Season 2 第八話/おたやん食堂(倉敷市)の玉島おでんとからす天狗焼きそば
東京から岡山に移住してきたライターが、まだ食べたことがない、岡山で愛されているグルメを求めて食べ歩き、行きつけにしたいお店を開拓します!
寒い冬の定番メニューといえば鍋料理ですが、そのなかでも地域を問わず食べられているのが、「おでん」でしょう。ひとくちに「おでん」と言っても、地域によってダシや味付け、具材などに特色がありますね。たとえば東日本ではおなじみの「ちくわぶ」は、西日本ではあまり食べられていないようです。
そのダシは、「うどん」と同様に濃口で、西日本は薄口が主流のようですが、岡山で何か特色があるおでんがないか検索していたところ、「カステラが入っている玉島おでん」なるものを発見。「おでんにカステラって一体?」 頭の上に大きなクエスチョンマークが浮かんだワタクシは、どんなものかを確かめるべく、倉敷市玉島にある『おたやん食堂』を訪ねることにしました。
通町1丁目商店街のアーケード入り口に到着しました。全部で5つあるという玉島の商店街のなかでもっとも古い商店街だそうで、歩いていると昭和の時代にタイムスリップしたような感覚になります。
アーケードを100mほど歩いたところにお店はありました。のれんをくぐり、引き戸を開けて店内に入ると、昭和の風情が残っていて、懐かしい雰囲気が漂っています。壁に貼ってある「玉島おでん」のメニューを見ると、確かに「カステラ」があったので、それに加えて「こんにゃく」「玉子」「大根」「牛すじ」各108円を注文しました。
「玉島おでん」が運ばれてきました。左手前にあるのが、「カステラ」で、パッと見はお菓子のカステラそのものですね。さっそく頂いてみると、外側は弾力があるカマボコのような歯ごたえで、香ばしい風味があり、なかはふんわりと柔らかく、ほんのりとした甘さがあります。優しい風味のダシとの相性もバツグンで、クセになる味わいですね。
「県外などから来られたお客さんは皆さん、『おでんにカステラが入ってるの!?』と驚かれますね(笑)。『カステラ』の正式名称は、『鮮魚練り物カステラ』で、玉島では昔からご馳走として食べられている魚肉の練り物です」とご主人。玉島は練り物や玉子、大根などおでんの具材の宝庫で、以前から飲食店ではおでんが定番メニューとしてあったそうです。そのおでんに玉島名物の「鮮魚練り物カステラ」を入れることで「玉島おでん」と定義。玉島の知名度向上や地域の活性化にも一役かっているそうです
ペロッとおでんをたいらげてしまったので、お店の名物のひとつという「からす天狗焼きそば」540円を注文しました。ご主人がテーブルにある鉄板で具材を炒め、そこに茹で上げられた真っ黒な麺が入ります。仕上げにソースとカツオダシをかけるといい香りが立ちこめてきました。焼きそばとパスタの中間のようなモチモチした食感の麺に、イカ天を入れることで風味も加わり、これまで食べたことのない味の焼きそばだと感じました。これはおいしいですね!
「玉島に『羽黒神社』という神社があるのですが、その神社の拝殿瓦に鎮座しているからす天狗にちなんで考案したのが、この『からす天狗焼きそば』です。こだわりは麺の色とコシで、試行錯誤した末に生麺にイカスミをに練り込みました。また語呂合わせで『10(テン)具』になるように、10種類の具材が入っています」とご主人が教えてくださいました。
「からす天狗焼きそば」を食べ終わりましたが、壁に貼られたメニューを見るとほかにも魅力的なメニューがたくさんあったので、「港チャーハン」839円を注文しました。エビやタコ、貝柱などのシーフードがたくさん入っていますが、味付けがあっさりめだったので、無事に完食しました。「玉島は港町なので、潮の香りがするものをメニューに加えたいと思って作りました。海の食材をたくさん入れているところがこだわりです」。
お腹が程よく満足したところで、ご主人の別所さんにお話を伺いました。「先代である父が大阪のお好み焼き店で修行した後、1960年に関西出身の母と一緒にこのお店を始めました。店名は父が修行したお店の屋号でもあり、関西弁で『お多福」を意味する『おたやん』は縁起がいいということで店名にしたそうです」。
ご主人は県外からお店を継ぐために帰郷。先代とともにお店に立ち、レシピを教えてもらったり、一緒にメニューを考えたりしたそうです。「父から教わったお好み焼きなどの味を守りながら、新しいメニュー作りにも取り組んでいきたいですね」。
創業から58年経った現在も、数多くのお客さんに愛され続けている『おたやん食堂』。
もともとお好み焼きがメインだったという『おたやん食堂』。創業当時に近くにあった映画館に行くお客さんの「早くできる品を増やして欲しい」という要望からうどんやラーメンなどさまざまなメニューを提供するようになったそうで、創業から58年経った現在も地元の人々をはじめ、数多くのお客さんに愛され続けています。『おたやん食堂』がある通町1丁目商店街が中心になって、毎月第2日曜日に開催されている「備中玉島 みなと朝市」には毎回約1500人~2000人の来場があるそうです。この朝市に参加しているご主人は、「玉島は、もともと遊びと生活が密着していた街。おもしろいことをやってお客さんが増えて、かつてのにぎわいを取り戻してくれればうれしいですね」と語ってくださりました。ごちそうさまでした! 玉島愛にあふれた料理を食べにまたお伺いします!(ライター:カタオカキヨシ)
Information
おたやん食堂
- 住所
- 倉敷市玉島2-6-14 [MAP]
- 電話番号
- 086-525-4083
- 営業時間
- 11:00~19:00
- 休み
- 月曜日
- 席数
- 25席