前々回で玉島地区のお店を紹介した際、「次は当然児島だろ!」と心の中のアンジャッシュな誰かがささやきました(「嶋」違い)。しかし、現在児島で話題のお店はあるのかしら?
このお店を知ったのはSNS。そこで知り合ったお友だちが「ラーメン店をオープンしました」との情報を配信しておられたのです。面識はなくお顔もプロフィール写真で拝見するのみですが、プロフ写真は愛嬌みなぎるもの。3年前に解散した3人組ラップグループの「実家の家業である住職になるので辞めるです!」と宣言した真ん中の人みたいな雰囲気です。お店の場所は、玉島・水島と並ぶ「倉敷・三大シーサイドエリア(今、思いつきで命名)」のひとつの児島。ナイスタイミングですよ。早速、全国に放った50人のラーメン忍者に調査を依頼すると、「海近辺のコテージ的な洒落た店にて候」「むしろラーメン版・海の家とでも言うべきか」「『にくそば』が人気でござれば。ニン」など素敵情報が多数。「素敵」とは読んで字のごとく「素の状態に対する敵意」であり、何事にも尋常でなくなって初めて「素敵認定」ができるもの。これは確かめに行かねばですよ! 「行かねば」です!
まずご主人・葛西功太さんにご連絡。店名の『中華そば こうた』は店主のお名前からですね。「僕の写真も撮るんですか? じゃあ、化粧をしてお待ちしていますよ!」とノリもよく、いい具合です。それにつけても児島ですよ。倉敷市民が県外で出身地を問われると「岡山(県)」ではなく「倉敷」と答えるように、県内で出身を聞かれた場合、「倉敷(市)」ではなく、「玉島」「児島」「水島じゃ」と答えるのが彼の地の人とか。単に「名の通りがいい」だけでなく、「郷里への誇り」を感じますね。児島や玉島はかつて「市(City)」だったという自負もあってか、心くすぐるものがあるのかもしれません。ご主人、出身は児島ですか? 「神奈川県です」。えっ? 神奈川のどこですか? 「横浜です」。最初から「横浜」とおっしゃらない奥ゆかしさは県民性ですか(笑)? では、なぜここで? 「妻が児島出身なんです…」。なるほどー。ところで、店内で存在感を放ちまくっている、この大漁旗は? 「繊維業の方が集まる会からの開店祝いなんです」。さすが繊維&漁師の街です。粋ッ!
人気の『にくそば』850円ですね。ベースは『中華そば』650円なんですよね? なぜスタンダードな中華そばをチョイス? 「中華そばには人間らしさがありますから」。人間らしさ(笑)? 「あったかさというか、個性というか。昔ながらの『語り継がれる物語』に乗りたかったんです」。無闇にロマンあふれてますな。「小6のころ定食の店を志して、飲食店を色々経験。全国大手ラーメンチェーンでも修行をしたんです」。ああ、あの豚骨進化系の繁盛店ですね。「そこでラーメンの奥深さや、スタッフの熱さに触れて、ラーメン店開業を目指しました」。でも、あのお店の味は最新鋭のジェット機のような感じで、中華そばはプロペラ機的ですよね(笑)。「カッコよさではなく、あったかみ重視で。児島の土地柄にもリンクしたのかもしれません」。『にくそば』は、ホロホロのチャーシューが特徴で、鶏ガラ・魚介のWスープ。クラッシックな味わいで絶品です。
「『季節のそば』850円は、具の季節野菜が日替わりに近い状態で変わります。児島産の野菜を中心に、旬のものを八百屋さんが持ってきてくれるんです」。チャーシューをつけ込むしょうゆも児島産でしたね? 「麺も児島の製麺所ですよ」。児島づくしじゃないですか! あ、ラーメンを卵とじにしているんですか? 「当初は冬に始めようと思っていたので、あったかいイメージで」。ラーメンスープに生卵を入れるのは、徳島ラーメンか、チキンラーメン。もしくはウチのオカンくらい…。あ、『K川食堂』もか! 「そんなことないですよ。名古屋に行けば卵とじラーメンの文化がありますし」。でも、そもそもなぜ季節野菜をラーメンに? 「児島で義母がおばんざいの店をやっていて約10年一緒に働きました。そこで旬の野菜のおいしさや特色に触れたからですね」。なるほど。地産地消、地元の味ですもんね。児島の印象はどうですか? 「山あり、海あり、電車1本で岡山市…。言うことないですよ」。
でも湘南の海と児島の海とでは違うでしょう? 「それはそうですね。特に私は波乗り(サーフィン)をするので…」。瀬戸内の波は穏やか過ぎて乗れませんからね。「でも海が近いのは本当にうれしいんです。子どもが4人いるんですが、子育てするには最高の場所だと思いますよ。自然は多いし、何より人があったかいですから」。そのあたりの思いが、昔ながらの中華そばの味わいに表れているのかもしれませんね。店舗も特徴的です。「海が好きだし店からも近いので、『海の家』をイメージして」。あ、やっぱり。「大工さんがまたいい方でしてね。思っていた以上のレベルで仕上げてくださるんです。建具とか断熱の部分とかは、私も一緒に造りました」。すでに「児島のニューホープ」として評判です。どんなお店を目指してますか? 「誰もが気軽に、転がり込めるような店ですね」。転がり込める(笑)? イチイチ表現が尋常じゃないですね。「素敵認定」です!
本当にあたたかみのあるお店に店主、スタッフ、ラーメンの味わいで、まさに「素敵」でした。今度は「倉敷・三大シーサイドエリア」の残りひとつを攻めなければなりませんね。
JR児島駅から徒歩ですぐ。懐かしの中華そば
2016年5月にオープンした、倉敷市児島の「中華そば」の店。JR児島駅の海側(南)にあり、便利な抜け道を通れば1分もかからないほどの好立地だ。店内にも繊維の街らしさがあふれていて、のれんやスタッフの前掛け、店主のキャップなどもデニム製だ。また愛嬌あふれる店主の顔をモチーフにしたイラストが、スタッフTシャツや看板など色んなところに登場しているのもおもしろい。メニューの主力は基本の「中華そば」と、今回写真で紹介した2品に「ねぎそば」750円を加えた4種類。いずれもまんべんなく人気という。「縁あって児島で店を始めたわけですから、もっとこの街を盛り上げていきたいですね。意外かもしれませんが、若い人が多くて活気がある街ですよ。店のモットーが『明るく、仲よく、楽しく、元気よく』ですから、まずはしっかり地元の方に認知されて愛され、盛り上げる基盤を作りたいです!」と、若き店主の想いは強くゆるぎない。
中華そば こうた
Information
中華そば こうた
- 住所
- 倉敷市児島味野4047 map
- 電話番号
- 086-697-6686
- 営業時間
- 11:00~14:00/17:30~20:50
- 休み
- 月曜 ※10月23日(日)、24日(月)
- 席数
- 22席
- 駐車場
- 15台
- HP
- http://www.facebook.com/chukasoba.kouta/