Mission_94/映画ファンが詰めかけた「さよなら興行」。『岡山メルパビル』最後の夜を見届けよ!
2022年1月で惜しまれつつ閉館。「ありがとう」の気持ちをこめて館内見学。
こんにちは。『まかせてちょ~査団スペシャル』の団長Mです。
最近、街の風景が刻一刻と変わっていくのを強く感じています。
病院やテレビ局の建物が次々と新しくなり、新しい商業施設やマンションも続々と誕生。『岡山芸術創造劇場』のオープンも控えている現在、まさに岡山の街が進化しつつあるタイミングなのかもしれませんね。
新たな街の姿にワクワクしつつ、見慣れた街並みや変わらない景色の居心地よさも再認識しつつある昨今。
そんな折、飛び込んできたのが『岡山メルパビル』閉館のニュース。JR岡山駅前の再開発に伴い、2021年1月末をもってその歴史に幕を閉じることになりました。『岡山メルパ』といえば、オープンから33余年にわたり岡山のシネマカルチャーを牽引してきた映画館です。
時代の流れとはいえ、何度も通ったあのビルが無くなるのは寂しいものですね。映画ファンならずとも、世代を超えて思い出を残す場所ではないでしょうか? かくいう団長Mも、初めて洋画を鑑賞したのはココ。大スクリーンで観るアメリカのSFコメディ、迫力あって面白かったですねえ。
そこで今回は閉館前の『岡山メルパビル』を訪問。名残を惜しみつつ、その歴史と最後の姿を「ちょ~査」したいと思います。
駅前商店街から北へ入ったところが映画館の入口。団長Mにとってビルのイメージといえば、このピンクと白の装飾テントでした。前を通っただけで若かりし頃の思い出がフラッシュバックします。
各フロアの案内板。一度でも来た人はご存じの通り、『岡山メルパ』は7階建てビル内の2階、3階、5階に上映フロアがあり、1階の売り場でチケットやグッズを買って入館します。そうそう、最上階のビヤガーデンも夏の風物詩としておなじみでしたよね!
チケット売り場の反対側はグッズやポップコーンなどの販売ブースになっております。人気の映画が上映された時は、このフロアに行列ができていました。
映画鑑賞はもちろん、待ち合わせにもよく使ってましたね。そのまま映画を観たり、お茶したり、向かいのゲーセンで遊んだり…。懐かしい思い出がいっぱいです!
平成という時代を駆け抜けた『岡山メルパ』は、駅前の複合娯楽スポットとして誕生した!
今回お話を聞いた福武館長は、創業から『岡山メルパ』の運営に携わってきた業界の大ベテランです。まずは売り場担当のスタッフ・三宅さんと2ショットでの記念撮影。おふたりとも忙しい中、快くご対応いただき感謝です。
早速ですが、33年間ありがとうございます。お疲れさまでした! 閉館を発表してから、どんな反応がありましたか?
「長年通う映画ファンの方が声をかけてくださいます。昔の思い出とともに、労いの言葉をいただけるのがうれしいですね」(福武館長)。
スタッフの三宅さんは「映画館そのものを愛してくれる人が多い」と話し、「長年勤めた映画館なので、常連さんと話していると感慨深いものがありますね」と、心の内を教えてくださいました。
1988年(昭和63年)から『岡山メルパ』の歴史が始まったわけですが、元々はどのような経緯でオープンしたのですか?
「戦後間もない1946年、岡山駅前に『岡山松竹座』が常設映画館の第1号として開業したのが前身で、その後に新設された『岡山歌舞伎座』が『岡山東映』へと変わり、複合的な娯楽施設として『岡山メルパ』が開館しました」。
開館セレモニーには、俳優の故・松方弘樹さんや三田佳子さん、名取裕子さん、かたせ梨乃さん、力士の大乃国関さんなどの有名スターがお祝いに駆けつけました。
『メルパ』という名前は、MOVIE、EVENT、RESTAURANT、PARKING、AMUSEMENTの頭文字を並べて作ったのだとか。
その名のとおり開館当初は、エンタメ、グルメ、ショッピングなどを総合的に楽しめる映画館として、当時は珍しい複数のスクリーンに、飲食店、貸ホール、レンタルビデオ店などが入っていたそうです。
確かに休日の映画鑑賞ってお茶や買い物、食事を楽しむまでがセットだったりしますよね。ドリンクやお菓子といった「コンセッション(売店の商品)」も欠かせません。
『岡山メルパ』は岡山に映画文化を定着させると同時に、お出かけの楽しみも広げられる「街の賑わい場」をイメージし、映画館を起爆剤にした街づくりを視野に入れていたとか。
それって当時としてはなかなか画期的! 近年のシネコン(複合映画館)が増える前から、新たな時代の映画館として注目を集める存在だったのですね。
館長はその頃入社したそうですが、どんな思い出がありますか?
「入社後は向かいの店でパンを焼いてました。開館当日は店先からセレモニーの様子を眺めてましたね」。
え、パン? なぜ映画と関係ない仕事を?
「先代が、グルメ要素として『焼き立てのパン』にこだわってまして。でもパン屋を任せる人が居なかったので、私に白羽の矢が立ったんです」。
映画業界歴が長く、幼少期から「映画館が遊び場だった」と語る福武館長の意外過ぎるエピソード。映画担当になったのはなんと入社8年目くらいだそうで、「異業種からのスタートは勉強になった」と入社当時をポジティブに振り返ります。
歴史を刻んだ館内も見納め。再開発後の新・メルパに向けて充電期間へ。
昔から見てきた『岡山メルパ』ビルを目に焼き付けておこうと、映画館の中を案内していただきました。
こちらは2階フロア。歴史を感じる内装ながら、ホールのエントランスみたいに広く上質な空間です。お菓子の自動販売機などの横に、以前使われていたフロア専用カウンターも残っていました。
『岡山メルパ』はエレベーターで上映フロアへ移動し、シアターの好きな席へ座れる「自由席制」を最後まで採用していました。
「当館を含め、かつての映画館は『流し込み制』が主流でした。座席指定が無くて、入場も途中退場も自由にできるんです」。
現在は1本ごとに完全入れ替えの指定席制が一般的です。以前は2本立ての同時上映なども多く、見たい分だけ映画館に長居する楽しみ方もできました。
価値観はそれぞれですが、より気軽に映画を見られる自由さが懐かしい! 大らかな映画文化の名残を感じます。
こちらは3階フロア。2階に2つ、3階と5階に1つずつの、合計4シアターがありました。
映画をモチーフにしたトイレの表示板もツボ。
今さら言うまでもありませんが、巨大スクリーンで作品の世界観に没入できるのが映画館の魅力。一瞬で非日常に連れ出してくれる魔法の空間です。ここで映画が好きになった人も多いでしょうね。
「商店街まで続く行列やイベントの盛況ぶり、お客様や商店街の方々とのふれあいなど、どれもかけがえのない思い出です。寂しさはあるけど、開館当初に描いた地域活性化の夢が再開発で叶うのはうれしいことです」。
閉館後は岡山市北区内山下の『ジョリービル東宝』に拠点を移して営業中。『岡山メルパ』の名前は残して、再開発後に向けた映画事業を継続していく予定です。
さよなら興行リポート。「ファイト・クラブ」を選んだ理由も聞いてみた!
平成を駆け抜けた『岡山メルパ』。2022年1月28日から4日間にかけて、平成の名作を再上映する「メルパビルさよなら興行」が行われました。
ついに迎えた最終日の31日。19時の上映時間より1時間早く訪れると、お客さんが続々とやってきました。中にはスマホで館内の写真撮影をする人もちらほら。報道陣のテレビカメラなども多数集まっていました。
入場料金は特別価格の1000円。入口には過去作品のチラシを5枚まで持ち帰れるコーナーがあり、感謝の言葉と共に福武グループ関連の懐かしい写真が飾られていました。
シアターの赤いカーテンを開けると、すでに中央辺りに着席しているお客さんの姿が。予想を上回る人で、用意された席は上映時間までに埋まっていたそうですよ。
映画本編が終わりエンドロールが終了すると、あちこちから自然と拍手が起こりました。映画への高揚感と、その場を離れがたい想いが入り混じります。
昔フロア専用カウンターがあったあたりで館長やスタッフが出迎えてくださり、最後は和やかなムードに包まれて、そのままお見送りへ。
エレベーターで1階へ降りて出口から外へ出ても、お客さんたちはビルの前から離れようとしません。
最後のお客さんが出て行くのを見送った後、ビルの前にいる多くの人たちに対して福武館長からの挨拶がありました。
「長らく大変お世話になりました。長きにわたってメルパがやってこれたのも、皆さんのおかげです。心より感謝いたします」。
「再開発の後も映画の火を灯せるように頑張りますので、よろしくお願いします。33年間ありがとうございました」。
スタッフと福武館長の深々としたお辞儀と共に、ゆっくりとシャッターが下りるのをみんなで見届けながら、『岡山メルパビル』最後の夜は終了となりました。
ちなみに最終日の上映作品は、1999年に日本公開されたアメリカ映画「ファイト・クラブ」。暴力と狂気に翻弄される男たちの姿を描いた映画ですが、映画館のラストを締めるにしては随分と攻めてる気もします。なぜこの作品を選んだのですか?
「『ファイト・クラブ』は、映画の本質を掴んでいる『これぞ映画だ!』という作品だと思っています。万人受けする内容ではないかもしれませんが、最後だからこそ『映画ファンが映画館で観たい1本』を選びたくて…」。
「そしてお客様が、『なぜこの作品を選んだか?』と色々と考察をしてくれるのもうれしいです。それは映画鑑賞の楽しさに通じていると思うんです。観る人によってさまざまな捉え方ができるのが『映画の魅力』ですから」。
最終上映を行うに際しては、難しい権利関係をクリアする必要があったそうで、最後は熱いエネルギーに満ちた名作で締めくくった『岡山メルパ』。これからは「福武ジョリービル」での『岡山メルパ』として映画の魅力を広げていきます。
再開発後の事業がどうなるのかは「まだ検討中」とのことですが、新たな映画&エンタメのムーブを巻き起こす「続編」も期待したいですね!
Information
Information
岡山メルパ(旧ジョリー東宝)
- 住所
- 岡山市北区中山下1-10-30
- 電話番号
- 086-221-0122
- 営業期間
- 9:00~21:00 ※作品により上映時間は異なる
- 休み
- なし
- 席数
- スクリーン200座席
- 駐車場
- なし
- 料金
- 一般1800円、大学生1500円、高校生・中学生・小学生・幼児 1000円、シニア 1100円ほか
- HP
- http://www.merpa.info/
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