今回50回目を迎えました。「大盛りアニキ」は結成15周年を目前にした「岡山ラーメン☆エクスプローラーズ」とともに新たなる旅立ちを決意。突然ですが今回が最終回になります! ワタクシは、はしをおいて普通のおっさんに戻ります…。いや、もったいないから、「ラーメンソムリエ」の資格取得でもしようかな(そんな資格はない)。ということで、ラストの一軒はこちら!
※一番最後にファイナルメッセージありです。
最初は大雲寺の交差点にあった、お世辞にも広いとは言えないお店でした。そこで味わったのは、今まで味わったものとはどれとも違う、何ともぜいたくな一杯。店の名は『麺屋 たくみ』。もともとポテンシャルの高い素材を集めて、それに相応しい技術とマッチするからこそ、「エクセレント!! あなたは伝説の目撃者となる。史上類を見ない最高傑作に喝采!(ニューヨーク・タ○ムス)」みたいな高い評価が得られるんでしょう。実際に評判でしたしね。その後なんと、JR岡山駅が新しく改装するタイミングでそちらに移転。「新幹線改札を出て、一番近い岡山のラーメン店」としてまたぞろ人気を集めます。「それが今度は、2号店ができたでござる」と「ラーメン忍者」47号の松風さん。えっ? どこへ? 「それが…。駅前に…」。マジで? 競合店になっちゃうじゃん。同じようなケースはいくつかありますが、実際どういう意図が? さっそく松風さんを介してオーナーの林さんに接触。お話を聞くことができました。「なんてラブリーな日だ!」とつぶやきながら、バイオレットフィズのような微笑をたたえて訪問したところ…。
「久しぶりですね」。創業以来看板の「たくみラーメン」800円を手に現れたのは店主の林さん。オープン以来のお付き合いです。相変わらずアシンメトリーの器で盛り付けのあしらいが美しいですね。これは新店になっても変わりません。「味も昔のものを継承していますよ。豚骨ベースにカツオにコンブ、ウルメにサバなどを加えたダブルスープです」。サバなどは魚粉ですか? 「いえ、厚削りのものを。素材には妥協はしませんからね」。さすが。選び抜かれた素材をとことん突きつめて完成させた一杯。その味わいには迫力すら感じますよ。「あっさりってよく言われますが、食べ応えのあるものを目指しているので物足りなさはないと思います」。おっしゃるとおりですね。「ずしんとくるのに、さっぱりしている」って感じかもしれません。非常に繊細で上品ですけど、これはまぎれもなく岡山ラーメンですよ。「定義がまちまちなので断言できませんが、そう思って作っています」。だからこそJR岡山駅構内にもお店を構えられたのですね。「岡山に来た県外の方には『岡山のラーメン』をこそ食べていただきたいと思って」。
日本料理店で修行をされたのは有名ですが、和食の高級店とかも…。「ええ、経験しました」。では、なぜラーメンの世界に? 「自分の店を持ちたいっていう夢があって、ほかとの差別化ができて、『ここでしか食べることができない』ってものを探したら」。それがラーメンだったと…。確かにラーメンはそのお店の独自性やほかの店との違いが出しやすいジャンルではありますもんね。「和のエッセンスを生かせば、おもしろいものができると思いました。ラーメン店での経験はなかったんですけど」。そこはゼロからですか! 大雲寺のお店が大成功して行列ができる店になって。「8年目に移転を考えました。そこでJR岡山駅の話があって」。岡山の顔的な場所に出店をされたわけですね。「それから5年経って、もう一度原点の路面店に戻りたくなったんです」。それでなんで2号店を目と鼻の先に出しちゃうんですか? 「路面店と駅のお店はまったく別物なんですよ。駅ナカは基本的に駅を使う人にご利用いただくものであって、わざわざ地元の人は来にくいので。原点回帰です」。店名がひらがな表記に戻ったのも(大雲寺時代もひらがな)そこが理由なんですね。
当時から「美的ラーメン」として評判ですが、これまたひときわ美しい。「『しおラーメン』700円ですね」。これは大雲寺のころからありましたっけ? 「『タウン情報おかやま』特集企画の限定ラーメンで『みそラーメン』を作ったでしょう?」。懐かしいですね。ありました。「その流れで『しお』にチャレンジして、期間限定で販売をしたんですが大変評判で。裏メニューとして存在してたんですよ。こっそりと」。そんな物語が! ベースは豚骨じゃないんですね? 「これは鶏ガラです」。柑橘の香りがほのかにするんですが。「きざみユズですね。この時期は青いユズなので、風味が違いますよ」。季節によって風味が変わるとは、日本料理の概念ですね。一杯のラーメンの味わいに四季の変化ってあまり感じることないですから。丼もこちらはスタンダードなタイプで店名のロゴが入っています。気品がありますね。スープは「たくみラーメン」よりさらにクリアですが、麺は違うんですか? 「いや、同じものですね」。食べ比べるとちがうような気がするから不思議ですよ。本当にこのお店独自というか、ほかにない味わいだと思います。
トッピングに関して、さっきから撮影していて気になっていたのは、存在感ありまくりのチャーシューです! 「これは単品もあるので、ご用意しましょう」。「おつまみチャーシュー」380円ですか。食感が新しいですね。ほかではあまりお目にかかれないタイプだと思うんですけど。「ウチは低温調理をするんです」。えっ? グツグツ煮込むのではなくて? マスタードに付けて食べるのももちろんおいしいですけど、上にかかっているタレも手がかかってそうですね? 「低温調理をしているときに出る肉汁やエキスの部分を抽出して、しょうゆベースで作っています。継ぎ足し継ぎ足しなのでうまみが深いんでしょうね」。すごい手間じゃないですか? そういえば新店を紹介してくれたラーメン忍者の松風さんは、凄まじい「チャーシュー推し」でしたよ。「週末にのんで帰られる際につまんでいただきたいですね」。ボリューム感もありますから、満足度も高いですね。そのほか、サイドメニューには「たくみミニギョーザ」350円、「チャーシュー丼」350円があり、トッピングの「あじ玉」120円や、「自家製メンマ」120円なども人気です。
交差点の片隅にあった店は、努力によって成長を遂げ、また新しい一歩を踏み出しました。「しかしそれも多くの人に支えられてのこと」と謙虚な店主。さらなる進化に期待。
女性ひとりでも気軽に立ち寄れる、モノトーンで落ち着いた空間。
日本料理をベースにした巧みな技術で、妥協を許さず手間ひまを惜しまず、ようやく納得のいく一杯にたどりついたという『麺屋 たくみ』。JR岡山駅の『さんすて岡山』には『麺屋匠』があり、現在は2店舗で展開している。『麺屋匠』は岡山ラーメンとしての存在感を多方面に打ち出していく場であり、『麺屋 たくみ 駅前店(新店)』は、地元の岡山の人にこそ味わってほしいと店主は力説する。新店は通りに向けて大きなビジョンが設置されており、店内はモノトーンに統一されたオシャレな空間に。確かに通りすがりの女性が気軽に立ち寄れそうな雰囲気だ。感じのよいスタッフの対応やサービスにも定評があるが、「よい人オーラ」を放ちまくっている店主の人柄が反映されているに違いない。もちろんラーメンのレベルは非常に高いと多くの人に認められていて、メンマやチャーシュー、半熟煮玉子などの具材もすべて手作りで意匠を凝らしている。
Information
麺屋 たくみ
- 住所
- 岡山市北区錦町1-30 [MAP]
- 電話番号
- 086-225-5522
- 営業時間
- 11:30~15:00/17:00~22:00
- 休み
- 水曜
- 席数
- 24席
- 駐車場
- なし
- 姉妹店
- 岡山 麺屋匠/岡山市北区駅元町1-1 JR岡山駅2階サンステーションテラス南館/
086-222-0206/11:00~22:00/休なし/22席/P契約あり
【最後に】
みなさん2年にわたりご愛読ありがとうございました。最初のブログからだと11年になります。ご承知の通りこの連載は店主や店長さんたちのリアルな声による「インタビューもの」でした。「いかにおいしいラーメンか?」に文字を割くのでなく「どんな人生の中で、この一杯が生まれたのか」を常に意識して原稿を書いてきました。
ここには「決断」したからこそ「現在」がある、多くの人が登場してきました。つまり今回の『新・岡山ラーメン☆エクスプローラーズ』とは「人生、するかしないか?」の分かれ道で「する」を選んだ勇気ある人たちの物語であったのです。
すべての「決断」が成功するとは限りませんが、だからこそ多くのドラマが生まれるのだと思います。これからもそんな皆さんを応援し続けていたいですね。
それでは皆様。これにてお別れです。またどこかでお会いしましょう!