暮らしのいいものをセレクトしている『ハレマチ特区365』と『オセラ』が、岡山をはじめとする瀬戸内の企業・団体・職人・作家など「ひと」に着目し、そこから生まれる魅力あふれる商品とその思いをご紹介します。
「作り手」たちの意外な視点や温かい思いを知ると見えてくる、商品の魅力、新しい世界。
半世紀以上にわたり、ジーンズを中心とした製品の洗い加工を請け負う会社として業界をけん引してきた『豊和』。そこで、オリジナルのニット製品が作られているのをご存じだろうか。さかのぼること10年ほど前、会長が一台の編み機に出合ったことがきっかけだったという。通常、洋服は各パーツをを縫い合わせて作るが、その編み機なら一着丸ごと立体的に編み上げることが可能。元々縫製に高度なスキルを持っていなかった当社にとって、自社製品を開発する助けになったのだ。とはいえ、「うちはウールではなく綿糸を使うので、糸の伸び具合も違い、最初は思うように編み機を使いこなせなくて。設定を少しずつ変えながら、手探りで編み方を調整していきました。コツがつかめてきたのは、ここ2、3年です」と、ニット担当の森山さんは振り返る。その後、森山さんは新しいものを自由に生み出せる愉しさに魅せられていく。「普通は型紙でパターンを作りますが、この編み機はCADで設計して読みこませるんです。デザインの幅が広くて、アイデアがふくらみます。編み機が『NG』を出してきても、そのまま編んでみたら意外なものが出来上がることもあるんです」。
商品にはこれまで培ってきた技術力が生かされている。まず使う糸はインディゴで「ロープ染色」をした特注の中白糸。編み機が汚れるため、先染めの糸を使っているところは、国内ではほとんどないそう。こちらでは編み機をインディゴ糸専用にすることで対応。編み上げた商品は、洗いをかけ色味を調整し、さらに自慢の特殊加工で表面の色を落とすなどしてデザイン性をプラスする。芯に白色が残っている中白色を使うからこそ加工技術が光るし、ジーンズと同じように経年変化が愉しめる一着となるのだ。「企画段階で挙がってきたイメージを、どう実現していくかを考えるのは愉しいです。縫製から洗い、加工まで自社で一貫してできるので、スピードやコストの面でも強みになっています」と加工を取り仕切っている片山さん。最後に森山さんと片山さんは「できないと言われていたものを作りたい」と口を揃えた。ストーンウォッシュを日本で初めて開発した『豊和』に息づく「ものづくり精神」が垣間見えた。
濃いインディゴ色で編んでから、柄の部分だけ色抜きをしたり、グラデーションにしたり、ユーズド加工を施したりすることで、表情豊かなニットが出来上がる。ジーンズ同様に、使い込むうちに表面が削れて色落ちし、味わいのある色味へと変化していくのも魅力。
豊和株式会社
企画開発課主任 片山二郎
企画開発課ニット 森山未央
かたやまじろう 1978年生まれ、玉野市出身
もりやまみお 1987年生まれ、島根県出身
ジーンズの洗い加工の会社として1965年創業。日本で初めて「ストーンウォッシュ」を開発した会社として知られる。片山さんは染め、洗い、加工などすべてに精通しているスペシャリスト。森山さんは入社と同時にニット事業を任され、企画・デザインから編み機の調整まで手がける。
Information
豊和株式会社
- 住所
- 倉敷市児島田の口4-4-18
- 電話番号
- 086-477-6060
『紡 tsumugu』
- 住所
- 倉敷市本町10-3
- 電話番号
- 086-436-6022
- HP
- https://tsumugu-indigo.com/
ハレマチ特区365
『イオンモール岡山』の5階にある、晴れの国おかやまに息づく、ものづくりのスピリットを体感・体験できる空間。岡山県内を中心に、せとうちエリアの作家や職人、企業による雑貨、ウェア、ストックフード&器など、1000種類以上のアイテムをラインナップ。作家によるワークショップをほぼ毎日行なうスペースも常設。
Information
ハレマチ特区365
- 住所
- 岡山市北区下石井1-2-1 イオンモール岡山5階
- 電話番号
- 086-206-7204
- 営業時間
- 10:00~21:00
- 休み
- なし
- 駐車場
- 約2500台(有料)
- HP
- https://hare365.com/
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