暮らしのいいものをセレクトしている『ハレマチ特区365』と『オセラ』が、岡山をはじめとする瀬戸内の企業・団体・職人・作家など「ひと」に着目し、そこから生まれる魅力あふれる商品とその思いをご紹介します。
「作り手」たちの意外な視点や温かい思いを知ると見えてくる、商品の魅力、新しい世界。
玉野市の郊外に建つ「染織工房」。糸作家の三浦奈巳さんが、染色家で夫の北野静樹さんとともに構えた工房だ。豊かな自然が残るこの地は、三浦さんの生まれ故郷であり、二人の創作活動をインスパイアする大切な場所でもある。
暖簾や手ぬぐい、型染めTシャツなどの染色作品を制作している北野さん。デザインを起こすのに、制作の8~9割の時間をかけるという。そして、そのデザインのモチーフは、季節を映し出す草花が多いのだそう。「図鑑も参考にしますが、実際に野山に出て撮ってきた写真をたくさんストックしています」。試作を繰り返してデザインが完成したら型紙を彫り、布に染めていく。「染色の面白さは、技法を超えて偶然生まれる表現です。この世界は分業が多いのですが、僕はひとりでやるのでさまざまな技法を身に付けてきました。自分らしい表現を生かした作品を作っていきたいですね」と北野さん。ジャンルは違えど、妻が同じく作家であり、工房を共にすることの意義を尋ねると「作品に対する正直なコメントは貴重です。言いにくいことも、言ってくれる。一番の相談相手であり、作家仲間です」と静かに微笑んだ。
いっぽう、布ではなく糸を使った造形に惹かれ、糸作家を名乗るようになった三浦さん。彼女の作品は、ナチュラルカラーの中にアクセントを配した色使いが多い。「目に映る自然の風景の中にある色合いからイメージを膨らませ、糸を通して自分だけの新たな彩りを生み出しています」と三浦さん。二人の男の子の母親でもあり、日々の暮らしとともにある創作活動だが、工房で織機に向かうときは無心になるという。「その時の気持ちやコンディションが織りの風合いに現れるんです。たとえば焦っていると、微妙に目が詰まってしまう。だから織機の前では、心静かに糸とのみ向き合うようにしています」。最後に、北野さんの前述のコメントを伝えると「アドバイスしても聞かないんですよね…。なんだ、その自信は!って思うんです」と、三浦さんは優しい笑顔を浮かべた。
自然に抱かれ、互いを静かに支え合いながら、「染め」と「織り」という異なる世界観の作品を、二人はこの工房でこれからも生み出し続けていく。
染織工房 someori kobo
染色家 北野静樹
糸作家 三浦奈巳
きたのしずき 1974年生まれ、兵庫県神戸市出身
みうらなみ 1974年生まれ、岡山県玉野市出身
大阪芸術大学工芸学科染織コースで、北野さんはろうけつ染めを専攻、三浦さんは織り物を専攻。卒業後は共に大阪市立クラフトパークで指導員などを務め、2004年に結婚。2006年、出産を機に三浦さんの地元・玉野市に帰郷し工房を構えた。創作活動の傍ら、染色教室(JR宇野駅前の『駅東創庫』にて)や織物体験教室も開講している。
Information
染織工房 someori kobo
- 住所
- 玉野市迫間2268-1
- 電話番号
- 0863-71-2131
- HP
- http://someorikobo.com/
ハレマチ特区365
『イオンモール岡山』の5階にある、晴れの国おかやまに息づく、ものづくりのスピリットを体感・体験できる空間。岡山県内を中心に、せとうちエリアの作家や職人、企業による雑貨、ウェア、ストックフード&器など、1000種類以上のアイテムをラインナップ。作家によるワークショップをほぼ毎日行なうスペースも常設。
Information
ハレマチ特区365
- 住所
- 岡山市北区下石井1-2-1 イオンモール岡山5階
- 電話番号
- 086-206-7204
- 営業時間
- 10:00~21:00
- 休み
- なし
- 駐車場
- 約2500台(有料)
- HP
- https://hare365.com/