降水量1mm未満の日が日本で一番多く、災害も非常に少ないことから、映画やドラマの撮影スポットとして注目されている岡山県。市街地からクルマで30分圏内に、海、山、古い街並みなどがあり、田舎の風景や島、高原など豊富なロケーションがそろっています。
「晴れの国岡山は、日本のハリウッドだね!」
そんな声が高まって、誰が呼んだか「HALLE WOOD(ハレウッド)!」。
「HALLEWOOD」の立役者であり、全国の映像制作会社が頼りにするというすご腕コーディネイターの妹尾真由子さんが、知られざるロケの裏側やさまざまなエピソードを通じて、岡山の魅力を紹介していく連載です。
《連載第32回》映画『カオルの葬式』のロケ地探し
皆さん、こんにちは。
岡山県フィルムコミッション協議会の妹尾真由子です。
この暖かさはいつまで続くんだろう…と思っていたら、急に気温が下がり、突如として冬が訪れましたね。
半袖から急にダウンジャケットを着るような気温に、体調を崩しやすくなっていますので、皆さんも気をつけてお過ごしください。
さて、今日は2023年12月8日(金)から岡山特別先行上映が決定した、岡山市出身の湯浅典子監督の長編映画『カオルの葬式』についてお話ししたいと思います。
この作品は、あるひとりの女性・カオルの葬儀を巡って繰り広げられる人間模様を描いています。
カオルが亡くなり、残された遺書に「ふるさと岡山のお寺で葬儀を執り行い、その喪主は元夫に託す」ということが記され、元夫と残された一人娘が、カオルの葬式を通じて新たな人生の一歩を踏み出すといったストーリーです。
湯浅監督が、親友との別れを実際に経験したことをきっかけに企画を立ち上げ、日本のドメスティックな「葬式」を舞台に「人を送る」ということを正面から描いています。
監督は最初から「葬儀の後にお墓を建てるのか」「お墓には入らず散骨するのか」など、「それぞれがそれぞれの考え方でいい。この映画を通じて、『生と死』を見つめるきっかけになれば」と話されていました。
企画自体は2017年にスタート。2019年から本格的に準備を進め、コロナ禍の影響もあり、昨年やっとロケをすることができました。
本作は、日本を中心としたスペインとシンガポールの国際共同制作で、「岡山から世界へ」という信念のもと、監督自身も大きな挑戦をされています。
私が監督とお会いしたのは、2020年11月頃だったように思います。
最初はまず、メイン舞台となる「お寺」と、「雰囲気のある駅」、「まっすぐのびた道」などの情報を収集するところからご一緒させていただきました。
地域のFC担当者がたくさんの地元情報を提案してくれて、1回目のロケハンは、2021年1月末に行いました。
雪が降る寒さのなか、5日間で寺を5カ所、駅を9カ所、道を3カ所ほど回りました。
一つひとつのお寺でご住職とお話をさせていただき、お寺の成り立ちから、葬儀、地域の風習など、たくさんの話を聞かせていただきました。
そこから半月も経たない頃、第2弾ロケハンとして一日で5カ所のお寺を回って、境内から本堂、居住スペースも含めて見学させていただきました。
それぞれのお寺の特徴はもちろんのこと、ご住職の皆さんのお話がとても面白く、もっと聞いていたいという欲が出てしまうなかで、要点を押さえながらも、次のスポットへスムーズに監督をお連れするといった感じで見て回りました。
早い段階で、監督がここは雰囲気に合うかも…と胸を躍らせて有力候補と挙げていたのが、今回のロケ地になった県最北の鏡野町にある「宝樹寺」。
ここには、地獄絵図が掛かっています。
閻魔様が人をゆでている場面など恐ろしく感じる絵にもかかわらず、色鮮やかで怖さよりも「きれいさ」の方が勝って見えるような絵図です。
また本堂の鮮やかな色合いとは反対に外は雪景色で、まるで時が止まったような静けさとのギャップに魅了されました。
各所を移動中に監督といろいろな話をして、思い描く作品のイメージを存分に聞きながら、「それならここは?」と寄り道して提案しながらロケハンを進めていきました。
ロケ地探しと同時に、監督は映画を制作するための地元の方々からの応援や資金を集めるために日々奮闘されていました。
毎日、自転車で移動しながら県内の企業へ出向き、会社から会社へ、人から人へとご縁を繋いでもらいながら、自分の想いを真正面から伝え、作品を応援してくれる人を探す日々を送られていました。
常にパワフルに取り組む姿に、私も背中を押されました。
ロケのお話までたどり着かなかった今回…。
ぜひ劇場でご覧いただき、それぞれの感じ方でいいので、作品を楽しんでいただければと思います。
私はすでに試写で拝見したのですが、正直にいうと、「私には難しい作品だった」と感じました。
もう一度観たら違った感情が沸くかもしれないという期待をしながら、上映期間中に改めて足を運んでみようと思います。
最後に、「面白いところ、泣けるところ、分からないところ、面白い作品だった、つまらない作品だった…、感じ方は人それぞれ自由でいい」という監督からのメッセージを代弁させていただきます。
それを感じてもらうために、ぜひ劇場へ足を運んでみてください。
この作品をいち早く観られるのは岡山だけです。
12月8日(金)より『岡山メルパ』で上映されますのでぜひ!
岡山県フィルムコミッション協議会の詳細は下記から。
【Profile】
岡山県フィルムコミッション協議会
妹尾真由子
矢掛町出身。2013年に矢掛町入庁。産業観光課での勤務時代には、ご当地キャラ・やかっぴーとともに町の観光PRを担当。2016年より岡山県観光連盟に出向。2018年より岡山県フィルムコミッション協議会の専任スタッフに
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