暮らしのいいものをセレクトしている『ハレマチ特区365』と『オセラ』が、岡山をはじめとする瀬戸内の企業・団体・職人・作家など「ひと」に着目し、そこから生まれる魅力あふれる商品とその思いをご紹介します。
「作り手」たちの意外な視点や温かい思いを知ると見えてくる、商品の魅力、新しい世界。
「仕込蔵兼貯蔵庫の『秘宝閣』を冷房完備で新築したのは、常温で酒を熟成させるのが常識だった1970年のこと。以来、醸造・貯蔵環境の低温管理を徹底してきました」。そう話す内倉さんが杜氏を務める『嘉美心酒造』は、かつて周囲の冷ややかな視線をものともせずに低温管理へと舵を切った蔵元の反骨精神と革新的な社風を、今も色濃く受け継ぐ。
備中流の流れをくむ当蔵の酒造りの基本は、米の旨みを引き出した甘口の「米旨口」。戦中戦後に米不足から三倍醸造酒が主流となった時も、辛口の酒が飛ぶように売れた1960~70年代も、米をふんだんに使う「米旨口」をぶれることなく醸してきた。いっぽうで、県外の酒造会社と共同して生み出した低アルコールの技で造る「木陰の魚」や、岡山県工業技術センターに協力して実用化させた白桃酵母による発泡性低アルコールの「しゅわしゅわ」を商品化。どちらも発売当初は振るわなかったというが、「木陰の魚」はワインに通じる個性的な味わいでコアなファンを徐々に増やし、「しゅわしゅわ」はスパークリング清酒の普及とともに女性や若い世代を中心に広がりを見せた。時代を先取りするかのような酒を発信し続ける当蔵が、この10月に新発売したのが「568(コロハ)」。「新型コロナ(567)ウイルスに打ち勝つという思いを込めました」。内倉さんから新商品開発を一任された当蔵の最若手三人がまず決めたのは、「精米歩合が異なる酒は混ぜない」という業界の常識へのチャレンジ。試行錯誤を重ねて、「嘉美心(心シリーズ) 純米大吟醸」と「神心 涼吟醸」、純米酒「木陰の魚」の三種を選び、最適の配合比率を詰めて調合。そうして、口に含んだ瞬間のインパクトある酸味と追いかけるように広がる華やかな香りが身上の、この一本を仕上げた。「三人を信頼し、完成まで一度の試飲もしていないんですよ」と内倉さん。それに応えるように、三人は「伝統は踏襲しないといけない。そこを残しつつ、新しいことを取り入れていかなくては」と口を揃える。2013年に創業100年を迎えた当蔵では、次なる100年を担う若芽も着実に育っている。
嘉美心酒造株式会社
取締役杜氏 内倉直
うちくらすなお 1969年生まれ、大阪府出身
20歳で入った酒造会社で備中流の酒造りを学び、29歳で杜氏となった内倉さん。11年前、「造る者もまた消費者である」を信条に、岡山県産米の使用と醸造・貯蔵の徹底した温度管理にこだわる、『嘉美心酒造』に移籍。時流や業界の常識にとらわれない社風に後押しされて、伝統の「米旨口」を磨きつつ、新たな味わいづくりにも挑戦し続けている。
Information
嘉美心酒造株式会社
- 住所
- 浅口市寄島町7500-2
- 電話番号
- 0865-54-3101
- HP
- https://kamikokoro.co.jp/
ハレマチ特区365
『イオンモール岡山』の5階にある、晴れの国おかやまに息づく、ものづくりのスピリットを体感・体験できる空間。岡山県内を中心に、せとうちエリアの作家や職人、企業による雑貨、ウェア、ストックフード&器など、1000種類以上のアイテムをラインナップ。作家によるワークショップをほぼ毎日行なうスペースも常設。
Information
ハレマチ特区365
- 住所
- 岡山市北区下石井1-2-1 イオンモール岡山5階
- 電話番号
- 086-206-7204
- 営業時間
- 10:00~21:00
- 休み
- なし
- 駐車場
- 約2500台(有料)
- HP
- https://hare365.com/
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