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つまんない映画なんてない!

つまんない映画なんてない! vol.4

「手紙」

  • 情報掲載日:2015.09.09
  • ※最新の情報とは異なる場合があります。ご了承ください。

岡山メルパ 福武 孝之館長
映画業界20年、老舗映画館を切り盛りする名物館長。映画が持つ「観ることで、自分の世界が広がる」魅力を広めるべく、多彩なイベントを展開。ジャンルや制作者にこだわらない、テキトーな鑑賞が映画愛を高める秘訣。映画が好き過ぎて、あこがれのターミネーターに変身。特殊メイクがんばりました!

「手紙」

映画において“手紙”というアイテムは観客を感動させるものとして度々登場している。実生活でも、言葉でなく、あえて手紙で伝えることによって、同じメッセージをより深く丁寧に伝えることができる。それは我々が文章を書く時、会話よりも数倍の時間をかけて言葉を選ぶからではないだろうか。相手が考えに考え、選びに選んだ言葉だから心にしみるのである。もちろん映画の世界では、そもそもセリフが考えに考えられたものであり、物語の結末を踏まえて選ばれた言葉なので“手紙”の出番はないように思えるかもしれない。しかし手紙の力はそんなものではないのである。

手紙には普段言えないことを言えてしまう力がある。映画とはいえ、あまりにクサいセリフを言われると、観客は引いてしまう。しかしそれが手紙という方法であるならば、抵抗はなくなり、むしろ普段は照れくさくて言えなかっただけで本心はそうだったのかと、一転して感動のメッセージとなるのである。

つまり、観客に対し、言葉は建て前、手紙は本音という感覚を持たせる効果があるのだ。
これこそが真実であると観客に伝えたい時に、作り手はあえて“手紙”というアイテムを投入するのだ。更に手書きであれば、その字に人柄がでる。そして読み始めると手紙を書いた本人のナレーションが入り、本人の声で語りだす。これほど映画的なアイテムはなかなか無いのである。
例えば、推理映画でクライマックスに手紙が出てくる。これこそ事件の真相だろう。又は、幼い子供の字で、たどたどしく“お母さんに会いたい”と書いてある。これがウソに思えるはずがない。

映画という虚構の世界で真実を語る難しさを考えると、手紙はとてつもなく頼りになるアイテムなのである。そんな裏話をしてしまってから、この秋公開の「ポプラの秋」という手紙がキーになる映画をあえて紹介するのだが、この映画の中で中村玉緒さんがこんなセリフを言うのだ。
「手紙は誰かが繋ぐもの、それが郵便屋さんでも空き瓶でも、何かが2人をつないでこそ“手紙”になるんだよ。」
私は手紙の本質を忘れていた!!!
手紙の本質は時間と場所を越えて思いを伝えることである。一見普通に思えることだが、“時間と場所を超える”ということはスゴイ事である。そして時空を超えるためには間に誰かが存在する。「ポプラの秋」では、先に天国へ旅立った人へ手紙を書くのだが、それを届けるのが中村玉緒さん演じるポプラ荘の大家さんなのである。おそらく誰より先にあの世に行くおばあちゃんが、みんなの想いを届けるから私に死者への手紙を預けろというのである。

先に旅立った最愛の人に手紙が届くのならば、私は何を書くだろう?
そこには間違いなく本当の自分が存在する。これこそ手紙の底力ではないだろうか?そして、もはやその手紙が届くかどうかが問題ではなくなる。そう思った瞬間、おばあちゃんの本当の想いが心にしみたのである。

「手紙は誰かが繋ぐもの・・・」
その言葉の深さを考えながら「ポプラの秋」を観終わると、むかし大失敗に終わったケビン・コスナ―の「ポストマン」をもう一度見てみようという気になったのである。

「つまらない映画なんてない!」・・・きっと・・・。


「ポプラの秋」9月19日(土)から岡山メルパにて公開

監督:大森研一 出演:本田望結・中村玉緒・大塚寧々 他

岡山メルパ館長 福武孝之

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