暮らしのいいものをセレクトしている『ハレマチ特区365』と『オセラ』が、岡山をはじめとする瀬戸内の企業・団体・職人・作家など「ひと」に着目し、そこから生まれる魅力あふれる商品とその思いをご紹介します。
「作り手」たちの意外な視点や温かい思いを知ると見えてくる、商品の魅力、新しい世界。
「自分が作ったものに対するお客さんの反応を感じたい」。どこかに潜んでいたそんな渇望が、彼女たちを「ものづくり」へとかき立てたのかもしれない。ファームスデザイン事務所は、おもに広告・雑誌のグラフィックデザインやイラスト制作などを請け負っていた。1999年、仕事で倉敷帆布と出合ったことが「ものづくり」を始めるきっかけとなった。「地元産のこのすばらしい帆布で、何か作って発信したいと思ったんです」。そう振り返るのは、当事務所のデザイナー・鈴木タオルさん。昔からショッパーやノベルティの袋などのコレクターで、「かばん好き」だったこともあり、地元産の帆布でオリジナルのかばんを作ることにした。もちろん知識もなければ、経験もない。知人からパターンの引き方を教えてもらい、中古のミシンを購入。アパレル会社での勤務経験があった籔下さんが縫製を担当した。出来上がったかばんは、WEL.T.HARSHというブランド名を付けたが、当初はどう販売してよいかもわからず、週末に知人のカフェの前などで移動販売した。その後、オリジナル生地を発注し、大量の商品を生産し、満を持して国内最大級のファッション展示会への出展を果たす。だが、思ったほど注文は得られず大量の在庫と借金が残ってしまった。
普通ならここで諦めるが、帆布と同じシャトル織機で織った、厚みのある丈夫なリネン生地の存在を知り、感動した鈴木さんたちは、再びかばん作りに挑戦することを決意。今度は、自分たちの手でできる範囲で、地に足を着けて進んだ。事務所の一角で手作業で生地を裁断し、ひとつずつ縫製。サンプル品ができたら、スタッフ三人で試用し、大きさや持ち手の長さ、ポケットの形などを徹底的に話し合った。「時にはけんかになるくらい(苦笑)。でも自分が本当に持ちたいと思えるかばんを作りたい、という思いの表れですから」。
かばん作りを始めて20年。ドット柄の「marco」シリーズは、幅広い年齢層から支持を得る看板商品となった。「街でうちのかばんを持っている人を見かけたら、めちゃ嬉しい」。使ってくれる人のリアルな反応を原動力に、今日もかばん作りに励んでいる。
『WEL.T.HARSH』
(中央)鈴木タオル、(右)籔下めぐみ、(左)鈴木純子
1989年、グラフィックデザインやイラストレーションを手がける有限会社ファームスデザイン事務所を設立。1999年、帆布が地元・倉敷で作られていることを知り、かばん制作を開始。地元産の帆布やリネンを使った、デイリーユースなトートバッグを提案している。
Information
有限会社ファームスデザイン事務所
- 住所
- 岡山市北区下中野716-101
- 電話番号
- 086-245-1020
- HP
- https://wel-t-harsh.com/
ハレマチ特区365
晴れの国おかやまに息づく、ものづくりのスピリットを体感・体験できる空間。岡山県内を中心に、せとうちエリアの作家や職人、企業による雑貨、ウェア、ストックフード&器など、1000種類以上のアイテムをラインナップ。作家によるワークショップをほぼ毎日行なうスペースも常設。4月28日(水)、『イオンモール岡山』2階に移転リニューアル。
Information
ハレマチ特区365 by タウン情報おかやま・オセラ
- 住所
- 岡山市北区下石井1-2-1 イオンモール岡山2階
- 電話番号
- 086-206-7204
- 営業時間
- 10:00~21:00
- 休み
- なし
- 駐車場
- 約2500台(有料)
- HP
- https://hare365.com/
<消費税率の変更にともなう表記価格についてのご注意>
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