降水量1mm未満の日が日本で一番多く、災害も非常に少ないことから、映画やドラマの撮影スポットとして注目されている岡山県。市街地からクルマで30分圏内に、海、山、古い街並みなどがあり、田舎の風景や島、高原など豊富なロケーションがそろっています。
「晴れの国岡山は、日本のハリウッドだね!」
そんな声が高まって、誰が呼んだか「HALLE WOOD(ハレウッド)!」。
「HALLEWOOD」の立役者であり、全国の映像制作会社が頼りにするというすご腕コーディネイターの妹尾真由子さんが、知られざるロケの裏側やさまざまなエピソードを通じて、岡山の魅力を紹介していく連載です。
《連載第14回》映画『とんび』特別編
みなさん、こんにちは。岡山県フィルムコミッション協議会の妹尾真由子です。
映画『とんび』の公開が始まり1カ月近くが経ちましたが、皆さんもう劇場でご覧いただけましたでしょうか。
「何度も劇場で見たよ」「ハンカチでなくてタオル持って行けばよかった…それぐらい泣けた」と言ってくださる方も多く、ロケ地になった浅口市金光町大谷地区や笠岡市金浦地区など、ロケ地ガイドを手に取り、ロケ地巡りを楽しんでいる方々も多数。
公開1週間後に金光町大谷地区を訪れた際には、朝から夕方までひっきりなしに人が歩いているし、浅口市が発行したロケ地MAPなどを見ながら劇中の美術装飾で設置した看板を町並み再現で再設置したところを見て回られたり、地元の方にロケの時のお話を聞いている人たちがいるなど、凄く賑わいを見せていて、街に活気が出ていました。
それに加えて、ロケ地巡りで来たお客様たちに撮影時の思い出や町の特徴などをすごく嬉しそうに話されている地元の方々を目にして、見ている私も嬉しくなりました。
さて、前置きが長くなりましたが、今回は「映画『とんび』特別編」と題して、2022年4月23日(土)に、浅口市金光町大谷地区で開催した「映画『とんび』ただいま!岡山 公開御礼会見」の様子をお話ししたいと思います。
私は、フィルムコミッションの専任職員になった頃から、支援作品を絡めたイベントをロケでお世話になった場所や地域で開催したいという思いがありました。今回はその思いを、多くの方々のご協力のおかげで実現することができました!
実は、撮影時から「公開時にはこの街並みにレッドカーペットを敷いて、キャストの皆さんや監督に凱旋して歩いて欲しい」という思いがあり、配給であるKADOKAWAさんに相談をしていたんです。
通常の舞台挨拶であれば、劇場で実施するのが通例ですが、岡山らしさが出る町並みや風景を背景に舞台挨拶をしてもらうことで、作品の魅力と同時に岡山の魅力あるロケーションが全国に発信される…と信じ!!
公開スケジュールも確定していない段階で、キャストのスケジュールも全く分からない中で、ロケ地となった金光町大谷地区でイベントを開催したいと熱望!!
ただ、「レッドカーペットを敷くともなると、また道路規制をして地元の方々にご迷惑をお掛けしてしまうかも…」という思いもありましたが、映画のロケや作品を活用した地域の魅力発信を通じて、町が変わり始めていることも実感していたので、「ぜひ、この機会に実現したい!」という思いが強くなりました。
配給のKADOKAWAさんはそんな気持ちに応え、宣伝などでお忙しいなか今回のイベントの調整や準備に時間と人員を割いてくださり、一方、地元の方々は会場の装飾や規制看板の設置などの全面協力をしてくださいました。
こうして無事にイベント当日を迎えることができたのです。
当日の参加者は、抽選で地元在住の方300名に限定させていただきました。
主演の阿部寛さん、北村匠海さん、瀬々敬久監督の3名の登場を、今か今かと待ちわびる住民の方々のまなざしはすごくキラキラ輝いていましたね。
そしていよいよ、阿部さん、北村さん、瀬々監督が会場に登場!
感染予防対策のため、声を出せない中、フラッグを振ったり拍手で「おかえり!!」という思いでお出迎えし、3名の方が一歩一歩レッドカーペットを歩く姿を、参加者の皆さんは目に焼き付けられていました。
公開御礼会見では、岡山ロケの思い出として、地元の方々との触れ合いや撮影当時の食事のことなどにも触れていただき、監督からは、「また岡山で作品を撮りたい」といった嬉しい言葉もいただきました。
最後は、サプライズとして、劇中の祭りのシーンを再現するため、地元の方々に神輿を担いで盛り上げていただきました。「わっせ!わっせ!」と登場すると、阿部さん、北村さん、瀬々監督はとても喜んだ様子で、その表情もほころんでいました。
実は神輿はサプライズだったので、バレないように裏の方でスタンバイし、レッドカーペットを歩く姿も会見している声も聞こえない中で、ずっと待機する必要があったんです。
神輿の担ぎ手で参加してくださった皆さんには申し訳ない思いで一緒に待っていましたが、劇中の祭りのシーンを回想しながらのあたたかいコメントも頂き、嬉しそうな表情をしてくれたのでほっとしました。
イベント終了後に地元の方々から、「素敵なイベントを開催してくれてありがとう!」という言葉を頂いた時は本当にうれしかったです。
またイベント終了後も、ロケ地マップを持って街中を散策したり、お饅頭屋さんやお酒屋さんなどで多くの方々が買い物をしたりと、大変な賑わいを見せていました。
今後も、ロケ支援作品とタイアップしたイベントを企画し、撮影だけで終わらせるのではなく、地域活性に繋がるような取り組みを積極的に実施していきたいと思います。
作品データ
【タイトル】
とんび
【劇場公開】
2022年4月8日(金)
【ストーリー】
昭和37年、瀬戸内海に面した備後市。運送業者で働くヤス(阿部 寛)は、今日も元気にオート三輪を暴走させていた。
愛妻・美佐子(麻生久美子)の妊娠に嬉しさを隠せず、姉貴分のたえ子(薬師丸ひろ子)や幼馴染の照雲(安田 顕)に茶化される日々。幼い頃に両親と離別したヤスにとって家庭を築けるということはこの上ない幸せだった。
遂に息子・アキラ(北村匠海)が誕生し「とんびが鷹を生んだ」と皆口々に騒ぎ立てた。しかしようやく手に入れた幸せは、妻の事故死で無残にも打ち砕かれてしまう。
こうして、父子二人きりの生活が始まる。母の死を理解できないアキラに、自分を責めるヤス。和尚の海雲(麿 赤兒)は、アキラに皆が母親代わりなってやると説き、雪が降っても黙って呑み込む広い海のようにアキラに悲しみを降り積もらすな―「お前は海になれ」と、ヤスに叱咤激励するのであった。
親の愛を知らずして父になったヤスは、仲間達に助けられながら、我が子の幸せだけを願い、不器用にも愛し育て続けた。
そんなある日、誰も語ろうとしない母の死の真相を知りたがるアキラに、ヤスは大きな嘘をついた──。
【キャスト】
阿部 寛
北村匠海 杏 安田 顕 大島優子
濱田 岳 宇梶剛士 尾美としのり 吉岡睦雄 宇野祥平 木竜麻生 井之脇海 田辺桃子
田中哲司 豊原功補 嶋田久作 村上 淳
麿 赤兒 麻生久美子 / 薬師丸ひろ子
【スタッフ】
原作:重松 清「とんび」(角川文庫刊)
監督:瀬々敬久 脚本:港 岳彦 音楽:村松崇継
主題歌:ゆず「風信子」
【県内撮影時期】
2020年11月~12月
【県内ロケ地】
・浅口市(金光町大谷、青佐鼻海岸)
・笠岡市(金浦地区、西中学校、金浦幼稚園、旧大島東小学校、原田荘、神島の道)
・倉敷市(海蔵寺、旧玉島第一病院、玉島の道、ドラム缶橋、呼松漁港、呼松神社、沙美海岸)
・瀬戸内市(錦海倉庫)
・備前市(柳青院)
・美咲町(柵原ふれあい鉱山公園)
・岡山市(東湯)
・玉野市(由良病院)
岡山県フィルムコミッション協議会の詳細は下記から。
【Profile】
岡山県フィルムコミッション協議会
妹尾真由子
矢掛町出身。2013年に矢掛町入庁。産業観光課での勤務時代には、ご当地キャラ・やかっぴーとともに町の観光PRを担当。2016年より岡山県観光連盟に出向。2018年より岡山県フィルムコミッション協議会の専任スタッフに
<消費税率の変更にともなう表記価格についてのご注意>
※掲載の情報は、掲載開始(取材・原稿作成)時点のものです。状況の変化、情報の変更などの場合がございますので、利用前には必ずご確認ください
※新型コロナウイルス感染拡大防止の対策として、国・県・各市町村から各種要請などがなされる場合がございます。必ず事前にご確認ください
※お出かけの際は、ソーシャルディスタンスの確保やマスクの着用、手洗いや消毒など、新型コロナウイルス感染予防の対策への協力をお願いします