《トライフープ岡山×バスケットボール》想像を絶する感動は自らを信じ突き進んだ飽くなき挑戦の先に。
史上3人目となる日本人NBA選手誕生の興奮も冷めやらぬなか、今年もジャパン・バスケットボールリーグが開幕した。計12クラブが参戦するB3リーグの注目は、もちろん今季初参戦の『トライフープ岡山』。士気高まるチームに、独占インタビューを敢行した。
3×3界の「西の強豪」地元クラブチームがB3リーグに初参戦!
去る9月14日、とあるクラブチームが日本男子バスケットボール・B3リーグデビューを果たした。その名は「トライフープ岡山」。岡山市に拠点を置く県内初のクラブチームだ。デビューといっても、組織としての歴史は5年前にさかのぼる。「子どもたちの夢をはぐくむ場所を」と屋内フリーコートをオープンしたのがそのはじまりで、ほどなく3人制チーム「トライフープ岡山ドットエグゼ」を発足。翌15年からプロリーグ・3×3ドット・エグゼプレミアに参戦して2度の地区優勝を飾り、「西の強豪」として今や全国にその名をはせる。
その「トライフープ」が5人制参入を決めたのは、『イオンモール岡山』で初開催したホームゲームが発端だ。「発足2年目で、認知度は今よりずっと低かった。でもいざ開催が決まると地元の自治体や企業の反応がとても好意的で、メディアも大きく取り上げてくれました。特にゲーム当日の雰囲気は素晴らしく、終始あちこちで沸き起こる歓声には本当に大きなエネルギーを感じましたね」。そう振り返るのは、同クラブの選手兼ゼネラルマネジャー・比留木謙司。「その時思ったんです。トライフープは3×3の枠に収めておくべきじゃない。この輪をもっと大きく広げていくために、5人制に挑戦するしかない、と」。
その5人制チームの目玉選手が、岡田陸人と向井祐介の2選手。倉敷市出身の岡田はプロの世界では小柄な方だが、天性のディフェンスセンスで対戦チームをほんろう。5人制でも司令塔としての活躍が期待されている。そしてその岡田とタッグを組む向井の魅力は、「入りだしたら止まらない」とチームメイトも絶賛する抜群のシュート力。ゴールからどれだけ遠かろうが、どれだけ執拗にガードされようが、ひとたびボールを手にすればその視線に迷いはない。3ポイントシュートも難なく決める高いコントロール力で、これまでも幾度となくチームをピンチから救ってきた。そんな実力選手が結集するチームに、バスケファンが注目しないわけがない。デビューイヤーながら「早々に上位に食い込むのでは」と期待が高まっている。
一方で、不安要素もある。5人制のコートは3×3の2・5倍。試合時間も10分×4ピリオドと4倍におよび、ルールも細かく異なることから「3人制と5人制はまったく別の競技」と評されることも。さらに懸念されるのは、試合期間の長さだ。B3リーグは9~5月の長丁場で、その間ホームとアウェーを頻繁に行き来しながら約60もの試合に挑まなければならない。
「難しいシーズンになることは、もちろん覚悟しています。5人制では成長途上のチームですから、今後新たな課題も見えてくるでしょう。でも、ゲームを制するために必要なのは、個々の経験やチームパフォーマンスだけではない。一番大切なのは、勝利を信じ挑み続けることです」。国内外のトップリーグで経験を積んだ比留木は、力強くこう語る。「勝つつもりのないゲームで勝てるほど、この世界は甘くない。だから選手もスタッフも、非常に強い気持ちで臨んでいます。初年度だからこの程度で十分、という気持ちは一切ない」。
そう、このチーム最大の強みは、自らが定めたゴールに向かって徹底的に突き進む、この覚悟にある。たとえミスや失点が重なっても、選手らは常に前向きで、あきらめることを知らない。ゲームで弱点が見つかれば克服するまで徹底的に練習し、言い訳や泣き言をこぼすこともない。なぜなら、それこそが「トライフープ」の名に込めた信念だからだ。「フープ=輪という言葉には、『挑戦し続ける』、『地域や人々の輪を結び、繋がりをつくる』というふたつの意味が込められています。最近は選手が学校で講話させていただく機会も増えていますが、それは地域の子どもたちに、自分を信じて走り続けた先に想像を超える感動や喜びが待っていることを伝えたいから。僕らが高みを目指して挑戦し続けるのは、どんな困難に直面しても、知恵を絞り努力を重ねれば、必ず乗り越えられることを示したいからでもあるんです」。
地域に、ファンに、何かを還元しようなどと大それたことを言うつもりはない。けれど夢の舞台に足を踏み入れた者として、存在意義を示し続ける使命感は常に心に宿る。地元ファンとともに挑むホームゲーム初戦は、10月5日(土)の「岐阜スゥープス」戦。『ジップアリーナ岡山』で、ぜひその感動を分かち合いたい。
(タウン情報おかやま2019年10月号掲載より)