Season1 第二話/食堂やまと(岡山市)のカツ丼と中華そば
東京から岡山に移住してきたライターが、まだ食べたことがない、岡山で愛されているグルメを求めて食べ歩き、行きつけにしたいお店を開拓します!
マニアと言うほどでありませんが、ラーメン大好きなワタクシが、岡山に引っ越ししてきた当初、岡山の友人・知人に「岡山でおいしいラーメンといえば?」と尋ねたところ、半数以上の人が『やまと』と教えてくれました。そこまで多くの人が「おいしい」と言うラーメンなら、食べたくなるのが人情ってものですよね。早速とある日曜日のお昼11:30頃に妻と息子の3人でお店を訪れると、すでに長蛇の列が! さすが岡山が誇る人気店です。しかし、当時2歳だった息子がおとなしく待っていられるはずもなく、この日は泣く泣く別の店に行きました。
それが約2年前のこと。今回やっと『食堂やまと』に行く機会ができたので、前日から体調を整えて当日を迎えました。前回の教訓から混雑する時間を避けてお店を訪れたのは14:30ごろ。それでも店内は6割ぐらいの入りで、この時間だというのに次から次へとお客さんがやって来ます。注文をする前に周りのお客さんを見てみると、先に「やきめし」や「カツ丼」を食べ、最後に「中華そば」を注文する人が多いようでした。「郷に入れば郷に従え」というワケで、ワタクシもまずはラーメンと並ぶ看板メニューの「カツ丼」780円を注文しました。
東京などほかの地域でカツ丼といえば、一般的な卵とじカツ丼や名古屋の味噌カツ丼を思い浮かべる方が多いと思いますが、岡山ではデミグラスソースのカツ丼が一般的なようですね。「ウチでは創業当初から提供している人気メニューです」とご主人。なるほど、昔から岡山の人に愛されている味なんですね! それでは、初めてのデミカツ丼、いただきます! サクサクのカツに濃厚なデミグラスソースが合わさり、ご飯がモリモリ進みます。カツ丼に使用している肉はヒレ肉とバラ肉で、希望すれば「赤身のみ」「白身のみ」という細かいオーダーにも対応してくれるそうです。ご主人によると「デミグラスソースは、中華そばのスープをベースにソースやケチャップを加えています」とのことで、酸味がありながらも甘さが引き立っていて、深みのある味わい。デミグラスソースは食べている途中でも追加可能で、メニューには載っていませんが、プラス30円で生玉子も乗せられます。
お腹がペコペコだったこともあり、あっという間にカツ丼をたいらげてしまったワタクシ。メニューを見ていたら「オムレツ」670円が気になったので、迷わず注文してしまいました。ふっくらしたオムレツの上に、これまたデミグラスソースがたっぷりかかっています。食べてみると中にはひき肉ではなく、細かく刻んだチャーシューが入っていて、「これをおかずにしてご飯を食べたらうまいだろうなあ?」と思いましたが、楽しみにしているラーメンが食べられなくなってしまうので、ここは我慢。実際、オムレツライスを頼む方も多いそうです。
そして、本日のお目当てである「中華そば」730円を注文。運ばれて来た中華そばからは風味豊かな香りが立ち上っています。スープを一口すすると、魚介の味が最初に来るものの優しい旨味で、豚骨のどっしり感もあり絶妙なバランス。現在、主に中華そばの調理を担当している息子さんが「単なる豚骨ラーメンでも醤油ラーメンでもないと思います」と言うのもうなずけます。麺は岡山ではスタンダードな中太のストレート麺で、「昔は『大和麺業』という製麺所のものを使っていたのですが、辞められたので一時期は自家製麺をしていました。でも作るのに人手が要りますし、今は信頼のおける製麺所で、なるべくオリジナルを再現した麺を作ってもらっています」とのこと。お客さんの好みによって麺の固さも対応してくれます。分厚いチャーシューは口の中で優しくトロけ、シャキシャキしたもやしとハーモニーを奏でます。
中華そばを平らげるとお腹がパンパンになり、さすがにもう食べられません。お客さんが少し引いたのを見計らって、ご主人で2代目の大和信一さんにお話を伺いました。「ウチの創業は昭和23年で、私の父が創業者です。父は創業前に洋食店で修行を積み、戦時中は旧・日本軍の幹部付きコックを務めたようです。従軍先の中国で目の当たりにした食材や調理法を取り入れて編み出したのが、ウチの中華そばの原点です」。今でこそメジャーになった「魚介系」の先駆けとなった『やまと』は、やがて「岡山を代表するラーメン店のひとつ」として知られるようになりました。「私は東京の大学に行っていたのですが、卒業後に呼び戻されて、すぐに父とともに店に立ちました」とご主人。その息子さんの裕一さんは、調理師専門学校を出てから、他の店で修行をした後に『やまと』で働いているそう。まさに親子3代で守り継がれた老舗の味なのです。
いい部分を継承しつつ、お客さんのニーズに応えられる店へ
レンガ作りの外観はまさに「洋食店」で、ラーメンとナイフとフォークがデザインされた看板が、「洋食とラーメンの店」だということを伝えてくれます。3代目の裕一さんは、「最近、冷凍中華そばの通信販売を始めたのですが、そちらのバリエーションも増やしたいですね。今は昼間のお客さんが多いので、夕方にもお客さんが来ていただけるようなメニューも考案していきたいと思っています。いい部分を残しつつお客さんのニーズに応えられるお店にして行きたいです!」と語られました。ごちそうさまでした! 次回は家族で来て、分け合っていろいろ食べるのもイイな~と思いつつ、お店をあとにしました。(ライター:カタオカキヨシ)
Information
食堂 やまと
- 住所
- 岡山市北区表町1-9-7 [MAP]
- 電話番号
- 086-232-3944
- 営業時間
- 11:00~OS19:00(15:00~16:00は麺類のみ)
- 休み
- 火曜 ※祝日の場合は翌日
- 席数
- 28席
- 駐車場
- なし
- HP
- http://www.shokudou-yamato.com/