Season 2 第二話/ 鳥好(岡山市)のとり酢とママカリにぎり
東京から岡山に移住してきたライターが、まだ食べたことがない、岡山で愛されているグルメを求めて食べ歩き、行きつけにしたいお店を開拓します!
前回、岡山市街の居酒屋に飲みに行ったワタクシ。普段は18:00ともなると辺りは真っ暗になり、イノシシが闊歩する地域に住んでいるので、久しぶりの飲み屋の雰囲気がとても楽しく、「また飲みに行きたいな~」と思っておりました。
そんなおり、仕事の打ち合わせで岡山市街地に出る機会にめぐまれました。まだ日が高い時間でしたが、このチャンスを逃したら、次回はいつ飲みに来れるか分からないので、前回も情報を提供してくれた飲み好きの友人に電話。すると友人は「16:00から空いていて、ミシュランガイドにも紹介された、安くてうまい大衆酒場がある」と教えてくれました。ワタクシは電話を切るなり、岡山市北区本町にある『鳥好 駅前本店』へとダッシュで向かいました。
『JR岡山駅』から5分ほど歩いたところに、提灯に灯がともったお店を発見しました。お店の外に「ミシュランガイド掲載店」と書かれた看板もあるので、ここで間違いないようです。
時間はジャスト16:00。暖簾をくぐって店内に入ると、「いらっしゃい!」という元気な声に出迎えられました。広い店内にはまだ誰もお客さんはおらず、ワタクシが一番乗りのようです。
1人だったので、テーブル席ではなく、店の入り口から奥まで一直線に伸びている長いカウンター席に着席。目の前には、日替わりの大皿料理が並んでおり、どれもおいしそうで食欲をかき立てられます。
まずは飲み物から。「最初の一杯目はビール」と決めているので、瓶ビールの「キリン一番搾り」500円を注文しました。岡山市瀬戸町には『キリン』のビール工場があるので、地元で作られた一番搾りです。
おつまみの最初の一品は、創業以来の名物だという「とり酢」200円を注文。「とり酢」は岡山では定番だそうですが、東京ではこれまで聞いたことも食べたこともなかったので、どんな料理かワクワクします。
ほどなくして「とり酢」が運ばれてきました。茹でた鶏肉に春雨、タマネギ、青ネギが入っていて、さっぱりとした味わいです。カウンターで調理をしていた店長さんによると「鶏肉は親鶏のモモ肉を使っていて、自家製のとり酢用のタレをからめています」とのこと。これはお酒のつまみにバッチリ合いますね! ビールがグングン進みます。
開店時間の直後から常連さんと思われるお客さんたちが続々と来店。30分後にはカウンター席が埋まりつつあり、店内は賑やかな雰囲気になってきました。店長さんをはじめ、お店のスタッフの方々は常連さんと軽いジョークを飛ばしながらも、注文が入った料理を瞬時にさばいていきます。
お店の料理の品数は、200種類にも及ぶそうですが、そのなかでも魚料理のメニューが豊富で、一番人気という「刺身の盛り合わせ」800円を注文しました。
この日の「刺身の盛り合わせ」は、ハマチ、タイ、サーモン、サワラ、ホタテ貝柱です。「入荷状況や季節によって内容が多少変わることがありますが、そのとき一番おいしい旬の魚をお出ししています」と店長さん。
刺身はどれも分厚く、脂がのったハマチやサーモン、コリコリとした食感のタイ、さっぱりとした味わいのサワラ、旨みが濃いホタテ貝柱と、どれもおいしくて、これで800円というのは本当にリーズナブルです。
お酒は、刺身に合わせて日本酒にチェンジ。倉敷の酒蔵『熊屋酒蔵』の「伊七」400円は、岡山県でのみ生産している朝日米を100%使用した特別純米酒です。やや辛口ながら旨味のあるお酒で、刺身との相性も抜群。いい感じに酔いが回ってきました。
こちらでは、瀬戸内の海の幸に代表される岡山の郷土料理が数多く提供されていますが、そのなかで今回どうしても食べたかったのが、ママカリです。「隣の家のごはん(まま)を借りて(かり)でも食べたい」というのが語源だというママカリは、関東ではサッパと呼ばれていますが、提供しているお店が少なく、食べる機会もありませんでした。
岡山では酢漬けや塩焼きで食べられているようですね。今回は「ママカリにぎり」400円を注文しました。「ママカリにぎり」は、さっぱりとした味わいで、しょうゆやワサビなしでもおいしく頂けます。こちらも日本酒とよく合い、心地よい酔いですっかり幸せな気分になりました。
18:00頃には、ほぼ満席となる人気店の『鳥好』を切り盛りしている店長の山中博之さんにお忙しいなか、お話を伺いました。お店の創業はいつですか? 「創業は1971年ですので、今年で47周年になりますね。私はこの駅前本店で働き始めて28年になります」。
「『ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン』に掲載されたそうですが? 「いつの間にか取材されていて、掲載されていたこともお客様からの情報で知ったので、大変ビックリしました。たくさんの方に興味を持って頂けるようになったので、ありがたい限りです」。
外国人観光客も多数訪れる岡山の名店はこれからも古きよき居酒屋文化を残していく
「ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン」に掲載されたことで、近年は外国人のお客さんも増えている『鳥好』ですが、おいしい料理やお酒を低価格で提供しているお店だけに、サラリーマンの団体や、女性2人組、ひとりで晩酌する人などさまざまなお客さんがお店を訪れています。常連さんの中には、毎日通っているという方もいるようですね。
後日、代表取締役の上瀬純さんに今後の目標を伺うと、「古きよき日本の居酒屋文化をこれからも残していくことです」と話してくださいました。呑ん兵衛たちのオアシスである『鳥好』は、これからも多くのお客さんに愛され続けていくことでしょう。ごちそうさまでした! 気持ちよく酔えました!(ライター:カタオカキヨシ)
Information
鳥好 駅前本店
- 住所
- 岡山市北区本町5-8 [MAP]
- 電話番号
- 086-233-5810
- 営業時間
- 16:00~24:00
- 休み
- なし
- 駐車場
- なし