岡山メルパ 福武 孝之館長
映画業界20年、老舗映画館を切り盛りする名物館長。映画が持つ「観ることで、自分の世界が広がる」魅力を広めるべく、多彩なイベントを展開。ジャンルや制作者にこだわらない、テキトーな鑑賞が映画愛を高める秘訣。映画が好き過ぎて、あこがれのターミネーターに変身。特殊メイクがんばりました!
「サマーシーズンの終わりに」
夏休みも終わろうとしている今日この頃、いかがお過ごしだろうか?
映画業界は一年で一番忙しい、繁忙期である。
数ある映画配給会社は、その年一番の話題作を“夏”に出すのだ。したがって7月と8月に特大の話題作が集中する。学生は夏休み、社会人はお盆休みと、長期休暇を擁するサマーシーズンは我々にとって稼ぎ時なのである。ファミリー・ピクチャーを中心に各配給会社の自信の大作がひしめき合い、どれを観ようかワクワクする。
しかし、ここで問題である。我らのお財布には限界があるのだ。
毎週映画館に通えるほどの時間もお金もないのである。
日本人は年間約1.4回の劇場体験と言われている。つまり映画館で映画を観るのは年に1回か、せいぜい2回ということになり、その1回がもし、子どもをアニメに連れて行っていたなら、実質、自分の映画体験は0回ということにもなる。にもかかわらず、映画業界の提案は「夏休みの間だけで10本観ろ!」である。何たる無謀な提案だろうか!? 結果、当然のことながら1番観たい作品が選ばれ、その作品は大ヒットするのだ。
この“ファーストチョイス”をとるために映画の宣伝マンは、壮絶な宣伝合戦をくりひろげる。
やることは主に“話題作り”である。内容が良いからと言ってドーンと構えていると、“ドーン”と底が抜けるほど悪い成績になるのである。使えるモノは何でも使う、監督や出演者に限らず、全く関係のないタレントでも、偉いひとでも一般人でも…とにかく他の作品よりも巷の話題になり、作品の存在を知ってもらい、更に観たいと感じ、その上で実際に映画館まで観に来て頂かなければならない。
それは、それは大変な作業なのである。
しかし、ちょっと待った!! これはあくまで業界内の競争である。
そもそも余暇の娯楽として映画館を選んでもらってからの話ではないか。こんな内輪の抗争をしている間に結局、見逃した作品はみんなDVDで観るのである。でなければ、忘れたころにやってくるテレビ放映で観ることになる。これが習慣づいてしまうと、いい感じのサイクルで2(ツー)の公開の時にテレビで1(ワン)を観て、3(スリー)の公開の時にテレビで2(ツー)を観てしまうのである。
ああ、我々の業界はいったい何がしたいのだろう?? 完全に迷子ではないか!
これを映画業界の専門用語では「Oh! my god!」という(ウソ)
とにかく公開本数が多すぎる! もっと観客がゆったり観られるタイミングで公開していくべきではないだろうか?
人知れず始まって、いつの間にか終わっている映画が可哀想なのである。
大混雑のサマーシーズンになると私はいつもこんなことを思って反省しているのである。
岡山メルパ館長 福武孝之