暮らしのいいものをセレクトしている『ハレマチ特区365』と『オセラ』が、岡山をはじめとする瀬戸内の企業・団体・職人・作家など「ひと」に着目し、そこから生まれる魅力あふれる商品とその思いをご紹介します。
「作り手」たちの意外な視点や温かい思いを知ると見えてくる、商品の魅力、新しい世界。
連なったドットや幾何学模様が刻まれたガラスの器。軽快なリズム感を感じさせながら、オリエンタルな雰囲気もまとう。深く刻まれたその模様が生み出す陰影が、見るものを魅了する。この特徴的なデザインが、平井さんの代名詞だ。
倉敷芸術科学大学卒業後、シアトルの「ピルチャック・ガラス・スクール」へ留学。これが、ひとつのターニングポイントになった。「ピルチャックでは、一点もののオブジェのような、アート性の強い作品を作るんです。でも私は、器とかお皿とか暮らしの中で使える日用品を作るほうが好きだな、と」。とはいえ「自分の目指すガラス」がどんなものなのかは、まだ見えていなかった。多くの技法がある中で、何が好きか、どれが自分に向いているのか…。帰国後、工房に勤務しながら模索し、独立後たどり着いたのが「サンドブラスト」だった。「吹きガラスは上手じゃなかったので、ほかの人とは違う何かをプラスしようと思って…」と笑う平井さん。サンドブラスト自体は特別な技法ではないが、ここまで深く削るのは珍しいという。深く削るには時間がかかるし、加減を見誤ると割れてしまうリスクがあるため、みな敬遠するが、「地味な作業をこつこつやるのは苦手じゃない」という平井さんにはぴったりの技法だったのだ。
実用性の高い、「日常使いできる作家もの」として、同じ大きさ、同じデザインで、ある程度の数を用意するということにもこだわっているという。手作りゆえ、口で言うほど簡単ではない。「あれこれアイデアは生まれますが、同じ形でたくさん作れるかどうか考えると、実現するのが難しいものも多くて…」。そんな中で、試作をくり返し「レシピ」が完成した後に発表されるシリーズは、どれも平井さんの定番となっている。
自分らしさを確立したものの「手描きの絵付けガラスとか、柔らかさ、ゆるさにあこがれる気持ちがあるんです。自分のガラスにはない部分なので。でも崩すのは、きちんと揃えて作れるようになってから、と考えていました」。もしかしたら、その「時」は近づいているのかもしれない。平井さんのガラスの世界は、まだまだ広がっていきそうだ。
ガラス作家
平井睦美(35)
ひらいむつみ 1984年生まれ、美咲町在住
倉敷芸術科学大学でガラスを学び、「新島スカラーシップ」を受賞し、シアトルへ短期のガラス留学。帰国後、湯郷のガラス工房に勤務しながら経験を積み、2012年独立。美咲町に構えたアトリエで作品を制作し、岡山を拠点に年に5、6回ほど展示会を開催している。
Information
ガラス作家 平井睦美
ハレマチ特区365
『イオンモール岡山』の5階にある、晴れの国おかやまに息づく、ものづくりのスピリットを体感・体験できる空間。岡山県内を中心に、せとうちエリアの作家や職人、企業による雑貨、ウェア、ストックフード&器など、1000種類以上のアイテムをラインナップ。作家によるワークショップをほぼ毎日行なうスペースも常設。
Information
ハレマチ特区365
- 住所
- 岡山市北区下石井1-2-1 イオンモール岡山5階
- 電話番号
- 086-206-7204
- 営業時間
- 10:00~21:00
- 休み
- なし
- 駐車場
- 約2500台(有料)
- HP
- https://hare365.com/