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岡山芸術創造劇場 ハレノワ ~カウントダウン♪ 千日前から

深~い! 新劇場「岡山芸術創造劇場 ハレノワ」と千日前の誕生物語vol.32

変わる街をウォッチング。岡山芸術創造劇場 ハレノワ ~カウントダウン♪ 千日前から

  • 情報掲載日:2024.10.08
  • ※最新の情報とは異なる場合があります。ご了承ください。

演劇を辞める覚悟で岡山に移住。その矢先に戯曲賞を受賞した角ひろみさん。「やっぱり演劇をつくりたい!!」

2024年9月1日は、『岡山芸術創造劇場 ハレノワ』が迎えたグランドオープン1周年の記念日でした。それと前後して、新劇場を気軽に楽しめる記念事業が目白押しとなりました。

そのなかのひとつ。8月1~4日は多彩な20作の公演をはじめ、ちょっと変わった遊びのワークショップやパフォーマンスが館内全体で楽しめる「子どもと舞台芸術大博覧会 2024 in OKAYAMA」で大盛況でした。

「大博覧会の期間中、観客としても『ハレノワ』に入り浸ってましたね」と笑うのは劇作家・演出家の角ひろみさん。初日のワークショップで講師を務め、空き箱やペットボトルで自作したおもちゃや楽器を持参。子どもたちに物語や言葉をリズムにのせて感じてもらい、演技にも挑戦してもらったとか。

▲角ひろみ/劇作家・演出家。兵庫県出身。1994年「芝居屋坂道ストア」を設立。旗揚げ公演翌日に発生した阪神淡路大震災への想いを込めて書いた「あくびと風の威力」で第4回劇作家協会新人戯曲賞佳作(1999年)。2014年「狭い家の鴨と蛇」で第20回劇作家協会新人戯曲賞受賞。2006年より岡山市在住。宝塚北高等学校演劇科劇作講師。ワークショップ講師・審査員多数担当

実は、舞台に関わることを楽しんできた角さんの原点も幼少期に…。

「子どもの頃はピアノを習っていて。小学校に入る前から楽器のある部屋で遊んで、紙の着せ替え人形を使ったおままごとで、楽器を鳴らしたり、歌ったりしてね。それが、今もずーっと続いてる感じ(笑)」。

実家が兵庫県尼崎市にあり、吉本新喜劇や宝塚の劇場にもよく連れて行ってもらったとか。「舞台が身近だったんですね。小学校高学年の時、母が新聞で見つけてくれたミュージカルスクールのオーディションに合格して舞台に立ち、高校1年生の頃まで通ってました」。

高校は宝塚北高等学校の演劇科に進学。「バレエ、モダンダンス、声楽、狂言、演劇表現などの授業が毎日2~4時間ありました。初めて本格的に戯曲(台本)を書いたのは、卒業公演のためだったかな。今もそうなんですけど、書きたいというより、表現したいことをみんなと形にしていくのが楽しくて…」。

高校卒業後、演劇科の同級生とともに関西で「芝居屋坂道ストア」を旗揚げ。20歳から10年間活動しました。「岡山に移住したのは、結婚する時、もう演劇で食べていくのは難しいと思ったから。岡山は夫の郷里なんです」。

▲2024年の「ハイスクールmeetTexT」。インタビュー内容の戯曲への取り入れ方は十人十色。戯曲プランニングシートに書き込んで設定を考える。制作中の作品を一人ひとりが読み上げ、角さんが丁寧にアドバイス

奇しくも、移住前に心残りから書いた戯曲「螢の光」で、尼崎市主催の「近松門左衛門賞」を受賞。「因縁ですよね(笑)。その戯曲の上演があるということで復帰して…。当時は息子が生まれたばかりで、稽古にあまり出向かなくていい戯曲を書くことで演劇に関われたんです」。

『ハレノワ』には開館前のプレ事業から関わりがあり、2021年度から高校生を対象とした戯曲創作講座「ハイスクールmeetTexT」の講師に。角さんが登場すると場が華やぎます。「硬いイメージのある戯曲講座では明るい服を着ていこうと心がけます。今の高校生はSNSで情報が得られるからか、バランス感覚がいい。大人びていて、打てば響く感じ」。

2024年度は10名の高校生が参加。「岡山の街の記憶」をテーマに高齢者へのインタビューを行い、みんなで分担して岡山市在住の2名の女性に、出生時から現在までの話を伺いました。
インタビューした6月29日は、岡山空襲で1700名以上の命が失われた日。『ハレノワ』の大劇場では、戦没者追悼の会も開かれていました。

▲高校生のインタビューに答える片岡さん。「私の高校時代とはかけ離れていると思うので、少しでもお役に立てる話ができればと応募しました。今は一日の予定がキチッとできて、無事帰宅できるとホッとします」

まず、90歳の山田さん(仮名)の話(抜粋)。
小学2年生の頃に戦争が始まって外で遊べなくなり、空襲警報が鳴るたびに避難。授業どころではなかった。実家である寺(岡山市東区)に併設された映画館に自由に出入りし、常駐していた警察官と話した。就職する女性は少なかったが百貨店に勤務。結婚して専業主婦に。子育てがひと段落してから仲間と同人誌を作り、その資金のために始めた手芸教室の講師を今も続けている。

次に、83歳の片岡さんの話(抜粋)。
戦争に関する記憶はほぼないが、ハーモニカを吹く、ケガをした帰還兵に募金をした。映画をよく見に行き、高校時代、時代劇が好きで高橋英樹などのブロマイドを収集。長男の出産日は6月29日。母が「忘れられん空襲の日に初孫が授かった。あの火の海は地獄じゃった」としみじみ言った。共働きで子どもを4人育て、難病になった夫を介護。今は地域の助け合い活動などをやっている。

▲「音読が好きで演劇部に。角先生の言葉『戯曲は舞台の設計図』が印象的」と吉田優紀さん。「インタビューをして、起承転結を意識すると書きやすい。言葉がすらすら出てきた!」と角田育久瑠くん

2人の話から印象的な部分を自由に取り入れ、全4回のワークショップで各自約10分の戯曲を創作しました。「自分が知らないことを当事者から直接聞くことで心に響き、それが他の人に共鳴する作品になることも。書いている途中で、みんなで声に出して動いてみて、演技を体感しながら互いを評価することでブラッシュアップしていくんです」と角さん。

完成した戯曲の中から選ばれた作品は、12月に実施する高校生向け演劇創作ワークショップ「ハイスクールmeetWS」で使用される予定です。

講師のほかにも、10月30日に『ハレノワ』で開催されるリーディング公演、『劇場で出会う文学~小川洋子×朗読×音楽~』では、演出を担当します。小川洋子著の短編集「掌に眠る舞台」収録の、『ダブルフォルトの予言』を上演します。

▲次々と公演中止になるコロナ禍で時間が生まれ、角さんが大西千夏さんと組んだユニット「本日ロードショー」。2021年と2022年上演の「食べない女と食べてほしくない男」は歌って奏でて演じて、自ら脚本・演出も

劇作家が少ないという岡山で、角さんは新たな試みもスタート。劇作の探求や対話を目的に、劇作家の河合穂高さんと「岡山劇作家会」を立ち上げ、「小さい劇作家フェス」も開いています。

▲2024年1月、『ハレノワ』のアートサロンで開催した「小さい劇作家フェス」。劇作家自身の構成による戯曲リーディングやトーク、クリエイションが詰まっている。来年2月23日(日)も『ハレノワ』で開催予定

「『ユネスコ創造都市ネットワーク』の文学分野に加盟した岡山市を、演劇でも盛り上げていきたいですね」。

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