岡山には商店街がいくつも存在しますが、なかでも中心的存在のひとつが「表町商店街」であることに異論はないでしょう。多くの人たちの想い出が詰まった一角かと。
「表町商店街」は、関が原の戦い(1600年)のころより始まったという城下町整備で備前国の各地から商人や職人が集まり、新しい山陽道沿いに発展したのが発祥だそう。岡山城や後楽園などの名勝から近く、長い歴史を持つ商店街ですが、これまで多くのラーメン店がしのぎを削ってきた地としても知られています。表町三丁目にある大正14年創業の中華料理店は岡山で最初にラーメンを出した店と伝えられ、岡山初の中華そば専門店と言われる、伝説の『百万元』も表町。高度経済成長期の『天満屋大食堂』は多くの人の「ラーメン原体験」だとか。そして近年も変わらぬ激戦区となっています。今回は「『三味一杯。』のラーメン!」を旗印に参入してきた新進気鋭店を紹介します。
まずは看板ラーメンから。店名『麺屋楽長。』の名を冠した「楽長ラーメン」850円。「ラーメンの中で、一番食べてほしい」と店主が自信を持って放つ一杯で、口当たりのよい和風だしに、自慢の塩ダレを合わせ、アクセントにユズを加えています。キャッチフレーズ「三味一杯。」を体現した仕上がりで、①コシと弾力の麺、②手間ひまかけたスープ、③すべて手作りの具材、の3つが高いレベルで融合! そう、ワタクシはチョリソのようにホットな男。ひと口スープをすすると「これは!」と、思わず心が叫びやがります! 昨年10月にオープンしたばかりのお店とは思えぬ完成度に感激です。軽いのではなく、重いけどむしろ浮いているような、アンビバレンツ&二律背反な味わいが魅力だと感じました。
「以前は物流商品の営業マンでした。7年勤めて『勝ち方のセオリー』を学んだんです」と店主の中村きよひでさん。ラーメンへの想いがすでに強かった学生時代に飲食業界への道を志すも、「大阪の某人気店の味に衝撃を受けて自信を失い」まったくの異業種へ。「物流営業では、3社競合が多かったんですけど、そこでいかに自社商品を選んでもらえるかのノウハウを身に付けました。それがラーメンにも通じると思って」。そしてその味に惚れ込んでJR岡山駅構内の実力店『麺屋 匠』の門を叩きます。「独立を志し3年半修行させてもらいました。『匠』の社長にもエールをいただき、出店を決意したんです」。出店先として選んだこの場所、表町でも裏通りですよね? 「お客様の導線は自分で作りたくて」。カッコええわ!
ジェントルかつ、サービス精神満点の店長トークは続きます。「何か新しいことをしたくて。前はワインバーだったことにヒントを得て、『ワインとのコラボ』を思いついたんです」。わ、本当だ。ワインセラーがある! 「メニューも色々ありますけど、『だし豚骨ラーメン』700円が、ワインには一番合うんじゃないでしょうか?」。「これぞ岡山ラーメン」という定番の豚骨しょうゆには、赤と白の両方を用意。ミスマッチな印象がありますが、洗練された雰囲気の店内では不思議と違和感がないです。「OLさんとか、女性ひとりで立ち寄って欲しいんですよね」。なるほど、そういう意図ですか。ここには小難しいレトリックを駆使しても表現しきれない、上質と情熱のるつぼのような空間が存在してます。
ワインときたら、次はビールでしょう。元々営業マンだった店長の思いは強く「店名も、岡山を元気付けるビジネスマンに『長く楽しんで』もらいたかったから『楽長』」というだけあって、地元で働く人たちの活力になるようなメニュー開発に余念がありません。「おつまみセット(夜限定)」680円は、ワインをのぞくアルコール1杯に、このお店の「3本の矢」のひとつ「手作りの具材」が並びます。奥に盛られるのは「四川ラーメン」830円に使用されているピリカラの具。「刺激を求める女性にも人気なんです」だとか。チャーシューは2時間、メンマは4時間、味玉はひと晩かけて作られるというだけあって、いずれもこだわりが深いです。夜だけでなく、もちろん「ラーメン+100円でミニチャーシュー丼付き」などのランチメニューも人気です。
最後に店長が激白! 「あ、最後に伝えたいことが。聴きたいですか?」。無闇に聴きたいです。「実は…ウチのスタッフは全部で7人いるんですが、そのうち3人が『ミサキちゃん』って名前なんです」。…ビ、VIVAミサッキー…。
岡山にもっと元気を! 店主の想いが込められた一杯!
オープンして3カ月しかなかった2015年において、『岡山ラーメン学会&岡山のラーメン調査隊』選出の「新人賞」を受賞した新鋭店。「岡山を支えるサラリーマンや、OLなど女性客がひとりでも気軽に入れる店」がコンセプトだ。本文中に登場の「四川ラーメン」830円や、自慢の具材をすべてトッピングした、名称も験がよい「ALL TOPラーメン」1518円など、元気になれるメニューがそろっている。同時に「岡山ラーメンを、岡山の観光資源にしていきたい!」という対外的で壮大なビジョンも描いているという。ラーメンの麺は中太のストレートで、『冨士麺ず工房』製のものを使用。上質な小麦のみを使っており、丁寧に仕込まれているので上品なスープには相性も抜群だ。店内デザインを手がけているのは、倉敷を中心に活躍する『イノベーション・スタジオ・オカヤマ』代表の毛利真也氏。物語性あるデザインが得意の氏らしい世界観が広がっている。
Information
麺屋楽長。
- 住所
- 岡山市北区表町1-3-53 YS21ビル1階 [MAP]
- 電話番号
- 090-2861-8516
- 営業時間
- 11:00~14:30/17:00~22:00(OS21:30)
- 休み
- 火曜
- 席数
- 17席
- 駐車場
- なし
- HP
- http://www.gakucho.com