岡山メルパ 福武 孝之館長
映画業界20年、老舗映画館を切り盛りする名物館長。映画が持つ「観ることで、自分の世界が広がる」魅力を広めるべく、多彩なイベントを展開。ジャンルや制作者にこだわらない、テキトーな鑑賞が映画愛を高める秘訣。映画が好き過ぎて、あこがれのターミネーターに変身。特殊メイクがんばりました!
「サイズ変換」
1966年公開の「ミクロの決死圏」を観たことがあるだろうか?
物質をミクロ化する発明により、人間をミクロ化し、人体の中から脳内出血の治療をするという奇想天外な物語は当時の私の心を鷲掴みにした名作である。
この“サイズ変換”の発想をもとにした映画はたくさんあるが、小さくなって体内に入る発想は見事なものである。人類は未開の宇宙に夢とロマンを感じ、しばしば映画のテーマになるのだが、自分が極端に小さくなることによって日常が無限の宇宙になるアイデアは素晴らしいのだ。考えてみれば人体こそ最も身近な宇宙ではないか!
この映画を観た当時子どもだった私は、医療チームが潜航艇に乗り込み、その船ごとミクロ化し患者の体内を探検し、人体の神秘を感じることにのみ興奮していたが、この作品の面白さはそれだけではないのである。
物語は、ミクロ化の技術を実用化するためにアメリカは東側から科学者を亡命させようとする、しかしその際敵に襲撃を受け、その科学者が意識不明に陥ってしまう。その困難な手術を内側から成功させるためミクロ化された医療チームがタイムリミット1時間でオペに挑戦するのだ。映画の導入部分はあたかもスパイ映画のようで、物語全体にもサスペンス要素をちりばめた娯楽大作となっている。この作品の基盤には東西の冷戦による科学技術の競争があったり、ミクロ化の軍事利用などの企みがあったり、将来の医療の進歩を予測する希望があったり、そんな夢や希望が人の欲や悪い部分と常に背中合わせにあることを示し、技術の進歩と正義の関係を改めて考えさせられる素晴らしい映画なのである。つまりこの作品はただ小さくなる映画ではなく、小さくなって何をするかが興味深い作品なのである。
どうだろう「ミクロの決死圏」をまだ観たことのない人は観たくなっただろうか?
しかしこの作品は古く、当時アカデミー美術賞や視覚効果賞をとったA級特撮映画だが、正直今観るとその特撮はかなり味わい深い。
そこで今映画館へ行くなら「アントマン」を観ればいい!身長1.5センチのヒーローが大活躍する物語だが、もちろんそれだけではない。小さくなって何をするのか?何ができるのか?最新の映像技術で見せる“小さな世界”は圧倒的なスペクタクルアクションになっていて、その物語や展開がスゴく面白いのである。「蟻の力を手に入れたヒーローなんて弱いんじゃない」と思っている方!あっと驚いて爆笑してもらいましょう!
いやいや、小さい出来事が気に入らないというあなた!ならば「進撃の巨人」があるぞ!
こちらは人間が50メートルの大きさになって登場する映画だ!前編が大ヒットしているのは、もちろんただ人間が大きくなったからではない。予想できないとんでもないストーリー展開が話題に話題を呼んでいるのだ。
この秋は1.5センチVS50メートルの戦いに注目だ!
どちらに軍配が上がるかは、その大きさで決まるわけではないことはご理解いただけただろう。
データ:今回のコラムでの紹介作品
- 「ミクロの決死圏」
- 1966年 アメリカ
- 監督:リチャード・フライシャー
- 出演:スティーブ・ボンド ラクエル・ウェルチ ほか
- 「アントマン」9月19日(土)より公開
- 監督:ペイトン・リード
- 出演:ポール・ラッド マイケル・ペーニャ マイケル・ダグラス ほか
- 岡山メルパにて上映
- 「進撃の巨人 ATTACK on TITAN エンドオブザワールド」9月19日(土)より公開
- 監督:樋口真嗣 原作:諌山創
- 出演:三浦春馬 長谷川博己 水原希子 石原さとみ ほか
- 岡山メルパにて上映
岡山メルパ館長 福武孝之