あたりまえにある身近なあんなものやこんなものに、実はこんな歴史や理由があるのです…。
そんな身近にある何? なぜ?を調べます。
城跡登山の先には絶景があった!
備中松山城や鬼ノ城など、山城があった場所は見晴らしがいいところが多く、ハイキングスポットとしてもおすすめです。そこで、気軽に登れて絶景も楽しめる城跡のある山を紹介。冬のほうが落葉していて見通しがよく景色を堪能したい人にはおすすめの時期ですよ!
岡山県の山城事情を聞いてみた。
県内には千以上の城館跡が点在。
眼下に吉備路が見わたせる鬼ノ城、高梁川と高梁市街が一望できる備中松山城と、県内には全国的に有名な山城跡がありますよね。どちらも散策道が整備されていて、本格登山というほどハードすぎない行程で、気軽にハイキングを楽しめる場所となっています。冬は落葉していて見通しもいいし、山城探検ハイキングは冬のレジャーとしていいのでは? そんな考えに至り、ほかにも気軽に登れて絶景も楽しめる山城跡が県内にないかと、中世城館に詳しい『岡山県古代吉備文化財センター』を訪ねました。
聞くと、岡山県内には1100カ所もの城跡が残っているそうです。14、15世紀の南北朝時代や戦国時代に増えていったとか。まぁ、山城は住むためというより戦の陣を張るために使われていたので、戦の多い時代に増えるのは当然の流れですね。岡山県内は古くから戦乱の舞台となっており、全国的にみても数は多いんですって。県南・西部の備前・備中国に比べ、県北東部の美作国では戦国時代の終わりまで争いが続いたため、他の地域より城跡が多い、という特徴があるようです。
交通の要衝を望む場所に山城が。
さて、どんな場所に山城は造られたのか。旧山陽道や旧出雲街道、津山往来などが県内を通っているおかげで、今も昔も岡山は交通の要衝でありました。街道は人や物の動きが見える場所。そういった街道や物資の運搬が行われていた川の合流地点を見わたせる山頂に、山城が造られることが多かったそうです。
また、歴史に残る大きな戦いに関連した城や場所の周辺にも城は作られたといいます。有名なのが豊臣秀吉の水攻めで知られる備中高松城とその周辺。周りの山には織田軍、毛利軍それぞれの武将が築いた山城が残っています。今では普通の山にしか見えない近所の山にも、実は山城があったのかもしれませんよ。
この冬ぜひ!! 絶景を望む県南の山城ハイキング。
そんな県内の山城を知る『岡山県古代吉備文化財センター』のスタッフに、景色も楽しめる山城跡をいくつか教えてもらいました。そして、スタッフがいくつか実際に登って絶景スポットを確かめてきました! 県北は積雪の可能性があるので県南中心です。
津山往来と旭川を望む『金川城跡』。
金川城跡・道林寺丸跡からは、旭川ビューが!!
岡山市から行きやすいのが『金川城跡』(岡山市北区御津金川)。『岡山市御津郷土歴史資料館』近くの妙覚寺の西側に登城口があり、本丸までは約40分。実際に登ってみると、遊歩道が整備され歩きやすいですが、ずっと上りなので汗をかきました。当時、武士の皆さんはこれを駆け上がっていたと思うと、大変だわ~。城跡らしさを感じるのは、道林寺丸跡にある石垣。あと驚いたのが、直径約5mある「天守の井戸」! 深さが7m以上あり、のぞき込むとぞっとするほど怖い。落ちないよう注意しましょう。絶景スポットは二の丸跡、道林寺丸跡あたりからの景色。いっぽうは国道53号沿いを流れる旭川、いっぽうは津山往来も通り高瀬舟の船着き場もあった宇甘川が眼下に望めます。ひとつの山城で2方向見えるのが、立地のよさなんでしょうね。
1kmにわたる城跡の広さは備前国最大級!『天神山城跡』。
天神山城跡・三の丸跡のベストビューは、山を下って…吉井川が眼下に!!
和気町には備前国最大級の規模を誇る『天神山城跡』(和気町岩戸・田土)があります。国道374号を走っていると「天神山城跡」という看板を見たことがある人も多いのでは~そこから行くより、『和気美しい森』から本丸を目指すのがおすすめです。遊歩道を歩いていると思いのほかなだらかで、しばらくすると軍用石や太鼓丸城跡といった見晴らしのいい場所を見つけることができました。そこからは吉井川も見えます。「楽勝だな?」と思っていたら、ここは前期天神山城跡でまだ序の口だったのです…! そこからずんずんと下りになります。「どこまで下って行くの?」と疲れを感じ始め、丸太の階段が見え、再び上りに。つまり、メインの城跡に行くには谷を上り下りしなくてはいけないのです。登れば、また比較的なだらかな道が続きます。本丸にたどり着くと、この天神山城の16世紀頃の城主である浦上宗景の名を刻んだ石碑もありました。絶景スポットは三の丸跡。西に湾曲した吉井川とその奥に広がる田園風景が見えます。東屋もあり、そこで休憩していると、あまりの静かさに心が無になりました…。城跡を端から端まで歩くと1kmにもなるそうで、その途中には空堀や石垣など当時の地形が残る場所が多くありました。三の丸跡まで歩くと1時間というところでしょうか。
さまざまな戦乱の舞台になった『福山城跡』、『幸山城跡』。
見晴らしのよい福山城跡 西側!!
ハイキングスポットとしても人気の『福山城跡』と『幸山城跡』(総社市)。『清音ふるさとふれあい広場』から「幸福の小径」という登山ルートがあります。『太平記』にも記された福山合戦の地としても知られる『福山城跡』。備中高松城の戦いの際に、毛利軍側の陣を張っていた場所だったという説もあり、さまざまな戦乱の舞台になりました。同じ山に三方が絶壁の『幸山城跡』もあります。ここはなんといっても城跡からの視野の広い景色がすばらしい。高梁川や真備町方向を望む方面、中庄エリアを望む方面、鬼ノ城を望む方面と、3方向の眼下の見晴らしのよさは抜群です。
散策気分で気軽に行ける城跡も紹介。
散策気分でもっと気軽に行ける城跡もあります。まず紹介するのは『茶臼山城跡』(赤磐市周匝)。『吉井城山公園』として整備されていてサクラの名所としても有名ですね。クルマですぐ近くまで行けます。現在の天守閣は、あくまで城らしさをイメージした展望台。実は茶臼山城には天守閣があった時代はないそうです。ここは、炊事場があった深さ3mもある竪穴遺構も見どころ。また、そこから歩いて行ける距離に『大仙山城跡』もあり、残っている遺構それぞれに説明が書いてあるので分かりやすいです。
また、『下津井城跡』(倉敷市下津井)も周辺が公園として整備されていていて、訪れやすい城跡スポット。目の前に瀬戸内海や瀬戸大橋が見える風光明媚な場所で、立派な石垣も残っています。ここが瀬戸内海の要衝だったこともあって、眼下にはかつて台砲が置かれていた台場跡を見ることもできます。ここもサクラの名所。高低差もあまりない場所なので、海景色が近くに見える点もいいですね。
山城に上る際の注意点を。
実際に冬にこれらの山城跡に行ってみましたが、寒くてもいつのまにか体が温かくなって寒さを感じなくなるので、「意外にと冬のハイキングっていいなぁ」と思いました。汗で体を冷やさないように注意が必要ですが。また、冬は地面に枯れ草が折り重なっていて滑りやすいのでご注意を。無理はせず体調に合わせて山城登山を楽しんでくださいね。