「岡山ラーメン★エクスプローラーズ」が大復活。
ラーメンが大好きな大盛りアニキとバリカタ姐さんがコンビを結成。毎月気になるテーマを掲げ、無理やり独断で3選します! そして再び岡山のラーメン界に参戦!←ダジャレ
アニキがチョイスし、姐さんがお店に突撃取材! 選びますとも、行きますとも、聴きますとも!
店主やスタッフが普段は話さないようなことをインタビューで引き出して、岡山のラーメンのさらなる魅力に迫ります!
《連載第13回》今回のテーマは「岡山王道スタイル 鶏ガラ醤油の中華そば」
ワタクシの中で「岡山(の)ラーメン」といえば、豚骨醤油の味わいでした。
しかし、ここ最近、多くのラーメンファンの皆さんとやりとりする機会が増え、「『鶏ガラ醤油の中華そば』こそが岡山(の)ラーメンの原点では?」というご意見を伺うことがたびたびあったのであります。
「鶏ガラ醤油」って、基本あっさりじゃん。尾崎豊の歌声の如く、透明感がありつつも奥深くってさ…。岡山で主流のラーメンって「濃いいもの」って、勝手に思い込んでましたよ。
「鶏ガラ醤油」ってクラッシックな佇まいであっさりテイストが主流。「懐かしの中華そば」という言葉がぴったりきます。
もちろん、こういう定義づけは安易にできるものではなく。むしろ多様な種類のラーメンが混在しているからこそ「岡山(の)ラーメン」なんて言ってるわけですから、答え合わせなんかできるわけはないんです。
豚骨と鶏ガラのブレンドなんて派生形も普通にありますしね。そもそも「(の)」ってなんだよ、書いててもまどろっこしいよ!
しかしながら「鶏ガラ醤油こそが岡山ラーメンの源流」というのが、あのスカイゴッドなレジェンド店の影響下にあっての発言だということは容易に想像できるのですが…。
それ以上のことは岡山のラーメンの歴史を紐解かないと無理!
そいえば「分からないことがあれば、詳しい人に聞け」というのが、亡くなった爺ちゃん・ヤスタロウの教えでした。
なので、「無理だ無理だ」とぼやくのではなくて、マイジジイ・ヤスタロウの教えに従ってアスクヒム。岡山におけるラーメンの歴史とか成り立ちに詳しい人を探して聞いてみることにしました。
早速連絡してみたのは、あの「岡山ラーメン学会」の黒爺会長。「こっちも『爺』さんだよ!」 とか呑気なこと言ってる場合ではない。いきなり相手がオオモンすぎだって!
しっかし黒爺会長。
ワタクシのやんちゃな問いに対しても「これは重要な設問! ありがとうございます」と、いつものように非っ常~に丁寧なご対応。紳士だよ!
そして、長い巻物状の年表を広げるかの如く、詳しいにも程がありすぎな説明をしてくださったのです。
「岡山では終戦後、豚骨醤油の細麺ストレートを源流として、昭和45年(1970)『天神そば』の出現によって鶏ガラメインの店が増えました」。
「戦後から25年間は、中華そばは主に食堂で提供されていたのです。それが専門店化するとともに、『天神そば』とそれに倣う店によって街全体が鶏ガラメインにシフトしていきました」。
確かに元々「豚骨醤油」が主流ではあったが、「スカイゴッドな名店の誕生」というエポックメイキングな出来事を背景に変化が生じてきたとのこと。「以後20年間で岡山市内の約半数が鶏ガラベースの味わいになった…」なんてなお話も。まさしく王道になっていったと!
そりゃ、「鶏ガラ醤油こそが、岡山(の)ラーメン」という声が出てきてもおかしくない状況ですよ。
「昭和45年(1970)に産まれた人は、50歳になっています。豚骨メインだった時代を知っている人が少数派になりました。それが今でいう『岡山ラーメン的なもの』かもしれませんね」と会長はさらり。なるほど、納得しました。
ちなみに今回ご紹介する3軒のうち2軒は倉敷市ですが、岡山県の西部は笠岡市を中心に養鶏が盛んで、廃鶏を利用した「笠岡ラーメン」の文化が定着し、広く知られています。県内でも地域によって違いがありますね。
ワタクシの中で「倉敷は鶏ガラ」というイメージがあったのですが、その辺、地理的な側面から捉えてみても非常に面白いです。地域性は確実にあると思います!
戦後すぐから多様性を持って進化してきた「岡山(の)ラーメン」。中でも大きな存在感を示した「鶏ガラ醤油」のラーメン。今回は、そんな味わいを継承するお店をご紹介します。せっかくなので、黒爺会長推薦のお店も入れさせていただきました(どのお店かはひみちゅ)。
それでは姐さん、あとは任せた。行ってらっしゃい!
お元気ですか? 現場のバリカタ姐さんです。
コクがあるのに後口あっさり、飽きのこない味が魅力の鶏ガラ醤油の中華そば。あの澄み切ったスープの中には、誰もがノスタルジーを感じる変わらない美味しさが溶け込んでいます。
複雑で個性豊かなラーメンも美味しいけれど、醤油ベースのホッとする味わいにも癒されますよね。今回は、昔ながらの中華そば文化を大切に受け継ぐお店を、大盛りアニキがチョイスしてくれましたよ!
中華蕎麦かたやま 本店
王道中華そばへの深い敬愛を感じる一杯。個性を磨きつつ、ブレない旨さを追求。
中華そばの名店として、岡山のラーメン好きにはすっかりおなじみとなった『中華蕎麦かたやま』。岡山市、倉敷市に3店舗を構える人気のお店です。
2004年に創業した時はバリエーション豊富なラーメンで評判を集めたものの、約10年前から今のスタイルへと方向転換。
あっさり系の鶏ガラ醤油スープで勝負をかけてからは、その上品な味わいにほれ込むファンが続出し、連日多くのお客さんで賑わっています。
今回お伺いしたのは岡山市南区にある本店。2号線バイパス沿いという好立地です。
本店は40席もある大バコの空間で、天井が高く開放感いっぱいです。カウンター&大小のテーブルを程よく仕切った変化のあるレイアウトもユニーク。あちこちに飾られた欄間(らんま)や格子窓などの建具や工芸品も気になりますね。
和風建築ならではの華やかさと味わい深さがあり、席ごとにいろんな装飾品が目を楽しませてくれます。
「3軒ともに、オーナーが集めた古美術品を内装に生かしています。本店が一番装飾品の数が多いですね」
答えてくれたのは、『中華蕎麦 かたやま』の片山オーナーの奥さま。本店は奥さまが店長を務め、約8名の元気な男性スタッフとともに切り盛りしています。
厨房という司令塔からスタッフの動きを見守る眼差しは、厳しいながらも「みんなのお母さん」的な温かさもありますね。
「スタッフはもちろん、お客さんの様子にも目を光らせてますよ(笑)。丹精込めたラーメンと誠意のある接客で、お客さんに楽しい食事の時間を過ごしてほしいです」(奥さま)
『かたやま』ではお客さんを待たせず、素早く当たり前に旨いラーメンを出すのがモットー。「行列をつくらない」ことを理想に掲げ、シンプルにラーメンを楽しめるお店づくりを心がけているそうです。
香り高い鶏ガラ100%のクリアスープ。優しいコクとチャーシューの旨みが絡み合う。
注文したのはチャーシュー、ネギ、玉子、かまぼこ、もやしが乗った「中華そば」780円。スープの下に沈ませた中細麺を持ち上げてみると、鶏油の香りがふわっと広がり、五感で豊かな風味を感じられました。
澄んだスープには、一杯に鶏ガラ一羽分という贅沢な鶏ダシの旨みと、醤油ダレのコクがしっかり溶け込んでいます。
豚肉のバラとモモを使ったチャーシューは、しっとりして食べ応えのある食感。店主の奥さんは自粛中にチャーシューの美味しさを再認識したそうです。
「余ったチャーシューを家で焼き飯にしたら、子どもたちが喜んで食べてくれたのがうれしくて。自分はこんな美味しいものを作ってたんだ」と感じたことで前向きな気持ちになれたのだとか。
素材選びや仕込みの入念さが伝わる一杯。岡山ラーメンの老舗の味をリスペクトしながら、独創的な『かたやま』ならではの味わいを追求しています。
ブレない中華そばのよさを守りながら、日々美味しさをアップデートする姿勢が素晴らしいですね。
「日々積み重ねてきた年月こそが、みんなに愛される老舗店の財産だと思う。同じ年月を続けないと、あの価値は結局越えられないのかも」と奥さま。
「憧れの店を自分たちなりに追い続けながら、喜ばれる味を届けていきたい。不安なことも多い世の中だけど、一杯のラーメンでホッと心を満たしてもらえれば何よりです」
鶏中華 麺や寛
2020年9月に移転オープン。味もサービスも進化中の中華そば店。
『鶏中華 麺や寛』は、今年の2020年9月に倉敷市中島に移転オープン。『倉敷紀念病院』のすぐ近くにあり、国道2号線バイパスからもすぐの立地です。
17年前に脱サラして、その後ラーメン店をはじめたという店長の栂野さん。コンビニ経営を14年ほど経験した後、紆余曲折ありながらも『麺や寛』をオープンし、倉敷市水江で2年ほど営業を行いました。
以前と比べて席数も増えて、より気軽に立ち寄れるお店にバージョンアップしています。
会社員時代からラーメンフリークだったという栂野さん。
「自分にとって想い出深いラーメンといえば、澄んだ赤身のある醤油スープ。派手ではないけど『しみじみと旨い』と思えるような一杯を作りたい」と考え、昔ながらの中華そばを追求することに。言わずと知れた、城下のレジェンド店に触発されたという店主が、独自のラーメン作りをスタートさせました。
最初は理想の味を再現できず苦労をしたそうですが、3年ほど研究を重ねた末に、旨みたっぷりの「鶏中華」を完成させました。
ラーメンは鶏ガラ醤油の「鶏中華」と、いりこを使った「煮干し醤油」の二本柱。煮干しも気になりますが、今回は一番人気の「特製 鶏中華」を注文してみました!
トロ火で炊いた「肉感」溢れるスープ。味の決め手はブレンドしょう油にあり!
基本形の「鶏中華(730円)」に半玉とチャーシュー1枚が追加された「特製鶏中華(780円)」は、ほどよいボリューム感で年齢問わず注文の多い一杯だとか。
クリアなスープからはしょう油と鶏油の香りがふわっと広がり、一瞬にして食欲を刺激します。思わず深呼吸~!
ちなみに「鶏中華」には「濃厚」「あっさり」と2タイプがあり、タレに使うしょう油で味わいを変えているとか。バリカタ姐さんは「濃厚」をチョイスしましたが、コクがしっかりあるのにまろやかで飲みやすい味わいでした。
しょう油は再仕込み、濃口、たまりといった数種を独自にブレンドして、タレの味に深みを出しているそうです。なるほど、味の決め手はしょう油の使い方にあるんですね。
「『麺や寛』の味をつくる上で大事なのが、肉感のある親鳥でダシをとるスープ。いろんな部位の鶏ガラに親鶏のミンチも加えて、ふつふつと弱火で9時間弱ほど火を入れます。ゆっくり炊き込むことで、旨みを最大限に引き出しながら濁りのない澄んだ状態をキープします」(栂野さん)
スープを引き立てる麺は、歯切れのよい食感の低加水麺で、わざわざ関東の製麺所から取り寄せたもの。シンプルながらも力強さを感じる一杯でした。
「オーソドックスな味だけど、しょう油の合わせ方や鶏の炊き方で細かな違いが出る。中華そばもお店ごとに個性があるんです。日によって味が微妙に変わるし、同じものにならないからこそ難しい。まだまだ精進が必要です」と栂野さんは目を輝かせます。
移転オープンという新たな展開を迎え、美味しさもサービスもますます進化する『麺や寛』。今後も目が離せないお店です。
中華そば 劉備
20年近く続く地元密着店。玉島っ子におなじみの実直な中華そば。
倉敷市玉島の西端、浅口市に入る手前の市境付近に位置する『劉備』。この地で20年近く続く中華そばのお店です。
周りは田んぼが広がるのどかな雰囲気で、ひとりでもグループでもふらっと気軽に寄れる気軽さがあります。
ちなみに店名の『劉備』は、中国三国時代に活躍した英雄「劉備玄徳」から付けたそう。「三国志」をご存じの方にはおなじみの名前です。
店名はずいぶんと硬派な印象ですが、お店では若い店長とスタッフさんが温かい接客で迎えてくれました。
軽快に湯切りをするのは店長の高越さん。高校時代に『劉備』でアルバイトしたのがきっかけでこの道に入ったそうです。
たくましい腕とガタイのよさに、思わず「スポーツでもしてるんですか?」と聞いてしまったバリカタ姐さんですが、「特になにもしてませんよ~」と笑顔で答えてくださいました。
忙しいのにすいません! きっと毎日のラーメン作りで鍛え上げた賜物ですね。
高越さんのモットーは、いつも笑顔で元気よく、心を込めてサービスをすること。「お客さんに喜んで帰ってもらうのが一番。基本的なことですが、ラーメンへのこだわりもそのためにある」と話します。
昔から通っているという地元客も多く、昼時や休日は満席になることも。高越店長いわく、「沙美海岸までクルマで10分ほどなんで、海水浴や釣りの後に寄ってくださるお客さんも多いですよ~」とのこと。
海で思い切り遊んだ帰りにラーメン、なんて最高のシチュエーションですね。仕事や遊びの後の疲れた体にキュッと染みる美味しい一杯、私も早速味わってみます。
まろやかな甘みに箸が進む。柔らかいチャーシューも絶品!
頼んだのはスタンダードな「中華そば」600円。お値段もリーズナブルです。
シンプルな具材の中には、見た目からしてトロリと柔らかそうなチャーシューが。豚バラとモモ肉を使うことで、肉の食感と味の違いを出しているそうです。
脂身のトロみとほどけるような肉の柔らかさが絶品。口に運ぶたびにうれしくなる美味しさです。
鶏ダシの旨みが効いたスープは、あっさり感の奥に感じる程よい甘さがポイント。
ザラメを使ってまろやかな醤油ダレに仕上げているとのことで、味わい深いのに重さを感じないバランス感がよいですね。最後の一滴までゴクリと飲み干せます。
麺は『冨士麺ず工房』の中細麺を使い、スープによく絡むコシのある食感に茹で上げています。
『劉備』はラーメンの種類が「中華そば」のみという潔さ。その分、唐揚げや餃子、チャーハン、カツ丼などのサイドメニューも充実しているので、セットにしてバリエーションを楽しむことができます。
「中華そばはもちろん、チャーシューをお持ち帰りされる方も多いんですよ」と店長。
こちらの「チャーシュー切り落とし」は、約200グラム入って350円。味がしっかりと染み込んでいるので、料理の具材や自宅飲みのおつまみにぴったりの一品です。日に寄って数に限りがあるので、購入したい方は事前の確認がベストかも。
地元密着の姿勢と、ホッとする中華そばの味を堪能できるお店です。
まとめ
「懐かし系」中華そばの魅力を再認識した今回、ラーメンファンの心をがっちりつかむ飾らない味には、お店それぞれの「変わらない美味しさ」への工夫と努力があるのだと感じました。各店の味を食べ比べてみるのも楽しいですね。
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