区下石井1-2-1 イオンモール岡山5階
- 電話番号
- 086-206-7204
- 営業時間
- 10:00~21:00
- 休み
- なし
- 駐車場
- 約2500台(有料)
- HP
- https://hare365.com/