降水量1mm未満の日が日本で一番多く、災害も非常に少ないことから、映画やドラマの撮影スポットとして注目されている岡山県。市街地からクルマで30分圏内に、海、山、古い街並みなどがあり、田舎の風景や島、高原など豊富なロケーションがそろっています。
「晴れの国岡山は、日本のハリウッドだね!」
そんな声が高まって、誰が呼んだか「HALLE WOOD(ハレウッド)!」。
「HALLEWOOD」の立役者であり、全国の映像制作会社が頼りにするというすご腕コーディネイターの妹尾真由子さんが、知られざるロケの裏側やさまざまなエピソードを通じて、岡山の魅力を紹介していく連載です。
《連載第30回》映画『リゾートバイト』のロケ地編
前回のコラムでご紹介した、9月15日(金)から全国公開が始まった映画『ミステリと言う勿れ』。
皆さんはご覧いただきましたでしょうか。
公開が始まってから約半月。
各所から「ドラマの時からファンで、公開を楽しみにしていたが、映画もすごくおもしろかった」「旧野﨑家住宅や鷲羽山スカイラインなど岡山のロケーションが盛りだくさんで驚いた」「エンドクレジットのロケ支援のところで岡山が一番に出てきて、すごい」など、さまざまなお声をいただきました。
ドラマを観ていない方も、映画だけでも楽しんでいただけます。
まだの方は、ぜひ劇場でご覧ください。
さて、現在『ミステリと言う勿れ』が盛りあがっているさなかですが、今回は、全国の「イオンシネマ」などで10月20日(金)から公開になる、映画『リゾートバイト』についてお話しします。
「リゾートバイト」でネット検索すると、全国各地のリゾートバイトの求人がヒットしますし、映画作品として「リゾートバイト」と聞くと、明るい青春ドラマやひと夏の恋愛ドラマなどが頭に浮かんでくるかもしれません。
でも、映画『リゾートバイト』は、ホラー映画なのです。
過去に、心霊スポットや廃墟を巡るようなWEB関連の番組のお問い合わせをいただいたことはありましたが、映画やドラマのホラー系は初めてでした。
私自身、元々ホラーは大の苦手で、まったく触れてこなかったジャンルだけに、最初にロケーションの問い合わせをいただいた時には「とうとう来たか」と身構えて臨みました。
ただ当時、プロデューサーからは「子どもからお年寄りまでみんなが楽しめる初心者向けホラー作品ですので、妹尾さんも安心して観られる作品になると思います」と、しきりに言われたことを覚えています。
映画『リゾートバイト』は、怖い話投稿サイトの「ホラーテラー」に投稿され、その後、「2ちゃんねる」に再投稿されたことをきっかけに、怖さと秀逸な展開で一気に話題を集めた「リゾートバイト」が映画化されたものです。
問い合わせの際に提出いただいた企画書の表紙にあった階段を見たときに、ピンと来たのが、今回のメインロケ地となった笠岡市白石島の旅館「華大樹」。
問い合わせのある少し前に、私が勤めている岡山県観光連盟の別の職員が「華大樹」へ取材に行っており、偶然にもその画像を見ていたことで、「ここ、いける!」と直感しました。
ただ、船で島に渡らないといけないという利便性などを、制作側がどのように捉えるかといったところは賭けでした。
白石島以外にも、海沿いを中心に、主人公たちがリゾートバイトする旅館やホテルと海沿いにある雰囲気のお寺などの情報を集め、提案し、2023年2月に、監督とプロデューサーに1泊2日のロケハンに来ていただいたのです。
その2日間で、県東部から西部へ移動しながら、施設だけでも9カ所ほど見ていただきました。
なかでも白石島のロケハンは、船の時間に合わせるとわずか2時間半の滞在という制限があり、島の雰囲気や「華大樹」を含めた宿泊施設、お寺などをやや早歩きで歩いて回りました。
あいにくの雨天ではあったものの、外を歩くタイミングだけは降っても小雨という、天気までも味方につけてのロケハンとなったのです。
特に「華大樹」にお連れした際は、監督もプロデューサーも「この階段、イメージとそっくりじゃないですか!」と興奮気味に見て回られました。
さらに、島内の「開龍寺」というお寺に行った際には、巨石の下に建てられた大師堂を見た監督が、動画と写真を撮りまくる興奮状態に。
「監督、船の時間ですよ~」と声掛けをしながらも、時間ギリギリまでしっかり見ていただくことができました。
この時は外観だけだったのですが、それでも、この巨石の迫力とその下に建てられた大師堂の神秘的な雰囲気に圧倒されていました。
船での移動が必須の島でのロケは、移動に加え、宿泊や食事など、本土に比べかなりハードルが上がってしまいます。
このような条件でありながらも、その後、ロケ地候補として選んでいただけたのは、2日間という短い時間ながら、監督とプロデューサーに岡山のロケーションの「底力」をしっかりと感じてもらうことができたからではないかなぁと自負しております。
候補地に選んでいただいたということは、「ホラー映画のロケ地」になるということで、島の方々へきちんと説明を行い、理解を得る必要がありました。
やはり「ホラー=怖い」という印象があるため、そのロケ地になることで、「白石島自体にマイナスな印象を与えてしまうことになるのでは…」と心配する声があがる可能性もあります。
そこで島の方々が集まる会議にプロデューサーと一緒に参加させていただきました。
作品の説明と併せて、「ホラー映画のロケ地=マイナスイメージ」ということではなく、作品を通じて白石島を知ってもらえるきっかけにもなるし、観光も含めた島の魅力をしっかり発信していくことを約束しました。
皆さんにも最後には「楽しそう」と納得していただき、ご協力もいただける体制を確保することができたのです。
会議の日、島に来られなかった監督も、島の方々の反応がかなり気になっており、プロデューサーのところに何度も連絡が入っていました。
「OKいただけた」と報告した際は、安堵とともにすごく喜ばれていました。
その後のメインロケハンからロケ、プロモーションに至るまでのお話は、次回のお楽しみということで…。
県内では、「イオンシネマ岡山」で10月20日(金)から公開が始まります。
映し出される風景はすべて白石島です。
ホラーが苦手な方もご安心ください! 笑える要素も盛りだくさんです。
ぜひ、先が読めない86分間を劇場で体感していただき、ロケ地となった白石島も訪れていただきたいと思います。
岡山県フィルムコミッション協議会の詳細は下記から。
【Profile】
岡山県フィルムコミッション協議会
妹尾真由子
矢掛町出身。2013年に矢掛町入庁。産業観光課での勤務時代には、ご当地キャラ・やかっぴーとともに町の観光PRを担当。2016年より岡山県観光連盟に出向。2018年より岡山県フィルムコミッション協議会の専任スタッフに
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