降水量1mm未満の日が日本で一番多く、災害も非常に少ないことから、映画やドラマの撮影スポットとして注目されている岡山県。市街地からクルマで30分圏内に、海、山、古い街並みなどがあり、田舎の風景や島、高原など豊富なロケーションがそろっています。
「晴れの国岡山は、日本のハリウッドだね!」
そんな声が高まって、誰が呼んだか「HALLE WOOD(ハレウッド)!」。
「HALLEWOOD」の立役者であり、全国の映像制作会社が頼りにするというすご腕コーディネイターの妹尾真由子さんが、知られざるロケの裏側やさまざまなエピソードを通じて、岡山の魅力を紹介していく連載です。
《連載第13回》映画『とんび』編 ④
みなさん、こんにちは。岡山県フィルムコミッション協議会の妹尾真由子です。
映画『とんび』が全国公開されるまで残り2週間を切り、岡山県内各所でパネル展の開催などのプロモーションも始まって、各地で盛り上がりを見せています。
「とんび編」シリーズの最終回となる今回は、撮影にご参加いただいたエキストラさんたちにスポットを当てて、撮影当時を振り返ってみたいと思います。
今作では地元の皆さんを中心に、のべ500名以上の人たちにエキストラとして参加していただきました。
本作では昭和の時代が主な舞台となるため、衣装や小物、ヘアセットなどの準備に時間がかかることに加えて人数も多く、通常に比べてより時間が必要になるため、エキストラさんたちの朝は早いことが多かったですね。
朝晩冷え込みが厳しい季節の早朝暗い時間に集合してもらい、まずは名簿で名前をチェックして、検温と消毒をして、参加同意書に記入をして…といった手順で準備を進めていくのですが、ときには手がかじかんで動かなくなる時もありました。
そうした寒さの中、時代の変化だけではなく季節の変化も演出するため、夏のシーンを撮影した時は本当に大変だったことを思い出します。
瀬戸内市にある『旧錦海倉庫』では、ヤスの勤め先である『瀬戸内通運』の設定で撮影を行いました。
エキストラの皆さんは、冬にもかかわらず作業員としてタンクトップや半袖の作業着姿になり、夏の日焼けや入れ墨などのメイクを施しました。
さらに、夏に汗をかきながら働いているシーンを演出するため、霧吹きで水をかけて湿らされ、木箱を運びまくるという演技を何度も繰り返していました。
スタンバイのときには鳥肌を立てながらも、いざ本番で動き出したら徐々に体も温まってくるのか…最後まで気合で乗り切ってくれました。
出演をしない私は防寒の上着を着ているので、皆さんには本当に申し訳ないなという気持ちになりました…。
また、プラットホームに汽車が到着して荷物を降ろすシーンでは、美咲町の『柵原ふれあい鉱山公園』で撮影したものを合成するため、ここでもタンクトップ姿の男性エキストラさんたちが、とてつもない気合でシーンを演じられていました。
県北の朝は瀬戸内側よりも寒さが厳しくさらに過酷な状況で、少しでも時間が空くと用意されたストーブの周りに人が集まります。ソーシャルディスタンスを保ちながら体を丸め、皆さんで暖をとっている姿がとても印象に残っています。
ぜひエキストラさんも大活躍している、冒頭の活気ある運送会社のシーンにもご注目ください。
ほかにも金光町大谷地区では、ヤスたちが住む『みゆき通り商店街』のシーン撮影のために、老若男女を問わず多くの地元住民の皆さんにご参加いただきました。
『旧大島東小学校』で撮影したアキラの小学校の卒業式のシーンでは、地元の小学生や先生をはじめ急遽駆り出された市役所職員の方々が参加。
『笠岡西中学校』でのアキラ高校時代の野球部練習シーンでは、近くの高校の野球部がエキストラとして参加するなど、『岡山県フィルムコミッション協議会』が運営している「エキストラ人材バンク」からだけでなく、多くの地域の人たちに参加していただくことができてよかったです。
私自身は撮影時に、現場の雑踏整理や次のロケ現場の準備&調整、エキストラの管理&調整、劇用車(映画の中で使用する車両)の運搬補助などさまざまな役割を担っており、ゆっくり現場立ち合いすることができませんでしたが、地元の窓口担当者や地域の皆さんがしっかりフォローしてくださったので、大きなトラブルもなく撮影を終えることができました。
シナハンから始まり今日のプロモーションに至るまで、3年近くも本作品に携わらせていただきました。
撮影時は大規模な撮影の実施に加えて未知の感染症に対する不安との戦いもあるなか、地元の方々のご理解とご協力をいただいて無事に公開を迎えることができたことを、本当にうれしく思っています。そして感謝の気持ちでいっぱいです。
それぞれの立場や視点からさまざまな意見を交わし、撮影のときもプロモーションを実施する際にも、最善の方法を一緒に模索して協力していただいた地元の方々。そして、作品を活用した当県及び地域のプロモーションについて、ともに寄り添って準備&調整をしてくださった配給会社『KADOKAWA』の皆さまに、この場を借りて御礼を申し上げます。
そしてこれを読んでくださっている皆さん。映画『とんび』を鑑賞された際には、「家族の絆」や「親子の絆」を感じるとともに、ロケ地・岡山の風景の魅力に浸っていただいて、ぜひとも「ロケ地巡り」も楽しんでいただきたいと思います。
「ロケ地巡り」の際には、ぜひ地元の方々とも交流され、エキストラで参加した時の感想や、ロケの時のこぼれ話などを聞いてみてはいかがでしょうか?
作品データ
【タイトル】
とんび
【劇場公開】
2022年4月8日(金)
【ストーリー】
昭和37年、瀬戸内海に面した備後市。運送業者で働くヤス(阿部 寛)は、今日も元気にオート三輪を暴走させていた。
愛妻・美佐子(麻生久美子)の妊娠に嬉しさを隠せず、姉貴分のたえ子(薬師丸ひろ子)や幼馴染の照雲(安田 顕)に茶化される日々。幼い頃に両親と離別したヤスにとって家庭を築けるということはこの上ない幸せだった。
遂に息子・アキラ(北村匠海)が誕生し「とんびが鷹を生んだ」と皆口々に騒ぎ立てた。しかしようやく手に入れた幸せは、妻の事故死で無残にも打ち砕かれてしまう。
こうして、父子二人きりの生活が始まる。母の死を理解できないアキラに、自分を責めるヤス。和尚の海雲(麿 赤兒)は、アキラに皆が母親代わりなってやると説き、雪が降っても黙って呑み込む広い海のようにアキラに悲しみを降り積もらすな―「お前は海になれ」と、ヤスに叱咤激励するのであった。
親の愛を知らずして父になったヤスは、仲間達に助けられながら、我が子の幸せだけを願い、不器用にも愛し育て続けた。
そんなある日、誰も語ろうとしない母の死の真相を知りたがるアキラに、ヤスは大きな嘘をついた──。
【キャスト】
阿部 寛
北村匠海 杏 安田 顕 大島優子
濱田 岳 宇梶剛士 尾美としのり 吉岡睦雄 宇野祥平 木竜麻生 井之脇海 田辺桃子
田中哲司 豊原功補 嶋田久作 村上 淳
麿 赤兒 麻生久美子 / 薬師丸ひろ子
【スタッフ】
原作:重松 清「とんび」(角川文庫刊)
監督:瀬々敬久 脚本:港 岳彦 音楽:村松崇継
主題歌:ゆず「風信子」
【県内撮影時期】
2020年11月~12月
【県内ロケ地】
・浅口市(金光町大谷、青佐鼻海岸)
・笠岡市(金浦地区、西中学校、金浦幼稚園、旧大島東小学校、原田荘、神島の道)
・倉敷市(海蔵寺、旧玉島第一病院、玉島の道、ドラム缶橋、呼松漁港、呼松神社、沙美海岸)
・瀬戸内市(錦海倉庫)
・備前市(柳青院)
・美咲町(柵原ふれあい鉱山公園)
・岡山市(東湯)
・玉野市(由良病院)
岡山県フィルムコミッション協議会の詳細は下記から。
【Profile】
岡山県フィルムコミッション協議会
妹尾真由子
矢掛町出身。2013年に矢掛町入庁。産業観光課での勤務時代には、ご当地キャラ・やかっぴーとともに町の観光PRを担当。2016年より岡山県観光連盟に出向。2018年より岡山県フィルムコミッション協議会の専任スタッフに
<消費税率の変更にともなう表記価格についてのご注意>
※掲載の情報は、掲載開始(取材・原稿作成)時点のものです。状況の変化、情報の変更などの場合がございますので、利用前には必ずご確認ください
※新型コロナウイルス感染拡大防止の対策として、国・県・各市町村から各種要請などがなされる場合がございます。必ず事前にご確認ください
※お出かけの際は、ソーシャルディスタンスの確保やマスクの着用、手洗いや消毒など、新型コロナウイルス感染予防の対策への協力をお願いします