降水量1mm未満の日が日本で一番多く、災害も非常に少ないことから、映画やドラマの撮影スポットとして注目されている岡山県。市街地からクルマで30分圏内に、海、山、古い街並みなどがあり、田舎の風景や島、高原など豊富なロケーションがそろっています。
「晴れの国岡山は、日本のハリウッドだね!」
そんな声が高まって、誰が呼んだか「HALLE WOOD(ハレウッド)!」。
「HALLEWOOD」の立役者であり、全国の映像制作会社が頼りにするというすご腕コーディネイターの妹尾真由子さんが、知られざるロケの裏側やさまざまなエピソードを通じて、岡山の魅力を紹介していく連載です。
《連載第16回》映画『恋は光』編
みなさん、こんにちは。岡山県フィルムコミッション協議会の妹尾真由子です。
2022年の4月以降、岡山県内でロケが行われた映画『とんび』と『劇場版ラジエーションハウス』が立て続けに全国公開され、盛り上がってきました。
そして6月17日からは、映画『恋は光』の公開が始まっています。
本作は 「恋をしている女性が光を放ってキラキラして視える」という特異体質を持つ男子大学生の初恋を描き、恋愛感情に振り回されながらも、「恋って何だろう?」と「恋」の定義を考察する主人公たちに共感の声が多く寄せられ、話題となった作品。
ウルトラジャンプにて連載・コミックス化された「恋は光」(集英社ヤングジャンプ・コミックス・ウルトラ刊)が原作で、主人公には、今飛ぶ鳥を落とす勢いの神尾楓珠さん、ヒロインに西野七瀬さん、平祐奈さん、馬場ふみかさんと人気の若手俳優陣が勢ぞろいです。
『ももいろそらを』や『殺さない彼と死なない彼女』といった美しい画作りが高く評価されている小林啓一監督がメガホンをとって、このたび映画化されました。
予告編を観られた方は、お気づきになられたかもしれませんが…。
瀬戸大橋、倉敷美観地区、表町商店街…見慣れた風景がいくつも映し出され、驚いている方も多いかと思います。
実は、この作品、オール岡山ロケ作品なんです。
2021年夏に約1カ月間、岡山市、倉敷市、高梁市、真庭市で撮影を実施しました。
はじめは、メインロケ地となる大学の問い合わせだけだったため、いくつか候補を提案し、可能性のある大学を一通りロケハンした後、『IPU・環太平洋大学』で撮影を行うことが決まりました。
そしてなんと、撮影開始まで1カ月を切っている時点で急遽オール岡山ロケが決定! そこから大学以外のロケ地探しがスタートしたのです。
急遽オール岡山ロケが決定したという経緯もあり、通常よりも時間がない&ロケーションについてゼロからのスタートでイメージがわきにくい…という中での対応となりました。
「『歴史を感じられるような町並み』と『ヒロインが住む趣のある屋敷の設定に合う建物』をまず見たい!」という監督のご希望により、『倉敷美観地区』『勝山町並み保存地区』『吹屋ふるさと村』などを、アポなしで突撃訪問というカタチでロケハンをして回り、それに付随して『旧片山家住宅』『三浦邸』などの建物もご紹介させていただきました。
時間が限られていたため、各所を移動する道中で監督とコミュニケーションを取りながら、ロケーションに対するイメージやご要望などを聞き出すことを徹底的に行いました。
そして無事ロケ地は決定。撮影が始まりました。
『岡山県立美術館』では開催中だった企画展の会場に美術装飾として用意した絵画を特別に飾り、撮影を行いました。
他の美術館が所蔵している美術品の企画展だったこともあり、美術館の方々には大変な調整をしていただきました。美術専門の運送業者さんが来られて作品の付け替えをしたり、撮影後は復旧したりという、特別な作業を行って撮影したシーンです。
また、苦戦したのは、「夜景のシーン」と「木陰で海釣りできる場所」でした。
夜景のほうは、「眼前に広がる夜景やイルミネーションの中を散歩しているようなシーン」というイメージを伝えていただいたのですが…。
県内の夜景スポットは、『水島スカイライン』など、クルマで行って少し離れた場所から夜景を眺める…といった感じの場所が多かったため、ちょっとイメージと違うかなぁと。
ちょうど撮影時に岡山市街地中心部にある『西川緑道公園』でライトアップをしているタイミングだったのですが、混雑していたり、光と音の演出が楽しめるという内容の催しだったため、撮影時に音を消すことが難しいからと断念…。
『岡山後楽園』で開催していた夜間特別開園「夏の幻想庭園」での撮影もよいのでは?と思って相談はしたものの、こちらも同じで「『幻想庭園』中は人も多くて混雑するので撮影は難しい」と言われてしまいました。
ところがコロナの感染急拡大で、急遽「幻想庭園」のイベントが中止となり、一時的に閉園となってしまったんです。そこで再度お願いをして特別に撮影のためだけに点灯をしていただだき、無事撮影をすることができたのです。
奇跡的に撮影できたシーンは、ぜひ劇場でご覧いただきたいと思います。
一方の「木陰で海釣りできる場所」については、岡山県は海が南側に面しているので、海を見ようと思うと基本的に太陽の方を向いてしまうんですね。そのため、「海の方を向いて木陰になる」場所がなかなか見つからず。
県内西から東まで海沿いをすべて走り、前島や北木島、真鍋島などの島々にもわたって木陰を探して回りました。
「どうすれば木陰で海釣りが出来るのか…」と頭を抱えていた時、ふと「木陰ではないけど、瀬戸大橋の下には影ができるかも!!」と思い立ったんです。瀬戸大橋の袂にある『田土ノ浦公園』へ行ってみたところ、ちゃんと日陰になりました。
太陽の位置で影が移動するため撮影時間の設定が重要になるとは思いましたが「ここなら提案出来る!」と考え、思い切って提案してみました。
監督は最初に画像を見たときにはあまりピンと来ていなかったようですが、ロケハンで案内した際には気に入っていただき、見事ロケ地に決定しました。
ロケ地決定からクランクアップまでは怒涛のように過ぎていきましたが、撮影の約1カ月間は、ほぼほぼ雨が降ることはなく、この作品でも「晴れの国岡山」の威力を発揮しました!
映画では劇中の風景すべてがとても美しく輝いて映し出されており、作品のテーマである「光」をより印象的に演出し、盛り上げてくれたのではないかと思っています。
ぜひ劇場でご覧いただき、「恋」の定義について考え、語ってみてはいかがでしょうか。
作品データ
【タイトル】
「恋は光」
【劇場公開日】
2022年6月17日より全国公開中!
【ストーリー】
「恋する女性が光って視える」特異な体質を持つ大学生・西条。
恋愛とは無縁の学生生活を送っていたある日、「恋というものを知りたい」と言う文学少女・東雲と出会い一目惚れ、「恋の定義」を語り合う交換日記を始めることに。
そんな2人の様子は、西条にずっと片想いをしている幼なじみの北代の心をざわつかせる。
さらに、他人の恋人を略奪してばかりの宿木は、西条を北代の彼氏と勘違いし、猛アプローチを開始。
いつの間にか4人で「恋とはなんぞや?」を考えはじめ、やがて不思議な四角関係に…。
数千年もの間、人類誰しもが悩んできた「恋」を、果たして彼らは解くことができるのか?そして、それぞれの恋の行方は―?
【キャスト】
神尾楓珠/西野七瀬/平祐奈/馬場ふみか
【スタッフ】
原作:秋★枝「恋は光」(集英社ヤングジャンプ・コミックス・ウルトラ刊)
脚本・監督:小林啓一
【岡山県内撮影時期】
2021年7月17日(土)~8月10日(火)
【県内ロケ地】
IPU 環太平洋大学/岡山後楽園/岡山県立美術館/岡南ギャラリー/表町商店街/
岡山電気軌道/つり具のわたなべ/QINOCO RSK/ROSA ROSSA/
倉敷美観地区/田土浦公園/ままかり亭/名も無き天ぷら酒場/八十八商店倉敷店/
御坂の家/吹屋ふるさと村/旧片山家住宅/井原鉄道/旭川
【ロケ地紹介特集ページ】
https://www.okayama-kanko.jp/feature/koihahikari/top
【「恋は光」公式ホームページ】
https://happinet-phantom.com/koihahikari/
岡山県フィルムコミッション協議会の詳細は下記から。
【Profile】
岡山県フィルムコミッション協議会
妹尾真由子
矢掛町出身。2013年に矢掛町入庁。産業観光課での勤務時代には、ご当地キャラ・やかっぴーとともに町の観光PRを担当。2016年より岡山県観光連盟に出向。2018年より岡山県フィルムコミッション協議会の専任スタッフに
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