【特集】人生100年時代に、今できる健康マネジメント
倉敷中央病院
【エリア】倉敷市

清川晶 先生
■専門分野/周産期、女性ヘルスケア
30代が老化の第1段階。体と心の変化に耳を傾けて。
30~40代は、人生100年時代を見据えた健康の基盤を築く重要な時期。スタンフォード大学の研究では、「34歳前後が老化の第1段階」とされており、特に女性は30代後半からエストロゲンという女性ホルモンの分泌量が減少し始める。エストロゲンの減少は、カルシウムの吸収率低下による骨粗しょう症の増加や、肌のコラーゲン生成量減少による乾燥やたるみを引き起こす。
そのほか、基礎代謝や筋力の低下による、体重増加や姿勢悪化にも繋がっているといわれている。また、30~40代は仕事や家庭での責任が増え、ストレスが蓄積しやすい時期。「疲れやすい」、「疲れが取れにくい」という症状を感じる人も少なくない。厚生労働省がまとめた「令和元年国民健康・栄養調査報告」では、ヘモグロビン値が基準を下回っている女性の割合は約13%となっており、10人にひとりは貧血という結果が。
貧血は、倦怠感、集中力低下を引き起こす。特に過多月経や月経困難症がある場合は、早めに婦人科受診してみよう。
女性特有の健康課題が日本経済に与える大きな影響。
エストロゲンの減少や更年期症状に伴う健康問題は、労働生産性の低下に直結するといわれている。2024年2月の経済産業省ヘルスケア産業課の調査からは、女性特有の健康課題による経済損失の深刻さが現れている。
月経随伴症による欠勤やパフォーマンス低下は約0.6兆円、更年期症状に起因する離職や追加採用の負担は約1兆円もの経済損失があると試算されている。そのほか、婦人科がん、不妊治療などを含めた損失額の推計は、年間約3.4兆円にものぼるという。
自分の健康を後回しにしてしまいがちな働き盛りの女性こそ、長く健康に働くために定期検診を通じた不調の早期発見が重要だ。
未来の健康を守る、「プレコンセプションケア」とは。
現在、多くの女性が妊娠や出産を経験する30~40代では、産前産後の体調管理がとても重要。例えば、妊娠中の糖尿病や高血圧は、ママや赤ちゃんの重症化や早産に繋がることがあり、産後に改善しても、将来、糖尿病や高血圧、脳梗塞などの生活習慣病のリスクを高める。さらに、産後はホルモンバランスの乱れから心身に不調が出やすい時期なので、無理は禁物だ。
現在、WHOは「プレコンセプションケア」を提唱している。妊娠前からのケアを意味するプレコンセプションケアは、妊娠を計画しているかどうかにかかわらず、思春期前から生殖可能年齢のすべての人を対象とした、将来の妊娠や出産に備える健康管理の概念だ。実践例として、定期健診やバランスのとれた食生活だけでなく、適度な運動や、ストレス管理などが挙げられる。30~40代の段階でプレコンセプションケションケアを意識することは、自分自身の健康だけでなく、将来生まれてくる家族の健康基盤を築くためにも大きな意義がある。
「妊娠・出産は女性だけのものと捉えがちですが、男性の健康も大きく関わっているといわれていて、男女ともが健康に対して意識を高める必要があります」と、清川先生は警鐘を鳴らす。
男女ともに意識するべき、30~40代の健康マネージメント。
女性だけでなく、男性も30~40代で基礎代謝が徐々に低下し、メタボリックシンドロームや生活習慣病へのリスクが高くなる。また、仕事での責任も増え、ストレスや睡眠不足が精神的・身体的な健康に影響を与えるという。
少し先の未来を笑顔で過ごすためにも、男女問わず有酸素運動や筋力トレーニングによる適度な運動が効果的。有酸素運動については、週2回30分以上を目安に取り組むことが理想的だ。また、脂の少ない赤身肉、野菜、魚を中心に、塩分を控えたバランスのとれた食事も重要。没頭できる趣味や家族との時間ここまめに確保して、ストレスの軽減・発散に取り組むことも忘れずに。
女性は貧血や月経トラブル、妊娠期の健康イベントの体調管理が欠かせない。プレコンセプションケアを実践し、健康な体づくりを意識することで、将来の健康リスクを大幅に軽減できる。人生100年時代を楽しく過ごすために、今日から心身のメンテナンスを始めよう。

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