今では当たり前の「博多ラーメン」も、ワタクシがラーメンに本格的にハマった20数年前の岡山では珍しい存在でした。その記憶を呼び覚ましてくれたのがこの一軒です。
高校時代にJR岡山駅前の有名店で「うまいラーメン」の洗礼を浴びたワタクシは、縁あってうどん県へ。そこでは「うどん」の奥深さは知れたものの、「うまいラーメン」と出合うことはできませんでした。そんなワタクシが再び没頭したのは、「ラーメン界の西の横綱」と称される博多へ行ったときのこと。そこで出合った一杯に見事にやられてしまい、開眼したんです。それが「ラーメン店めぐり」のきっかけでした。そのタイミングで地元の岡山へ戻り、岡山にも白湯(パイタン)の豚骨ラーメンがあることを知りました(初上陸は86年で、現在は店舗ですが当時はテント式屋台だった名店が岡山初とか)。当時九州の人が褐色のしょうゆラーメンを見て驚いたように、「白いラーメン」は衝撃的でしたね。79年に九州限定で発売されたインスタントの袋麺「うま○っちゃん」はすでに岡山でも一般的でしたが、「お店で食べる」文化はまだなかったかと。現在、進化に進化を重ねているラーメンの中でも急先鋒はとんこつラーメンだと思っていますが、そんななかで出合った一杯がこのお店にありました。クラッシックな「豚骨」です。
そのお店は『にこいち』さん。大将の加藤宅弥さんに話を伺います。ワタクシ、九州も色々と食べて回りましたが、こちらで食べてみて驚きました。ストロングスタイル(正統派)な九州の白湯・豚骨ラーメンですよね。「はい。『博多ラーメン』600円です」。独特の臭みがないですね。においをおさえる秘けつがあるのですか? 「下処理につきます。3時間炊いてスープを捨てるんですよ。くさみを除くためです」。もったいない。そこから「呼び戻し」でしたっけ? 「そうです。前日に取り分けたスープでだしをとる製法で、コクと香りを出しています」。なるほど。この深いうまみの秘密はそれなんですね。「古い骨は沈殿して底につきますから、それを焦がさないように注意をして『焼くように炊く』んですよ」。「焼くように炊く」んですか! それはまた新しい表現です。それでは寸胴から目が離せませんね。「営業中も店内で炊き続け、さらにひと晩寝かせますから、都合3日かかります」。それを継ぎ足して使っている本スープに合わせてようやく完成ですか。これは時間も手間もかかるなー。
「あ、そうだ。ちょうど期間限定メニューをはじめたんです」。それはぜひ食べたいですね! 「『赤玉ボンバー』です。価格はラーメンにプラス150円。麻辣肉味噌ですね」 ※右奥の餃子はボンバーには含まれません。って、器の中に肉みそが入ってるだけですが? 「ラーメンスープをレンゲで5、6杯入れてください」。ほう。入れました。「そしたらよくまぜて」。あ、なるほど。つけ麺のスープ的なやつになりました。これは斬新ですね。この「ボンバー(溶かした肉みそ)」は、豚骨ラーメン内にぶち込んでもOKですか? 「ええ、最後は面倒くさくなってそうされる方も多いです(笑)」。あ、食べてみるとあまり辛くない。これなら辛いのが苦手でも大丈夫です。「豚骨スープの甘さや香りを邪魔せず、むしろ引き立てる辛さにしています」。これからのシーズンにぴったりですね。「ええ、8月下旬ごろまでやっている予定です」。しかし「博多ラーメン」と「ボンバー」合わせても750円ですから、ちょっとお得かもしれませんよ。一杯で2種類の味、心して楽しみましょう。同時に食べ比べができるのが気に入りましたよ。
大将の加藤さんは博多出身ですか? 「いえ、笠岡市です」。ええっ? またラーメン処じゃないですか? 「福岡の学校へ進学して『博多ラーメン』と出合って、凄まじい衝撃を受けたんですよ!」。笠岡ラーメンと博多ラーメンじゃ違い過ぎますもんね。「それが20年ほど前ですから。当時は本当に白いスープのラーメンを食べたことがなくて。しかもうまくて、安い!」。まさにワタクシと同じ頃ですね。「卒業後にエスニック料理店で6年くらい勤めて料理長も経験したんですけど、その会社が新業態としてラーメン店をすることになって。立ち上げから関わったんです」。そこで「博多ラーメン」とつながるんですね。「修行をした後に福山市で8年くらいお店を任せてもらって。それから、かねてからの目標だった起業をしたんです」。そこで岡山へ帰ってきたんですね。「前のお店は当時グルメサイトで『広島県ラーメンランキング第一位』をいただいてたんです。でももっと、早くて安くてうまい、普段使いの店を、お客様の顔が見えるカウンタースタイルでやりたくて」。この立地はどうですか? 「平日はビジネスマンの方が多いですね。うちは最短1分弱でラーメンが出ますから、さっと食べてさっと帰っていかれる。夜はじっくりお酒ものんでいただいて」。屋台みたいですね。
「そうなんです。地下にあるんですが屋台の雰囲気にしたくて」。入り口のビニールカーテンが気になっていましたよ。あの雰囲気を岡山の中心で再現しようという試みですね。お、ここでギョウザの登場ですか。「『博多一口ギョーザ』320円です」。ニンニクがっちょり(笑)ですよ。ひと口ギョウザは博多のソウルフードですね。「まさにそうですね。パンチのある味わいがいいんですよ。ビールがのみたくなる味なので、『生ビールギョーザセット』680円というのをご用意しました。生中1杯とギョーザひと皿に、枝豆が付いているのでお得ですよ。平日は17:00~限定で、土、日曜は終日オーダー可能です」。少し小ぶりなのでいくらでも食べられちゃいますね。あれ、メニューの裏にラーメンのレシピが書いてありますよ。そういやフェイスブックでも公開してませんでしたっけ。普通は「秘伝」のはずですけど。「うちに『企業秘密』はないですからね!ぜひご家庭でもお試しください。まず良質な豚の頭骨を用意して…」ってできるかいっ!(笑)
博多の「洗礼」を受けた大将が目指したのは、自らが衝撃を受けた味わいとスタイルでした。岡山市中心部の地下に展開される「屋台的空間」に足を運んでみてください。
夫婦で営む地下にある本格的博多ラーメンの店。
息の合った夫婦の連携が見ていてほほえましい、岡山セントラルビル地下1階にある『にこいち』。「本場博多で愛されている多くのラーメン店と同じように、お腹が空いた時気軽に立ち寄れてさっと食べられる、普段使いの店でありたいんです」と語るのは大将の加藤さん。目指すはずばり「屋台風の超大衆店」。こだわりのラーメンは本場仕込みで、麺は創業55年を数える博多の老舗製麺所から毎日直送。水や素材にこだわり抜き、熟練の技を持った職人が打ち上げている極上の細麺だ。博多ラーメンの特徴である、麺の固さの指定や替え玉(100円)ももちろんありで、卓上には、「豚骨スープにベストマッチの二大巨頭」といわれている紅ショウガと辛子高菜がスタンバイをしている。生ニンニク(クラッシャー完備)、すりゴマ、コショウもお好みに合わせてどうぞ。最初はそのままで。途中から変化を付けていくのがオススメの食べ方だ。
Information
博多ラーメン にこいち
- 住所
- 岡山市北区本町6-36 岡山セントラルビル地下1階 [MAP]
- 電話番号
- 086-225-6464
- 営業時間
- 11:00~15:30/17:00~23:00 ※日曜、祝日は11:00~21:00
- 休み
- 月曜
- 席数
- 9席
- 駐車場
- なし
- HP
- https://www.facebook.com/2nico1/