数多くの町家が立ち並ぶ、倉敷美観地区本町通り。歴史ある町家の一般公開をはじめ、宿泊施設や飲食店の開業など、前編と後編に分けて最新の動きを紹介。
美観地区最古の町家で、天保年間の建築美と先人たちの技に出合う。
国指定重要文化財 井上家住宅
2023年3月から、倉敷美観地区最古の町家とされる『井上家住宅』が一般公開されている。井上家は江戸時代に「古禄」と呼ばれた13軒の豪農のひとつで、当住宅は主屋や三階蔵、井戸蔵などが国の重要文化財となっている。
「指定当初は痛みが激しく、上がって見ていただけるような状態ではありませんでした」。そう振り返る16代当主の井上典彦さんは、2012年から10年をかけて保存修理を実施し、当家がもっとも栄えていた天保年間(1830~44年)の姿を蘇らせた。
倉敷格子や倉敷窓、蔀戸、棹縁天井など見どころが多く、修復時に大工や建具職人が用いた往時の技法の展示コーナーも設けられている。「かつてツルを飼っていたと伝わる坪庭に面した座敷には、文化人として知られていた10代当主がそのツルを描いた絵を飾っています。今後は、蔵の中に眠っている江戸から明治、大正時代にかけての品々を活用して企画展なども開催できれば」と、井上さんは笑顔で話してくれた。
江戸時代後期の町家が倉敷の魅力を次世代へとつなぐ場に。
明治から平成にかけて土屋内科医院として地域の人々の健康を支えてきた土屋家。かつての医院とその奥に連なる土屋家の旧宅が、2023年3月、宿とショップ、カフェを併設する『土屋邸』として新たな歩みを始めた。
江戸時代後期に建てられた母屋と蔵を再生した宿は、阿智神社や『井上家住宅』を望める『本町通りの宿』と、白壁の建物が並ぶ路地を見渡せる『倉敷 路地の宿』、静けさに包まれた『土屋邸 蔵』の3つ。医院だった建物は、ジャムや焼き菓子を作る『三宅商店カフェ工房』の直営店。そして、蔵の1階は小さなカフェに。
当邸を企画・運営する辻(ただしくは旧漢字)信行さんは、これまでも本町通りに残る古い建物をカフェや商業施設に再生してきた人物。「次の世代につなぎたい倉敷の魅力は、『暮らし』にこそあると思っています。訪れる方には宿泊を通じて暮らし目線で町を体験していただき、地元の方たちには『みんなの客間』として活用することで新たな発見をしてほしい」と力強く語ってくれた。
土屋邸
三宅商店カフェ工房 土屋邸
蔵カフェ 三宅商店
MAP
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